押井守のサブぃカルチャー70年「オマケの巻」【2020年12月号 押井守 連載第9回】

今回は押井少年が夢中で集めたという、お菓子などの商品についている「オマケ」がテーマ。押井さんによると、この「オマケ」は、現代の「ガチャ」に通ずる文化だという。ガチャ世代にも納得の「オマケ論」、そして、押井さんの驚愕のゲームプレイ時間に注目の第9回です。
取材・構成/渡辺麻紀

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戦後75年をかけて、オマケ文化はここに終焉を迎えた

――今回は、押井少年も夢中で集めたというオマケについて語っていただきます。

まず、聞きたいんだけど、オマケで最初に憶えているのって何?

――やっぱりマーブルチョコレートのアトムくんシールですよ。集めて家中に貼りまくっていました。

わたしもそうです。前回も言ったけど丸美屋のエイトマンふりかけ。エイトマンのシールを集めてた。『鉄腕アトム』は明治製菓、『鉄人28号』はグリコ、『ジャングル大帝』は三洋電機……主題歌にもメーカーの社名が入っていて、『鉄人』なんて最後に「グリコ、グリコ、グーリーコー」と連呼する。子供心に胡散臭いと思っていたからね、わたしは。

――でも押井さん、そう思いつつも、買っていたんでしょ?

そうそう(笑)。今回、オマケを取り上げようと思ったのは、オマケは文化だと思っているからです。それも戦後の文化。アメリカの文化が入って来た戦後、日本に広がっていったんだよ。
商品を買ったら何かが付いてくるというシステムを始めたのは、アメリカが最初なんじゃないの?

――クラッカー・ジャックですよ。映画にもよく出てくるスナック菓子。調べてみると、1912年からオマケを封入していたそうですよ。

じゃあ、その辺がルーツになるのかな。商品に付加価値をつけて買わせようとする。それがキャラクターだったりタイアップだったりするわけだけど、アメリカのように大量生産、大量消費がないと成立しない文化だよね。
戦前の日本でもオマケ的なものは存在していたとは思うけど、その場合は紙芝居や駄菓子屋の当たり外れで楽しむパターンが多かった。いわゆるクジ文化ですよ。

――アイスにもホームランバーがありましたよね。スティックに「ヒット」とか「ホームラン」とか印字されていて、ホームランならすぐに1本、一塁打だと4本集めて1本もらえるとか。

野球のダイヤモンドをまわることを想定してヒットを加算して行くシステム。わたしも集めましたよ。あと駄菓子屋には千切りカレンダー(ニッキ紙)みたいなのがあって、引きちぎった紙をなめると「アタリ」とか「スカ」という文字が出てくるの。子供たちの間では「アタリ」を引いた話を聞いたことがないので、実は「アタリ」はなく、あの店のばあさんが騙しているんだなんて囁いていたからね(笑)。
これは、今で言うと「ガチャ」ですよ。「ガチャ」と同じ。

――ゲームをしないので「ガチャ」がよく分からないのですが、「ガチャポン」と似てるんですか?

原理は似たようなものかな。課金するとたくさん回せるの。つまりエフェクトが回って、欲しいキャラが出てくるまでやる。ソシャゲ(ソーシャルゲーム)に月に何十万もブチ込んでいるというのは基本的にガチャ。ガチャ文化です。何が出るか分からないという点では、カプセルのガチャと同じ。おそらく、そこからのネーミングなんだろうね。
「今月はこのキャラクターの水着があるらしい」とか「強い武器がある」とか、「レベルが凸る」とかね。あと「天井」というのもあって、何十回ガチャを引けば欲しいキャラが必ずもらえること。反対に天井がないのもある。ガチャテーブルというのは、本来なら一回まわすごとにアトランダムなはずなのに、最初からテーブルがあって出る順番が決まっていることです。ファンはそのデータを取って消費者庁に訴えることもある。そういうとき、メーカーが炎上するので、お詫びをファンに配る。それを詫び石と呼んでるんです。

――お、押井さん、さすがに詳しいです。

そんなのゲームをやっている人間の常識です。

――でも押井さん、その「欲しいキャラクター」って、ネット上だから実体がないわけですよね? それに大金をかけるんだ……。

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