おとどちゃん連載・10「生きてる全部、百点満点」

今月創業91周年を迎えた桂浜水族館。

高知県桂浜にある小さな水族館から、大きな声で、いきものたちの毎日を発信中!

広報担当・マスコットキャラクターのおとどちゃんが綴る好評連載第10回をお届けします!

以前のお話はこちらから。

ある日、突如として人類を「死」の恐怖に陥れた新型コロナウイルスは、強い感染力で瞬く間に蔓延し、世界中で死者が出た。医療がひっ迫する中で、ワクチンの開発や政府によるさまざまな対策、個人での感染予防の徹底が求められ、見えない敵との戦いは今も尚続いているが、日本も少しずつ脱却の兆しが見えてきている。そうしてすっかりマスク生活が板についた頃、全国の緊急事態宣言が解除され、県外への移動が幾分か気楽にできるようになった。

人類がコロナと生きる三年目のゴールデンウィーク。どこの施設や観光地も盛大な客入りを期待したことだろう。その期待は裏切られることなく、桂浜も大きな賑わいを見せた。特にこの大型連休の中日は、開館前からチケット売り場に長い行列ができた。普段、館内でお客さんとすれ違うことが滅多にない日があるだけに、あまりの人の多さにスタッフ皆が「ここは本当に桂浜水族館か!?」と、見慣れない光景に目を丸めたほどだ。あとで調べてみると、五月三日と四日の来館者数はここ数年間の同じ日と比べて一番多く、「なんか変わるで、桂浜水族館」と本格的に改革を始めてから取り戻してきた記録を見事に更新した。

「ツイッターで見てて、ずっと来たいと思ってたんですけど……。今日やっと念願叶って来ることができました!」

「いつもYouTube見てます! ずっと遊びに来たいと思ってたので、ようやく夢が叶いました。飼育員さんたちって本当に存在してたんですね!」

私たちの日常は誰かにとっての夢で、「いつか行きたい」と思いを馳せる場所なのだと、改めて気づかされた。

黄金の日々に夢を叶えた人たちの「いつか行きたい」は、「いつも行きたい」になっただろうか。これからも私たちは、舟を漕ぎ夢を編む。

令和四年五月十九日、コツメカワウソの「ダンデ」が十三歳の誕生日を迎えた。

ダンデは、前年の九月に閉館した水族館「京急油壺マリンパーク」からやって来て、桂浜に搬入された時にはすでに十二歳と高齢個体だった。パートナーの「フク」といっしょにここで暮らすことになった彼は、歳のせいもあってかおっとりしていて、優しい性格のようだ。年齢を重ねた渋みのある顔をしているが、表情が柔らかく愛らしい。ダンデとフクはとても仲が良く、まさに理想の夫婦といったところか。アシカプールの陸地の一角にある部屋で、のんびりとふたりで老後を過ごしている。

ある日の昼下がり、ご飯を食べ終えたダンデとフクは、地面にごろりと寝転がっていっしょに日向ぼっこを始め、なかなか部屋に帰ろうとしないために新人飼育員を困らせていた。

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