誰にでも週刊少年ジャンプとかしか読めない時期というのがあって、今がまさにそれである。私がどことなくくたびれてしまい、感受性が鈍ることをにわかに受け入れておきたい季節なんかに、ただ普段よりも多く眠りこけたり目的もなくジャケ買いした漫画を読みあさったり俗っぽい話ができる友達と俗っぽい話をして一日だらだらとパフェをたべたりポテトをたべたりしている間にも、世界はべつに止まっていてはくれない。野望がなくなるわけではないけれど、今はちょっとがんばれないし、人の役に立つようなことがひとつも言えないような時があるのだ。人生の目標は世界を平和にすることなので、世界が本当の平和にならない限り私は心のどこかで自分自身を責め立て続けることになる。なので、ぐうたら過ごしている間も一部ではぐさぐさと針を刺されているような感覚がしている。ふとしたときに、憧れのミュージシャンであるポ◯ノグラフィティ の新◯晴一さんがツイッターに最果◯ヒさんの詩集を載せていたことを思い出し、羨ましい!! わたしもいつか新藤◯一さんに自分の言葉を読んでもらいたい!!! とジタバタと一人暴れたりする。だけれどすでに出した二冊の本は自分の話ばかりで勘弁だし、なにかちゃんとした……すばらしいものを、つくりださなくては自分のことが恥ずかしくて恥ずかしくて生きてはゆけない。いつかどんなに憧れているひとにでも、読んでいただいてもだいじょうぶと思えるようななにかをつくりださなくては……といった多少の不純な動機を持ちつつ、しばらくのあいだ何も書かずにごろごろと転がって過ごしていた。書かない私はただの葦。しかし感受性は死ぬばかり。やってはいけないことであふれているご時世ではおちおち深夜徘徊もできやしないので、モラルに反しないかぎりの悪いことをしまくろうと思う。
私はこう見えてけっこう悪いやつで、常日頃から悪事を働いている。31アイスを食べたくなると店まで行かずにUber EATSで注文して、デスクの椅子にあぐらをかいて食べるし、ついてきたドライアイスは窓から捨てる。友達が家に来ているときにそれをしようとしたら全力で止められて、どうしてドライアイスを窓から捨ててはいけないのか分からなくなりほんとうに悲しくてちょっと泣いてしまった。下に人がいたらあぶないからという理由で、ぐうの音も出なかった。
自分がAV女優として他の女の子と比べられたり期待をかけられたり逆に誰にも期待されなかったりすることを全部つらいと思っているくせに、ジャンプの掲載順ダービーは毎週真剣に追ってしまう。新連載は始まった時点で「この作品はどのくらい長続きするかな」「同世代でジャンル被ってるからライバル同士かな…」などと俗っぽい視点で話し合い、掲載順が低いものを応援するために毎週アンケートに感想を書いて出したりする。ジャンプ漫画とAV女優には似たところがあって、AV女優にも打ち切りのようなものが存在する。メーカーから作品が売れない・人気がないと認識されると契約が打ち切られるのである。自分らしく居たいけれど、需要を完全に無視し続けると立ち位置が危うくなっていく。髪型や背格好が近いだけで同ジャンルとされ、勝手にライバル同士のように見られ、どっち派? などと勝手に推し量られる。ジャンプ漫画にはそう言う意味で、刹那的な需要の波を泳いでいる同士だという謎の親近感がある。AV女優ダービーはつらくて見ていられないのに、ジャンプ掲載順ダービーは楽しめてしまう自分、これはほんとうに最低だと思う。
嘘もよくつく。原付を買って乗り回していることをツイキャスで言おうとしたときに急に「リスナーの中に原付にトラウマがある人がいたらどうしよう」と不安になり、「自転車を買おうと思っています」と嘘をついた。自転車を買おうと思っていないし、原付恐怖症の人も見たことがない。だけれどこのよくわからない嘘をついてしまったせいで、晴れた日に原付に乗って緑道なんかをのろのろと25kmくらいで走っているときのヘルメットに差す陽の暑さ、転んで怪我をしたけれど芝生の上で逆に嬉しかったこと、自転車や歩きの時よりも大声で歌を歌っても気づかれにくいこと、でも歌を歌い始めると楽しくなりすぎてしまい運転が不安定になるからやめたほうがいいことなどを話せなくなってしまった。エッセイって、どこまでが本当なのだろう。もしかすると私が書いていることなんて全部嘘かもしれないのに、それを証明する手立てもない。それでも、ほとんどすべての場合において、純度100%の嘘も純度100%の本当もあまりないのだろうな、と思う。フィクションかどうかの境目は、配合の比率を四捨五入したにすぎないのだろう。
名前をぎりぎり聞いたことがあるかないかというくらいの芸能人の不倫報道で、相手の予想候補として私の名前が挙げられた記事(記事とも呼べないレベルのおそらく素人のアフィリエイト目的のページだと思う)があった。候補といってもイニシャルと髪型からの雑な推測で、さらにいうと私は二番目の候補としての登場だったのでほとんど騒ぎにならなかったが、名前を挙げられていたもう一人の女の子は結構はっきりと反論していた。その子は何も悪くないのだと思うけれど、二人候補があがったうえで片方がはっきりと否定するとやんわりと「じゃあ戸田真琴のほうか」となってくるわけで、私は正直言って全てがどうでもよく何も言及するつもりがなかったのだけれど、一応訂正することにした。私にとって野暮とされることが、SNS社会では美徳とされるということを、悲しいかな知ってしまっているからである。
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