いろんな意味で初めての体験になった『未知との遭遇』平松禎史 第1回【連載 アニメ人、オレの映画3本】

前回の長濱博史さんから紹介頂いたのは平松禎史さん。1980年代後半からキャリアを始めた大ベテランのアニメーター&演出家。『新世紀エヴァンゲリオン』などを手掛け、大人気作『呪術廻戦』シリーズのキャラクターデザイン、総作画監督等を担当している。そんな平松さんの3本。今回はその1回目です!

取材・文/渡辺麻紀

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<プロフィール>
1963年生まれ、愛知県出身。アニメーター、アニメ演出家。1987年に『ミスター味っ子』(テレビ東京系)で原画デビュー。『ふしぎの海のナディア』(1990~1991年/NHK総合)第11話「ノーチラス号の新入生」で初の作画監督を務めた。
最近の主な参加作品に『寄生獣 セイの格率』(2014~2015年/日本テレビ系)、『ユーリ!!! on ICE』(2016年/テレビ朝日ほか)、映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』(2018年)、『呪術廻戦』(2020、2023年/MBSほか)など。現在は、岡田麿里監督『アリスとテレスのまぼろし工場』に副監督として参加中。

映像関係の仕事がしたいという夢が生まれたのも『未知との遭遇』が最初のきっかけでした。

――今回は、平松さんにお願いする1本目です。どの作品ですか?

平松 たくさん候補作があってかなり考えたんですが、いま挙げるとなるとこの3本かな、という感じで選びました。3本の共通点はエンタテインメント映画というところ。その1本目は、いろんな意味で初めての体験になったスティーブン・スピルバーグの『未知との遭遇』(1977年)です。

――『未知との遭遇』は宇宙人と人類の遭遇を描いたSF映画。これにはいくつかのバージョンがありますよね。

平松 最初に公開されたオリジナルと、その後に公開された『特別編』、そして『ファイナル・カット』版がありますよね。『特別編』も劇場に行ったんですが、円盤のなかの映像、いらないなあって思いました。オリジナル版のときは内部を見せてないので「見たい!」とは思ったんですけどね(笑)。スピルバーグのインタビューを読むと、自分は内部を見せるのには反対だったそうなので、やっぱりねって感じでした。

――確か、スタジオとのしがらみがあって『特別編』では宇宙船の内部を入れることになったんですよね。

平松 映画を観れば、スピルバーグのほうが正しいことが判ります。僕が思い入れがあるのはオリジナルの公開版なんですが、好きなバージョンとなると『ファイナル・カット』版になる。何度も観直している間にそうなっちゃった(笑)。

――『ファイナル・カット』版はちょっと長くて、いろんなエピソードが増えています。

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