雨にも負けず、コロナにも負けず【藤田菜七子 6月号 連載】

新型コロナウィルス禍の対策として、JRAが無観客レースに踏み切ったのは2月29日のことでした。
このとき私は、落馬事故で負傷したケガのリハビリ中で、先輩たちに話を聞きながら、「無観客で開催される競馬って、どんな感じなんだろう?」と、あれこれ頭の中で想像していました。
なんと言っても初めてのことなので。

レースに復帰したのは、3月20日です。実際に体験した無観客のレースは、そんな私の想像をはるかに超えていました。

馬の息づかい。
土を、砂を蹴る音。馬具の軋み。
いつもは、スタンドの歓声で掻き消されるそんな音が、はっきりと耳に響きます。
もちろんのことですが、観客の皆さんの声援は一切、ありません。
寂しいという言葉では到底表現しきれない、心にぽっかりと穴が開いたような感じでした。

「早くいつもの競馬に戻って欲しいです」

あの時点では、それが私の、競馬に携わるすべての人の思いでした。

ところが、です。

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