2度のこじらせライブ中止を経て、初めて開催された5月30日のこじらせオンラインライブ。その終了後のおしゃべりです。ライブも連載トークも3ヶ月ぶりの収録となったのですが、その間にみなさんいろいろやってたようで…。
構成/前田隆弘
久保みねヒャダ、それぞれYouTubeで番組を始める
──久保さんと能町さんも(俺たちデトックス女子会会議室)、ヒャダインさんも(HYADA in my room)、ステイホーム期間中にYouTubeの番組をスタートさせましたよね。どんな動機で始めたんですか?
久保 能町さんからLINEが急に来たんですよ。
能町 「何かやりませんか」という。デトックス女子会(久保と能町が不定期で開催しているトークイベント)が中止になってしまったから、その分、デトックス女子会のスタイルでラジオをやってみたくなったんですよね。
久保 私は自分の仕事を進めないといけないから、その仕事以外では久保みねヒャダやデトックス女子会くらいしかやってこなかったんだけど、その2つが中止になってしまって、「他人としゃべっていないと脳の退化がヤバい」という危機感をビンビンに感じていたんですよ。だから能町さんの提案に乗っかろうと思って。これをきっかけに能町さんとまた週1で話せるというのは新鮮な気持ちですね。
能町 ラジオ(久保ミツロウ・能町みね子のオールナイトニッポン)やってたときの気分ですね。
久保 でもYouTubeやってる他の人たちに比べて、自分は視聴数を稼ぐためのスキルが足りないなと気付かされて。まず「上手に話せない」ということに、今さら気付いたり…。
──ずっと番組やってるのに。
久保 しばらくやってないと、もう全部記憶がなくなっちゃうんで。だから「なんで自分は人と話したいのか」を積み上げていくところから始めてますね。
能町 YouTubeやっても微々たるお金しか入ってこないのは分かってたから、別にお金が目的というわけじゃなく、ただ「何かやりたい」と思ったんですよ。人と会う機会が減って、仕事はあるにはあるんだけど、一人でやってることじゃないですか。「誰かと何かをしていないと気が滅入るな」と思って、久保さんに連絡したんです。「単純にやりたいからやる」というのをしばらくやってなかったし。
──ヒャダインさんはどんな動機で?
ヒャダ 僕はいろんな人の話を聞くのが好きなので、もともとYouTubeで番組をやりたいと思っていたんです。でもそれをやるにはスタジオ借りたりして、いろいろ手間がかかるな…という気持ちでいたところにこういう事態になって、「あ、リモートでやれば楽じゃん」と気が付いて。それで始めました。
──みなさんそれぞれ本業の作家業をやりつつ「久保みねヒャダ」をやっていて、でもその「久保みねヒャダ」が中止になると、今度は自分で番組をスタートさせたというのは興味深いですね。
久保 これは今に始まった話じゃなくて、もうずーっと前からですけど、私は「本業がちゃんとできていないのに、テレビやってる場合か、ラジオやってる場合か」と思っていたんですよ。だからイベントや収録がなくなったらなくなったで、「ああ、これで本業に集中できる」とホッとした部分はどこかにあったわけです。でもニュースを見てると気ばかり焦って、集中できるどころか、今まで通りにさえいかなくなってきて。
──仕事以外の部分でバランスが取れていないと、仕事そのものも回っていかないというのはありますよね。きれいごとじゃなくて。
久保 だからしばらく離れてたツイッターもちょっとずつ再開してます。まだちょっと怖いんだけど。でも能町さんとYouTubeをやることで、今一度自分を再構築したいなーと思うようになりました。
これから新しい人間関係を結ぶには?
──ところでこの感じの暮らし、どうですか。早く抜け出したいと思います? それともしばらく続いても全然いいと思ってます?
能町 抜け出すか、続けるかというよりは、「抜け出せなくなっちゃいそう」という怖さがある。
──どういうこと?
能町 仮に「もう明日から全然大丈夫ですよ」となったとしても、一気に「やったーっ!」とはなれない気がするんです。もう気持ちがダレちゃってる感じがして。世間がパニクってる感じに甘えて、やらなきゃいけないことを延ばし延ばしにしてることって、ちょっとあるんですよ。「このたるみから果たして抜け出せるのか」という心配がある。
──そういう人、けっこういそうですね。
能町 自宅とは別に仕事場を構えてるんですけど、物書きの仕事は喫茶店でやってたんです。でも今は喫茶店に行けないから、なるべく家でやってて。イラストは道具が必要だから仕事場でやってたけど、それもやめようと思って、最低限の道具を家に持ち帰ってきたから、家でほぼ何でもできるようになったんです。そうなると、もう仕事場は本の置き場でしかなくなってしまって。事務所を構える意味がよく分からなくなってきた。ここからまた仕事場に通う生活に戻せるのかがちょっと不安です。
久保 会社員の人でも、巨大な5月病になってる人がいると思うんだよね。「また会社に通うのが怖い」という…。
ヒャダ 4月は自殺率減ったんでしょ?
