大衆演劇で「いきなり本読み!」【岩井秀人 連載 6月号】

いわい・ひでと● 第6回「いきなり本読み!」がVimeoにて配信中。「いきなり本読み!」のWOWOW版「WOW!いきなり本読み!」が6月26日(土)後6:15よりWOWOWライブで放送(WOWOWオンデマンドでも配信)。

第6回 「いきなり本読み!」配信開始!
「読んだことのない台本を舞台上で渡され、いきなり読み合わせる」という、岩井秀人プロデュース企画「いきなり本読み!」の第6回がVimeoにて配信中(今回のコラムはこのライブでのエピソードです)。

進行・演出:岩井秀人
出演:仲野太賀、猪股俊明、後藤剛範、松本まりか
購入可能期間:9月23日(木・祝)23:59まで(購入から30日間視聴可能)
販売金額:1100円(税込)
配信ページはこちら


先日、第6回「いきなり本読み!」がユーロライブで無事に執り行われた。今年に入ってようやく、初の有観客である。やっぱり有観客はいい。半分の客席だけど、そこに面白がってくれる人が座っているという有り難みを久々に味わった。来てくれた人、ありがとうでした。

そして開始。いつものハイバイ界隈から、「岩井の父」を演じさせたら右に出るものはいない、そもそも岩井の父なんて誰も演じたがらない、そんな役もほいほい引き受けてくれる怪優、猪股俊明さん。年末の国際フォーラム版でも、めちゃくちゃなアプローチで、大倉孝二さんに贅沢な突っ込みを山ほどもらった後藤剛範くん。

そこにこの度放り込まれたのが、仲野太賀くんと松本まりかさんだ。10年ほど前になるだろうか、深田晃司監督の作品に出ていた10代の太賀くんから、難解といわれる岩松さんの舞台でめっちゃ活き活き存在する太賀くんの突っ走る姿を眺めさせてもらって、いつか一緒に何かやりたいなと思っていた。松本まりか氏も城山羊の会など、小劇場に出ていた頃からの知り合いで、最近の凄まじい活躍を笑いながら眺めさせていただいていた。

今回の台本は「大衆演劇」。何年か前に「一回見てみたい」と浅草木馬館で見た一発があまりに衝撃で、その帰り道に紙切れに書いたものを台本化したものだった。それがまさか、「いきなり本読み!」で役立つことになるとは。木馬館での大衆演劇は、冒頭30分以上、ダンスだけが続いた。劇団員たちの紹介。そのためだけの30分だ。だが僕以外のお客さんたちは、それぞれ「推し団員」がいるわけだから、そこだってスマホでバシャバシャ撮りながらエンジョイしている。ダンス中に影マイクで俳優の名前が呼ばれると、俳優は踊りながらもしっかり見得を切る。客席から掛け声がかかる。そして、ダンスが終わって芝居が始まったのだが、なんとそこでも影マイクでの紹介があり、芝居中にもかかわらず、呼ばれた俳優は客席に向かって見得を切るのだった。この文化に、僕は衝撃を受けた。

もちろん、そんな素晴らしい文化を「いきなり!」に導入しない手はない。ダンスこそしなかったものの、本読みにて真剣に芝居をしている最中に、「仲野~~~~太賀!!」と呼べば、セリフ中に必死に見得を切る太賀くん。新システムの誕生だ。「猪股~~~俊明!」と呼べば、もちろん猪股さんも見得を切るのだが、他のみんなに比べて、御年70越えの見得は都合8秒ほどかかるので、それ以降、猪股さんの名前は呼ばないことにした。

それにしても、起伏の激しい台本で、さらにはそれをやり切ることによってしか生まれようのない「どうしようもない空気感」を、ほぼ一発でやり切る太賀くん。めちゃ笑わせてもらった。

前の仕事で遅刻となったまりか氏も、登場間もなく皆と同様に見得を切りつつ、即座に役人物にも適応。劇中、息子を殺された復讐心に燃える「十字郎」を演じる際(初めてね)も、一発で性別も飛び越え、その意思の暗さと強さを保ちながらのやりとりとか、もうほんと「仕込み」くらいのクオリティでやってのける。共演者が笑っていようがお客さんが笑っていようがお構いなしで、全力で入ってくる。あれはすごい。大体の俳優さんは「まあ、初見だから」と、少し引き気味で安全策をとるような局面でも、その先でどんな役の行動が待っているかもわかっていない中、バチン!と音が出るくらいジャストな声を出してくる。本番中にも言ったが、この人たち、いわゆる演劇の稽古の一カ月、何をしているのだろう。初見でこのクオリティなら、ほぼやることがないじゃないか。

この記事の続きは有料会員限定です。有料会員登録いただけますと続きをお読みいただけます。会員登録はコチラ
Spread the love