文字通りご機嫌なニューアルバム「gokigen」を完成させたchelmicoが、約半年ぶりに「キスがピーク」に凱旋です! 近況報告から始まり、アルバムの制作話とそこに込められたメッセージ、そして待望の全国ツアーまで、「いまのchelmico」を語りおろしていただきました!
取材&文/高木”JET”晋一郎 撮影/横山マサト
――約半年ぶりの「キスがピーク」でございます。
Rachel ご無沙汰!
Mamiko みんな元気だった!?
――ということで、まずはchelmicoの近況報告など伺えればと。
Rachel 昨日、Mamikoと一緒に髪を切りに行ったね。これはまだどこにも言ってない、ブロスだけの情報。内緒だよ! あとMamikoはナスが好き。
Mamiko 蕎麦とトンカツも大好き。ヤバい、ブロスだからってちょっとバラしすぎちゃったかも! あと自転車を買った。
Rachel ちょっと! そんなに秘密の話しちゃって大丈夫!?
Mamiko 言い過ぎたかも。みんな! 隠しててごめん!
――……半年ぶりのインタビューだけど 何も変わってなくて安心しました(笑)。
Rachel アハハ。あ、この連載で話してたことで言えば、Mamikoがついに運転免許を取りました。
Mamiko いえい!お父さんの車を借りて運転してます。 逗子に行ったり、都内も走ったり、一通りエンジョイしてる。家族が運転好きだし、私も運転が好きそうな気配があるね。
Rachel 私も免許取りたくなっちゃった。ここで「Rachel免許取ります宣言」しとこう(笑)。
Mamiko 取ったら2人でドライブ行こうよ。あとはフェスやイベントに呼んでもらうことも増えて。
Rachel 「やっぱりライブ楽しい!」って改めて感じてる。個人活動も多かったよね。
Mamiko 私はソロ「ms」の流れでソロライブをやったり、フィッシュマンズの単独公演「HISTORY Of Fishmans」にゲストで呼んでもらったり。
Rachel 私はASIAN KUNG-FU GENERATIONのアルバム『プラネットフォークス』に「星の夜、ひかりの街(feat. Rachel & OMSB)」で参加したり、lyrical schoolのアルバム『L.S』に「バス停で」の歌詞やメロディーも提供して。
――Rachelは以前からアジカンのファンであることを公言してきたから、感慨もひとしおだったのでは?
Rachel ホントにうれしかった! ゴッチさんから「ハキハキしたラップが欲しい」と言ってもらって、「周りから見える私のストロングポイントってそういう部分なんだなって」って気づくことができたり。あとは……アルバム「gokigen」の制作だね。
Mamiko ホントにその記憶ばっかりになってる。マジでず〜っと曲作ってた。 今回はPistachio Studioのryo takahashiが、トラックだけじゃなくて、全体のディレクターとして制作に入ってくれて。
Rachel 方向性をウチらと一緒に考えてくれて。それが大きな違いかも。
Mamiko ryoくんのおかげで、曲に対しての話し合いがすごく密にできたと思う。私たちが宅録で作ったプリプロも、ryoくんがすぐにまとめてくれて「こういう感じになりそうだけど、どう?」みたいにイメージを提示してくれたから、私達も着地点が見えやすくて。
Rachel 翻訳してくれるって感じだよね。ウチらの「速い感じで」「カラフルに」みたいなフワッとした言葉を、「それはこういう感じ?」みたいに具現化してくれて、「そう!そういうこと!」みたいな。
Mamiko ryo takahashiはもっと評価されるべき! これ書いといて(笑)!