能町 めっちゃ減ったみたいですね(*過去5年で最少)。
久保 せっかく減ったのに、再開したら人身事故がまた増えて、本当につらい。どうにかできないもんかなって思う。これもコロナ禍のせいというより、コロナ禍になる前からの問題点が浮き彫りになったってことなんだろうけど。
──じゃあ久保さんは、今のこの感じが続くことは全然あり?
久保 私の生活は前と変わってないんだけど、他人が何か言ってくるわけじゃないから、自分に対する責め苦の分量がちょっと多くなってて、それが長く続くとつらいかな。
能町 久保さん、最近ちょっと沈み気味な気はしますね。
久保 なるべくツイッターには愚痴は書かないようにしてたんだけど、でも今朝7時ぐらいに「深夜からやりつづけてる家事がまだ終わらないしつらいです」って素直にツイートしたら、「ジャンルは違いますが共感します」ってリプライが来て。それを書いてくれたのが、大食いの魔女・菅原初代さんだったんですよ!
能町 めっちゃうらやましいんですよ、それ。菅原さん大好きだから。
久保 私も大好きだから、「つらいって言ってみるもんだなー」と思って。
一同 (笑)
久保 しばらくツイッターを離れていたせいもあるけど、「まだツイッターに楽しいことってあったんだ!」という気持ちになった。
能町 新しい出会いは、定期的にあったほうがいいと思うんです。普通に仕事してたら、もう30代後半や40代以上としか知り合えないじゃないですか。ヒャダインさんは違うと思うけど、出版系は20代と知り合うことがあまりないんです。そうなると、ただ老けていくような気がして。若作りしたいとまでは思わないけど、若者のことを何も知らない人にはなりたくない。だから定期的に若い人と出会って、若い人の話を聞いていかないと…とは思ってますね。
久保 私は今までの友達関係には困っていないんだけど、でもそこからさらに新しい人と仲良くなるにはどうしたらいいんだろうかと考えていて。自分に自信がなさすぎるから、恋愛や結婚に巻き込んだら申し訳ない。「男のケツを追いかけるメス犬」みたいにはなれないんだよね。
──「メス犬」以外の選択肢もあるでしょ(笑)。
久保 だからいろいろ考えて、「そこそこ他人で、コミュニケーションの時間は2時間くらい。その時間だけは親密なふりができて、2時間たったら後腐れなく離れる」というシチュエーションならいけるんじゃないか…と思いついた瞬間に、「あ、これってただのホストクラブだ」って気付いたの!
一同 (笑)
久保 「これ、キャバクラやホストクラブじゃん!」と思って。ああいう商売が成り立つ意味が分かりました。でもそっちに行きたいわけでもないし。
男はコピペ!
──でもホストクラブは、条件だけなら合致してるわけですよね?
