プロレス中継の副音声のあり方とは【連載『神田伯山の“真”日本プロレス』延長戦!2021年11月号】

待望のシーズン2も決定(ただし、放送時期は未定)したCSテレ朝チャンネル2『神田伯山の“真”日本プロレス』でおなじみの講談師・神田伯山&アナウンサー・清野茂樹の名コンビ。2人は今年1月4日の東京ドーム大会に続き、10月21日に行われた「G1 CLIMAX 31」優勝決定戦でも新日本プロレス中継の副音声を担当。相変わらずのフリーすぎるトークで、プロレスマニアのハートをわしづかみにした。副音声のあるべき姿を追求し、前人未到(というか、誰も登ろうとしていない)の「副音声の最高峰」を目指すマット界の弥次さん喜多さんに、改めて副音声についてインタビュー! テレビ誌でも前例のない、そして今後もないであろう副音声の話題のみのインタビューをご堪能ください!
取材・文/K.Shimbo(プロレス中継で今までで一番驚いた、印象的な音声にまつわる出来事は、テレ朝の真鍋アナと大仁田厚による「大仁田劇場」。特にグレート・ニタ復活のくだりは、放送史上に残る珍映像)
撮影/ツダヒロキ(同じく、佐々木健介の雄たけび「ヴァーッ!」を初めて言語化したのは誰なのか?)

<プロフィール>
神田伯山(かんだ・はくざん)●1983年東京都生まれ。日本講談協会、落語芸術協会所属。2007年、三代目神田松鯉に入門し、「松之丞」に。2012年、二ツ目昇進。2020年、真打昇進と同時に六代目神田伯山を襲名。講談師としてもさることながら、講談の魅力を多方に伝えるべく、SNSでの発信やメディア出演など様々な活動を行っている。現在は『問わず語りの神田伯山』(TBSラジオ)などに出演している。

清野茂樹(きよの・しげき)●1973年兵庫県生まれ。広島エフエム放送(現・HFM)でアナウンサーとして活躍。『ワールドプロレスリング』(テレビ朝日系)で数々の名実況・名言を生み出した古舘伊知郎アナウンサー(当時)に憧れ、宿願だったプロレス実況の夢を実現すべく、2006年フリーに。2015年には新日本プロレス、WWE、UFCの実況を行い、前人未到のプロレス格闘技世界3大メジャー団体を実況した唯一のアナウンサーになる。『真夜中のハーリー&レイス』(ラジオ日本)のパーソナリティーとしても活躍。

 

『神田伯山の“真”日本プロレス』
CSテレ朝チャンネル2 ※随時再放送の予定あり
出演 神田伯山 清野茂樹(実況アナウンサー)
●“最もチケットの取れない講談師”の神田伯山と、プロレスに魅せられた実況アナウンサーの清野茂樹が、テレビ朝日に残された貴重な映像を観ながら、プロレスの歴史をマニアックに語り尽くす。そのほか、当事者を招いて真相を探る「真のプロレス人に訊け!」や、現役プロレスラーの魅力を深掘りする「最“真”日本プロレス」といったコーナーも。2022年に、シーズン2放送決定!(詳細未定)
番組HP:https://www.tv-asahi.co.jp/ch/recommend/hakuzan/

「CSテレ朝チャンネル2」にて12/28(火)午後8・00~11・00の生放送特番も決定!

『テレ朝チャンネル presents「新日本プロレス アワード 2021」』
CSテレ朝チャンネル2 12/28(火)午後8・00~11・00
●メインプレゼンターは神田伯山、清野茂樹もスタジオ生出演。番組では、新日本プロレス「ファンが選ぶベストマッチ2021」を募集中! 第1次投票締切り間近!
投票はこちらから!

「実況で改めて考察する『1.4事変』」清野茂樹(実況アナウンサー)【私にとっての「1.4事変」】

『神田伯山の“真”日本プロレス』過去記事一覧はこちら

副音声の会場での存在が、そろそろ選手にバレてきている(伯山)

――伯山さんのラジオ『問わず語りの神田伯山』(TBSラジオ)でお話されていましたが、「G1 CLIMAX 31」での副音声について、エル・デスペラード選手(注1)がTwitterで怒っていたとか。