――曲ごとのカラーはかなり違うし、ryo takahashi、ESME MORI、Toshiki hayashi(%C)というPistachio Studio以外のトラックメイカーも今回は多いから、バラバラに感じるかなと思ったら、統一感をしっかり感じる作品で驚きました。
Mamiko 全体の流れとしてはすごく綺麗にまとめられたと思う。
Rachel 統一感は土岐彩香さんにほとんどの曲をミックスしてもらったのも大きいかな。
――今回はTSUBAME(TOKYO HEALTH CLUB)、Tomggg、tofubeats、LAのバンド:NVDES、そしてDJ FUMIYA(RIP SLYME)がトラックに参加しています。その意味でも、関係性は深いんだけど、実はあまり制作に関わっていなかったトラックメイカーの参加も印象的で。まずTomgggとの“ISOGA♡PEACH”はすごく可愛らしいトラックで、あまりchelmicoが手掛けてこなかったサウンド感でもあるので、それも意外な感じでした。
Mamiko chelmicoの超初期の頃にリミックスを作ってもらってたんだけど(「Love Is Over Tomggg Remix」)、あのリミックスがすごく好きだったし、今回はかわいい曲で一緒に制作したいなって。
――Tomgggのキュートなメロディセンスは天下一品ですからね。
Rachel でも昔はかわいい曲を作りたくなかったの。
Mamiko デビューしたときは「アイドルでしょ」みたいにナメられてたから。
Rachel ほら、ウチらってかわいいからさ〜(笑)。
Mamiko 笑っとこ〜(笑)。
Rachel アハハ。だからそう思われたくなくて、強い感じとかクールな曲を作ってたけど、もういまは「かわいい曲あったっていいじゃん! かわいいんだし! むしろもっとかわいくなりたい!」みたいな(笑)。それに今のchelmicoにはいろんな曲があるし、キャリアをちゃんと重ねてきたから、変な誤解もされないよなって。だからいまTomgggと一緒に制作できたと思う。
――tofubeatsの参加も含めて、改めてMaltine Recordsの偉大さを感じました。
Rachel でも、tofuさんと一緒に制作するまで時間がかかったのは、やっぱりウチらがやると「かわいすぎちゃう」って思ってたからなの。もちろん尖った音楽をやってるんだけど、当時のウチらからしたら「いま一緒にやったら『めっちゃポップだな』って思われちゃうかな」って。
――Rachelはtofubeats「Her Favorite feat.okadada」と「衣替え」のMVにも参加してるから、関係性は薄くないはずなのに、今まで一緒に作らなかったのはそういう理由だったんですね。
Mamiko だから「今だから一緒にできた人」ばっかりな気がする。TSUBAMEさんもガラッと音楽性が変わってるし。
――表現は難しいけど、5〜6年前にこのメンツでアルバムを作ったら「そういう界隈の作品」というパッケージがされてたと思う。
Mamiko そう! 絶対そう言われてた。
Rachel それが嫌だったんだよね。ウチらオンリーワンでいたかったから(笑)。
――chelmicoも含めたそれぞれのアーティストがオンリーワンになっていったから、そういうカテゴライズがされなくなったという部分もありますね。
Mamiko そうなのよ。ホントいいよね。
Rachel 当時はみんなまだキャリアも浅かったから、そこで皆で盛り上がってこうっていう力も大事だったと思うけどね。
――一方、DJ FUMIYAに「O・La」にトラックを提供してもらいましたね。
Mamiko 最高!念願!
Rachel やっとだよ〜。ずっと願い続けてきたから。
――chelmicoの結成経緯として、2人ともRIPSLYMEの大ファンだったという事実がありますからね。
Mamiko だから遂に一緒にできる!って感激した。FUMIYAさんからはリップっぽい明るいトラック、ヒップホップらしいブーンバップなトラック、そして「これをchelmicoにやらせてみたい」ってイメージで「O・La」のトラックをいただいて。どれも最高だったんだけど、“O・La”はとにかくイントロが最高すぎたんで「これでお願いします!」って。でもレコーディングしてからも、どんどんアレンジも変わっていったんだよね。
Rachel FUMIYAさんは足し算とリアレンジで格好良く持っていく人で、自分たちが予測した方向とは違う方向に裏切って、更に格好良く着地していくから、その過程を聴くことができて本当に感動した。あと、最初にリモートでミーティングしたんだけど、顔出しにしたのね。それにFUMIYAさんが「恥ずかしい……」って言ってたのがかわいらしすぎた(笑)。
Mamiko FUMIYAさんが「表情が見えたほうが話しやすい」って言うから顔出しにしたのに、FUMIYAさんが「なんか恥ずかしいな〜」って言い出して(笑)。
Rachel そこで「やっぱりウチらの知ってるFUMIYAさんだ! 最高にかわいい!」って(笑)。本当に特別な曲になったよね。
――スクラッチが入る曲もchelmicoではかなりめずらしいですよね。
Mamiko RYO-ZさんとCBSの声が擦られてて。あれも格好良かった〜。しみじみ噛み締めてうれしくなっちゃった。
――ちょっと前に「今の若者はギターソロをスキップする」という話題があったけど、スクラッチってどうなのかな?