久保 そうなんだけど、商売で接客がうまい人と付き合うと、すごくへこむんだよね。
能町 分かる。「やってくれてるのね」って思っちゃう。
久保 あと、ホストクラブに限ったことじゃないけど、男の人に対してちょくちょく思うのが、今まで女性に対してうまくやってきた行動を使ってくるわけよ。
ヒャダ まあコピペですよね。
久保 コピペコピペ。男はコピペ(笑)。
一同 (笑)
──たしかに、過去の成功パターンをなぞりがちですよね。
久保 過去のことを思い出すと、男の人が女性と仲良くなろうと思って取る態度は全部、過去うまくいった方法をなぞってるだけだな、と気が付いて。それをやられるとこっちは「すみません、私はあなたが今までうまくいってきた女性の完全な下位互換で、なんなら互換も利かないくらい低スペックなんです!」と思って、気持ちが崩壊してしまう。
能町 私も本気でホストにハマったりできないんですよね。そういう自意識があるから。
久保 「この人、たくさんの経験値を積んでこれをやってるんだな」と思うと引いちゃう。私の場合、「男の人にすごく特別なことをしてもらった経験」よりも、「何か恥ずかしいことだけど自分が行動できたことを向こうが認めてくれた経験」のほうが記憶に残るんだよね。だからやっぱり「男のケツを追いかけるメス犬」って、いいわーって(笑)。
ヒャダ さっきからそれ、すっごい言いますよね。
久保 結局そういうのをやりたかったのかな。でもクズみたいな男にだまされるのはやっぱり嫌なわけで。
──たぶん「我を忘れてハマる」という行為が、性格的に無理なわけですよね。
久保 無理なんですよ。しかも、このコロナのニューノーマルな世界ではますます親密になれないわけじゃないですか。あとはもう自分が介護する側になるしかないんだ…とか考えて、お風呂でしくしく泣いてた。
──今の状況で、新しく親密な関係を結ぶのは難しいかもしれないですけど、さっきの菅原初代さんみたいに、カジュアルなコミュニケーションを積み重ねるだけでも全然違うんじゃないか、と思います。
久保 そうか。だから今、ツイッターでリプライをちょっとずつ返すようなことをやってるのかも。
能町 いいですよね、浅い付き合い。
久保 でも初代はうれしかったなー。やだ、自粛期間中にサカってるメス猫みたいで恥ずかしい(笑)。
センサーが敏感な人は、遮断でコントロールする
──ヒャダインさん、この生活が続くことに対しては抵抗あります?
ヒャダ 僕もそもそも、そんなに外に出る仕事じゃないんですよ。でも「これは良くないな」と思ったことがあって。テレビの仕事が飛んだりはしたんですけど、それならそれで家でコツコツ曲とか作っていればいいのに、「自粛期間で芸能人は暇になった」という言葉に呑まれて、「俺も暇をつぶさなきゃ」という変な強迫観念にとらわれちゃって、無駄にゲームをしてました。「みんなと同じように、暇を持て余した芸能人にならなきゃいけない」みたいな強迫観念。途中で「別に俺、関係なくね?」と気付いたんですけど。
久保 やっぱり呑まれますよね。世間の雰囲気に。
ヒャダ そう、「自粛しなきゃいけない」「暗くならなきゃいけない」みたいな雰囲気に呑まれちゃうから、ちょっとだけメディア断ちをしてました。志村けんさんが亡くなったあたりの時期に。期間は1週間くらいでしたけど、すごく健やかになりましたね。
能町 私もツイッターはやめてはいないんですけど、読む人を3分の1くらいに削りました。
ヒャダ それがいいですよ。
久保 私は全然知らない面白い漫画を描いてる人をフォローしてたんですけど、そのときの基準が「リプライに全部レスするタイプの漫画家さんはフォローしない」という(笑)。
ヒャダ あー、なるほど(笑)。
久保 インスタの育児漫画が好きだから、ツイッターもやってる作者をフォローしようと思ったんだけど、育児系はもう全レスしてる人が主体で。というか、「しなきゃいけない」みたいな雰囲気になってるんだよね。一度敷居の高さを決めてしまったら、もう変えられないみたいな。
能町 1回やり始めちゃうとね。
──話を聞いてて、先日の『テラスハウス』の事件を思い出しました。亡くなった人もユーザーもコロナ禍でたくさん時間があるから、SNSを見る時間が増えていた…というのも間接的な要因としてあったのかもな、と。練習やプロレスの試合が入っていたら、そこまでSNSをがっつり見なかったかもしれない…とか思ったり。
能町 それはあるでしょうね。私も結局ツイッター見ちゃうけど、鬼散歩(10kmレベルのハードな散歩)やってたのもそういうところがあって。散歩してる間はツイッターを見ないし、延々歩き続けて体をヘトヘトにするのは、いい効果がありますね。
久保 「期待に応えなきゃいけない」という気持ちは、若い人のほうが強いと思うんだよね。いろいろな人の声を聞いて、仕事先のリクエストにも応えて、うまくその真ん中を取ってやっていく…というのは、いっぱい無理をしなきゃいけないし、体力も使う。そういう人のほうが成長もするんだけど、でも一方で「大人のいい加減さを見せてあげたい」という気持ちもあって。過剰に期待に応えるのは、やっぱりセーブしないといけないんじゃないかな。そうするのが正しいのか分からないけど。
──人の気持ちを受け止めるセンサーって、敏感なほうがいい。でもコロナ禍でみんな家にこもっている時期は、それが悪いほうに発動しやすかったんじゃないかと思うんですよ。能町さんの鬼散歩みたいに、その感覚を一時的に遮断するような手段を持っていないとダメなのかな、って。
久保 だからやっぱり人と会って遊ぶのって、その遮断なんですよね。カラオケ行って遮断してえ!