伯山 我々の副音声は、失礼と革新の紙一重ですから(笑)。多分デスペラード選手を怒らせてしまったという。それは僕だって、講談をやっているときに、しゃべっている人とか、違うところで笑っている人がいたら嫌ですからね。真剣に、命懸けでやっている選手の方には悪いなと思います。ただ、ツイートには「#真日本プロレス」を付けてほしかったですね。ハッシュタグがあれば、ちょっと笑いにもなるじゃないですか。マジっぽいと見ている人が引いちゃうこともあるかなと。蝶野(正洋)さんはハッシュタグを付けてくれたんですよ。そこは配慮が欲しいなと(笑)。ただ本当に配慮が必要なのは、そもそも我々なんですよ。構っていただいてこんなにありがたいことはないですし。いつかゲストにお越しいただいて、真相を聞きたいですね。私らのことじゃないかもしれないですし。全選手に敬意があるので、そこだけは誤解がないように。

――副音声の席がリングサイドにあるので、選手との距離がすごい近いですよね。

伯山 そろそろ選手にバレてきているから、最前列の席じゃなくていいんじゃないかという気はしています。でも、最前列でやっているから面白いというのもあるんですよ。なんで副音声をそこでやるんだよっていう。

清野 普通に考えれば、後ろでやるべきなんですけど、それをあえて前でやっている面白さ。アントニオ猪木さんが言う「猪木の常識、非常識」(注2)ですね。

伯山 しゃべっているのを、選手には見えないようにするのはどうですかね。アダルトビデオのマジックミラー号(注3)みたいな(笑)。

清野 まあ、本来であれば、お客さんの歓声で我々のおしゃべりなんてかき消されるはずなんですよね。

伯山 なるほど!

清野 今、この状況(感染症対策による諸々の規制)だから聞こえてしまうというのが問題なんです。

伯山 ただ、オカダ選手と飯伏選手(注4)が対峙して、間を持っているときは黙りましたよね。みなさんが静寂を楽しんでいるときだから、我々がケラケラしていたら邪魔になるなと思って、僕も清野さんも何も言わずにすっと黙った。静寂というのも声なんです。それもプロレスの一部だと思うので。

――ちなみに、話す内容についてスタッフから指示はあるんですか?

清野 普通の中継ならスタッフからカンペが出て、次はこの話題をしてくださいとかあるんですけど、この中継では一切ないです。

伯山 ないですね。ほったらかし。

清野 それが楽しくて。

伯山 遊ばせてくれてますよね。僕はそこに、昔のテレビの余裕みたいなものを感じるんです。昔のテレビって出演者を遊ばせる余力があった。副音声には、そういうテレビの懐の深さとか、本来のテレビのあり方があるのではないかと。すごい真剣じゃないですか、主音声って。

清野 視聴者も真剣に聞いていますし。

伯山 もちろん、それでいいんですけど。なんなんですかね…、なんか引っかかるんですよ。もっと缶ビール片手に、みたいな気分で観たいかなっていう。

清野 とりあえず、我々と主音声の方たちは交わらない方がいいのかもしれません。「G1 CLIMAX 31」のときの主音声とのクロストークはかなり気を遣うし、急に襟を正す感じになりますね。

伯山 また清野さんがそれを本放送で正直に言っちゃうんですよ。裏で言うべき話なのに、普通にオンエアで流すという(笑)。さすが、副音声!

注1・エル・デスペラード選手 正体不明のマスクマン。「G1 CLIMAX 31」優勝決定戦では第0試合に出場。試合後に「ゲラゲラゲラゲラうるせえな」とツイートした。
注2・「猪木の常識、非常識」 2014年、国会の参院予算委員会で質問に立った猪木が第一声で「元気ですか!」をぶちかました後、周囲がドン引きしているのを察してか「猪木の常識、非常識で通っています。すいません」と謝罪した。
注3・マジックミラー号 マジックミラーに囲まれた撮影スタジオを設置した特殊車両。各地に出向き、外から中は見えないが、中からは外の風景が見えるという状況でアダルトビデオの撮影を行う。
注4・オカダ選手と飯伏選手 「G1 CLIMAX 31」優勝決定戦で、オカダ・カズチカと飯伏幸太が激突。飯伏の負傷によるレフェリーストップでオカダが優勝した。詳細は本連載の前回を参照。

<次回予告>

なんと12月28日(火)に、神田伯山がメインプレゼンターを務め、清野茂樹も出演する『テレ朝チャンネル presents「新日本プロレス アワード 2021」』の放送が決定! 年末の生放送特番ということで、気合十分! シーズン2を含め、展望をアツくトークします。それまで、ごきげんよう、さようなら!

 

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TV Bros.編集部
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