お客さんのいる競馬【藤田菜七子 10月号 連載】

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ついに、ついに、ついに――
 中央競馬にもお客さんが帰ってきました。
 コロナ禍の影響で、シーンと静まり返った競馬場でレースをすることになったのは2月29日。そこから、実に230日ぶりの再開です。
 お客さんが入っていても、いなくても、ジョッキーがやることは、やらなきゃいけないことは変わりません。
 1レース、1レースを大切に、入念な準備を繰り返し、目の前のことに集中する。やれることはすべてやり、ひとつでも多くの勝利を目指して全力を尽くす。
 ただ、それだけです。
 それでも、スタンドにお客さんの姿があるのとないのとでは、大きく違いました。声を上げるのは禁止なので、声援が飛んでくることはありません。「おめでとう!」の祝福も、いつもなら気持ちが凹んじゃうようなヤジもありません。あるのは、テレビ越しではない、そこにいてくださるファンの方の熱い視線です。それが、馬に、ジョッキーに、力を与えてくれるということに、改めて気づかされました。

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