BLUE ENCOUNTが大きな”ボイス”で愛を叫びたいカルチャーとは? 

BLUE ENCOUNTがニューシングル「囮囚」(読み:ばけもの)をリリース!  ドラマ「ボイスII 110緊急司令室」(日本テレビほか)の主題歌として書き下ろされた本作について、また、ドラマのタイトルになぞらえて、「大きな“ボイス”で愛を叫びたいカルチャー」についても話を聞いた。

取材&文/小林千絵  撮影/堀哲平

 


「ここで主題歌がかかる!」って頭に思い浮かべながら作っていきました

 

 

ーー「囮囚」(読み:ばけもの)はドラマ「ボイスII 110緊急司令室」主題歌として書き下ろされた楽曲とのですが、ドラマからどのようなインスピレーションを受けて作っていったのでしょうか?

 

田邊駿一(Vo, G) 去年1年、コロナ禍の中でいろいろ考えていて。特に去年は、著名人に対するSNSでの誹謗中傷が大きく取り上げられて、僕らも表に出る人間だから思うこともあって、正義とは何なのか、善とは何なのかをすごく考えていたんです。そんなときに「ボイス」の主題歌のお話をいただいて。プロデューサーさんに、「今回のドラマでは善と悪が表裏一体であるということを描きたい」と伺ったんです。それがちょうど自分が思っていたことと一致した。だからドラマに対して曲を作ったというよりは、自分が思っていたことを書いたら自然にドラマに沿う内容になったという感覚です。

 

ーー「バッドパラドックス」に続き、前シーズンからの主題歌続投ですが、その点で意識したことはありますか?

 

田邊 「バッドパラドックス」の“2”は作らないと決めていましたね。めちゃくちゃスローな楽曲か、振り切った勢いのある曲かのどっちかにしようと思って。実際にそういう候補曲も作って、最終的に残ったのがこの「囮囚」でした。

 

ーー「囮囚」はイントロから緊迫感があって、惹きつけられますね。

 

田邊 「ボイス」に限らず、ドラマ主題歌の醍醐味って、絶妙なところでかかるイントロじゃないですか。イントロ次第で盛り上がりが変わってくるんじゃないかというくらい。僕らはアニメのテーマソングや映画の主題歌などもやらせてもらっていますが、それぞれ役割は違うと思っていて。ドラマの主題歌はもう一人の登場人物だと思っているんです。一番盛り上がっているところにそいつが登場して、ドラマを締める。「囮囚」もその感覚で、自分が「ボイスII」の監督になり脚本家になり、「ここで主題歌がかかる!」って頭に思い浮かべながら作っていきました。こういう曲作り、高校生の頃からやってるんですよ。

 

ーー高校生の頃から!?

 

高村佳秀(Dr) 田邊はバンドを組んだ高校生の時から「映画の主題歌を作ってみた」みたいなノリで曲を作ってきていたんです。

 

田邊 新曲をメンバーに聴かせるときは「この人主演の、こういう映画があって、こう盛り上がってきて、最後のエンドロールで流れる曲です、聴いてください」みたいな。ドラマや映画もそういう視点で見ていて。だから今、天職に就けたなって思ってるんです。

 

ーー実際「ボイスII」でも、「囮囚」が流れるとさらに緊張感が増しますよね。

 

田邊 このイントロを聴くだけでもう怖いですもん(笑)。ちなみにイントロのギターリフは、僕の中のサスペンスのイメージと、江口(雄也[G])の作る一筋縄ではいかないちょっとヘンテコなギターフレーズを目指して作りました。

 

江口雄也(G) それに加えて、「ボイス」は電話が鳴るのをきっかけに物語が進んでいく作品なので、イントロに電話っぽい音を入れています。あれ、電話の音をサンプリングしてるんじゃなくて、ギターで入れてるんですよ。それが田邊の作ったリフと噛み合って「ボイス」の世界観を表現する上で大きなポイントになったんじゃないかなと思います。

 

高村 ドラムは今回、生音をほとんど使っていなくて。ドラムトリガーという装置を使って、自分のプレイに別の音を貼り付けていくという手法を採っているんです。でもそれ以外のいろんなところに生音を散りばめていて。裏で鳴ってたり、片方だけで鳴ってたり、よく聴かないとわからないんですが。ドラムだけじゃなく、ほかの楽器も隅々までこだわっているので、聴けば聴くほど新しい発見ができるんじゃないかな。

 

辻村勇太(B) 僕は「ボイスⅡ」の主題歌ということで、サビは(劇中で樋口役を演じる)唐沢(寿明)さんが走っているところを想像しながら弾いています。そんな3Dな感じというか……思い描くビジョンと、それによって生み出される速度感を感じてもらえたらうれしいですね。BPMで言ったら「Survivor」(2016年3月発売)と近いんですよ。でも曲から見える景色は全然違う。僕らもよっちゃん(高村)に教えてもらってびっくりしたくらい。ビジョンや景色を意識するだけでスピード感も変わるんだなと改めて感じました。

 

ーー歌詞では“真犯人(こたえ)”や、“自分(たにん)”など、ドラマを思わせる当て字も秀逸ですね。

 

田邊 1つの単語からいろんな解釈をしてもらえたらなと思っていて。当て字はよく使いますが、今回は中でも珠玉の当て字たちを登場させています。

 

ーー歌詞を読むきっかけにもなりますよね。

 

田邊 そう。おっしゃる通りで、サブスクが主流になって、流れるようにさらっと音楽が聴かれるようになっていると思うんです。それを立ち止まらせるきっかけになればという狙いがあって。「囮囚」というタイトルもそう。まず読めないと思うので、そこで一度立ち止まってディグってもらえたらと思っています。僕らなりに現代と戦っているんです。ぜひ歌詞もじっくり読みながら聴いてもらいたいです。

 


メンバーが“大きなボイスで愛を叫びたいほど好きなカルチャー作品”とは?

