「光るから見つけて」【戸田真琴 2020年9月号連載】『肯定のフィロソフィー』

 生まれて初めて、アイドルを見つけたかもしれない。
 よく知らないグループが、とある番組で歌い踊る姿を、何の気なしに見ていた。自分の身体が小さいので、つい比較的身長の低い子ばかりを見てしまう。よくこんなに大きな動きできれいに踊れるなあ、と思っていたら、ちょうどその子がカメラに抜かれた。

 その瞬間、ものすごく良い顔をした。
 どう表現したらいいのかわからないけれど、多分このシーンを見てこの子のことを好きにならない人はいないだろうな、なんて呑気なことがスラスラと言えてしまうような、要は抜群なキメ顔だった。誰にも真似できないほど最高な。素直にそう見えた。
 ちょっとびっくりしたので、もう一度そのシーンを見てみると、信じられないことが起きていた。私がキメ顔だと思った表情は、よくよく見ると、涙が一粒ポロリとこぼれる瞬間の表情のことだったのだ。全身の毛穴が裏返るような変な気持ちになる。コマ送りでも美しいその顔の目元あたりから、確かにきらりと何かの滴が落ちていて、それは涙のようで、もしかしたら汗かもしれないけれど、どちらだとしたって関係がなかった。
 本物のアイドルって、体液の一粒までアイドルなんだ、と思いながら、しばらく茫然とするほかなかった。

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