意識が高いままはしんどい
能町 私、最近いいなと思ったのが、家が赤羽なんですけど、みんな意識がめっちゃ低いんです。
一同 (笑)
能町 それって本当は良くないんだけど、ある意味ちょっと助かってもいて。コロナがめちゃくちゃヤバかった時期にも、人が普通に歩いてるんですよ。鬼散歩して帰り際に赤羽駅のまわりを通ったら、ラーメン屋に会社帰りのOLや若者が10人くらい並んでて。
ヒャダ 相変わらずヤバいっすね。
能町 「赤羽、マジか」と思ったんだけど、この意識の低さ、ちょっとは取り入れたいなと思いました。
久保 生きるための意識の低さね。
ヒャダ 鈍感力的なやつですよね。
久保 そういう、図々しかったり意識低い人と接する機会については思うところある。
能町 池袋も、それなりにいそうな気がするんですけど。
久保 いるいる。昨日久しぶりにうろうろしてたら、全然生き生きとしていて良かったな。ネットの意識高みの空中合戦は見ててつらかったりするから、あえて意識低い風呂にどっぷり入る。
能町 それ大事ですよ。東京の感染者数が2、3人になったとき、私も外で昼飲みしましたから。
ヒャダ 緩んでますね。
能町 緩んだんです。多少は緩めないとダメじゃないかと思って。
久保 話変わるけど、こないだ布団でしくしくしてるときにふと、「あー、世界中みんな少しだけ私より性格悪くなんねえかな」と思って。
能町 どういうこと(笑)?
久保 「そしたら私がいい人に見えるのに」って。
能町 久保さん、自分のこと性格悪いと思ってるんですね。
久保 うん、思ってる。
能町 そうでもないと思いますよ。私は自分がめちゃくちゃ性格悪いと思ってますけど…。
久保 能町さん、性格悪いかね? やんちゃだとは思うけど。
能町 まあやんちゃでもある(笑)。
久保 ヒャッくん、自分のこと性格悪いって思ったりする?
ヒャダ 思いますよ。底意地が悪いと思ってます。
能町 私もヒャッくんは悪いと思う(笑)。
ヒャダ でしょでしょ? 僕は性格は全然良くない。
能町 だから久保みねヒャダの中だったら、久保さんが一番性格いいと思ってる。
ヒャダ ほんとそう。
久保 そうなの!?
能町 だからもっと性格悪くなって大丈夫です。
──意識も、もっと低くなっていいです。
久保 うまく世界とやっていけるような性格の悪さになりたい。性格の悪さ、足りないなー。まだまだだ。
能町 性格悪くなって男の尻を追いかけてください。
久保 そうだ! 性格悪くなって「男のケツを追いかけるメス犬」になる!
ヒャダ 目標ができて良かった。
久保 「男のケツを追いかけるメス犬」になる。それが私のニューノーマル。こんなの親に聞かせらんないよ(笑)。
【番組情報】
ほぼ月一で不定期放送中
久保みねヒャダこじらせナイト
FODプレミアムでこれまでのライブを限定配信中
番組HP/公式ツイッター
【ライブ情報】
テレビでは話せないトーク満載
久保みねヒャダこじらせオンラインライブ
次回開催
ゲスト:佐久間宣行(テレビ東京プロデューサー)
配信日:2020年7月26日(日)14:00スタート
配信先:PIA LIVE STREAM
料金:¥2,980(税込)
チケットぴあにて、7月11日(土)前10:00よりチケット発売
【こじらせグッズ新商品】
こじらせメガネケース
メガネ柄にロゴをあしらったかわいらしいメガネケース。使わない時は畳んでおける有能アイテムです。
*その他こじらせグッズは「フジテレビ e!ショップ」にて販売中
【プロフィール】
くぼ・みつろう●漫画家。代表作として『モテキ』『アゲイン!!』など。現在は『ユーリ!!! on ICE 劇場版 : ICE ADOLESCENCE』制作中。のうまち・みねこ●自称漫画家。新刊『雑誌の人格3冊目』が7月26日に発売予定! 『結婚の奴』も売れてます(当社比)。NHK『金曜日のソロたちへ』にレギュラー出演中。
ひゃだいん●音楽クリエイター。J-POPからアニメソング、ゲーム音楽まで幅広く手掛ける。
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