 

 

ーー後半は、ドラマ「ボイスII」にちなんで、皆さんの“大きなボイスで愛を叫びたいほど好きなカルチャー作品”について聞かせてください。 田邊さんはテレビブロス別冊の「サウナブロスvol.02」にご登場いただくほど、大のサウナ好きとしても知られていますが、もちろんサウナのことでも、それ以外でも大丈夫です!

田邊 サウナも好きなんですけど、好きなものがいっぱいあるので今回はサウナじゃないもので……。僕は料理も好きなんですが、よりその気持ちを駆り立たせてくれた映画が「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」(2015年)です。ジョン・ファヴローが監督、脚本、主演を手がけている作品で。年に5回くらい観ています。この映画で、チーズメルトサンドやアーリオ・オーリオのレシピも覚えて何度も作りました。

 

高村 僕は基本的に映画、アニメ、漫画、本……なんでも好きなんですけど、今一番ハマっているのは漫画。自分が知らない世界を体感できるという点ももちろん好きなのですが、最近はそれに加えて、「作者さんはどういうことを考えて主人公にこのセリフを言わせてるんだろう」ということを想像しながら読むのが好きで。戦隊モノでも少年漫画でも、きっとその裏に意図が隠されている。「こういう考え方もあるんだ」とか「こういう手段もあるんだ」と、漫画からヒントも得ています。最近だと「ここは今から倫理です。」(雨瀬シオリ)には考えさせられましたね。

江口 僕はTBSラジオでやっているバナナマンさんのラジオ「JUNK バナナマンのバナナムーンGOLD」。もう3、4年欠かさず聴いてます。移動のときもずっと聴いていて、番組のグッズも買うくらいのファンです。ラジオの中でおふたりが1曲ずつ今週のオンエア曲を選んで、そのうちの1曲が実際にオンエアされるんですが、そこでいつか自分たちの曲がかかればいいな、というのをモチベーションに頑張っています。

 

辻村 僕はやっぱり音楽が好きなので、「グレイテスト・ショーマン」のようなエンタテインメントを題材にした映画をよく観ます。あと最近よく観ているのはディズニー映画。子供の頃普通に観ていた作品を、音楽知識のある今観るといろんな発見があるんですよ。「ティンカー・ベルが泣いてるときはやっぱりマイナーコードの音楽が流れるんだ」とか「フック船長の時計の音のテンポは60なんだ」とか。ジャズピアニストをテーマにした「ソウルフル・ワールド」もよかったな。あの映画を観てさらに音楽が好きになりました。

 

田邊 マジで「ソウルフル・ワールド」、めちゃくちゃいいよね。めちゃくちゃ泣けるし、曲もいい!

 

辻村 そうそう。「Disney+」で観れますのでぜひ!

 

田邊 「Disney+」はクラシック系のディズニー映画もありますし、最近のピクサー作品もありますし、マーベル作品も、「スター・ウォーズ」も観れます! TV Bros.さん、ディズニー特集のときにまた呼んでください(笑)!

 

ーーそのときはぜひ(笑)。では最後に、TV Bros.WEBの読者に、大きな“ボイス”でBLUE ENCOUNTをアピールしてください。

 

田邊 えっと「Disney+」は……。

 

辻村 「Disney+」はもういいよ(笑)!

 

田邊 僕たちは高校生の頃から曲作りが大好きな4人です。何よりもライブで自分たちの想いを表すのが大好き。今はライブに対していろいろな偏見を持たれてしまっていますが、僕らは負けずに、曲げずに、守っていきますので、皆さんの心が許すタイミングでぜひ僕らの居場所であるライブにも遊びに来てください。

 

ーードラマで聴くのとライブで聴くのとではまた聴こえ方も違うでしょうしね。

 

田邊 絶対に違うと思います。ライブではその瞬間の4人の気持ちが乗っかっているので。ライブで聴くと、またドラマや映画を見返したくなるんじゃないかな。そんなライブをやっているのでぜひ!

<リリースinfo>
「囮囚」
9/8 ON SALE
【初回生産限定盤】(2CD)¥1900(税込)
【通常盤】(CD)¥1320(税込)

 

<プロフィール>
BLUE ENCOUNT ●Vo. Gt. 田邊駿一、Gt. 江口雄也、 Dr. 高村佳秀、Ba. 辻村勇太からなる、熊本発、都内在住4人組。魂を込めたアツいライブパフォーマンスも話題のエモーショナルロックバンド。
2014年9月にEP『TIMELESS ROOKIE』でメジャーデビュー。2015年1月にリリースしたファーストシングル「もっと光を」が話題になり、その後も東京系アニメ『銀魂 (第3期)』のオープニングテーマとなるシングル「DAY×DAY」、ドラマ『THE LAST COP/ラストコップ』の主題歌「LAST HERO」、「ボイス 110緊急指令室」の主題歌「バッドパラドックス」、「僕のヒーローアカデミア」の主題歌となった「ポラリス」など、話題作を続々とリリース。現在は全国ツアーの真っ最中。

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