Rachel ギターソロもイントロもアウトロも飛ばすってやつでしょ。
Mamiko 私は全部聴くけどなぁ。
Rachel 「Touhikou」もギターソロ入ってるし。イントロもアウトロもスクラッチも全然入れるよね。
――chelmicoのアルバムは全然そういう「時勢」を意識してないですね。
Mamiko シカトだね。
Rachel フルシカ(笑)。
――そして、とにかくラップの密度自体も高いですね。
Mamiko よく書いたよ、ホント(笑)。ビートは強くても、「激しいラップ」ではないし、色んなフロウに挑戦もしていて。きっちりヴァースとフックに分かれてなかったり、オートチューンを掛けたり、今までとラップの感触は違うと思う。
――今回は「ラップとしてメッセージする」「ラップだから表現できる」という部分に対して、すごく意識的に向かってると思いました。
Mamiko そう思ってくれたらうれしいな。
Rachel 2人のラップのバランスもよく取れたと思うし、「こういうアルバムがヒットしたら、シーン的にも良い影響があるんじゃないかな」って思えるような手応えのあるアルバムができたよね。
――バンドサイドからはNVDESが「Roller Coaster」を提供しました。NVDESはLAのバンドですがその繋がりは?
Mamiko 単純に2人ともファンで、いつか一緒に作りたいねって話してて。それで今回の制作でトラックをお願いしようと思ってメールしたら、その時は全然返事がなくて。それでRachelがシビレを切らして……。
Rachel 「こうなったらDM送ったる!」って(笑)。
Mamiko そしたら速攻返事がきて、「やっぱり今の時代DMだね」って(笑)。デモもすぐ送ってくれたんだけど、そのトラックが完成しすぎてて「これはどうラップを乗せるのが正解なんだ……?」ってけっこう悩んだね。それでもなんとかラップを乗っけてNVDESに送ったら、ラップのパートの順番や構成が入れ替わってて、ヴァースのつもりだったパートがフックみたいになってたり、フェイクの部分を切り出してサウンドステッカーみたいに使ってたりして、ビックリしたし「超格好いいじゃん!」って。
Rachel やっぱり言葉が分からないから、「音」としてラップを捉えて、それを曲の要素として組み替えて再構築するっていう感じで。海外の人じゃないとそういう発想は難しいと思うし、すごく新鮮だった。
――「Roller Coaster」や「COZY」、「bff」はニューウェーブリバイバル、オルタナロックのような感触がありますね。そして「bff」はchelmicoらしいフレンドシップに溢れるメッセージで感動しました。同時にその打ち出しは今までよりもシンプルになっていますね。
Rachel ちょっと気恥ずかしくなるようなメッセージも、ちゃんとストレートに歌った方が、今はハマるんじゃないかなって。確かに前はもう少し回りくどい表現だったと思うけど、もう今はストレートにいっちゃえ!って。
Mamiko 変に回り道はしないで、近道で行くっていう感じはあったかも知れないね。
――今回は「COZY」、「3億円」、「Meidaimae」、そして「O・LA」のMVが制作されています。特に「Meidaimae」は衝撃のMVで。
Mamiko ヤバいよね。ファンが混乱してた(笑)。
Rachel あんな好き放題やってるMVって無いよね(笑)。
Mamiko ふざけてるよね〜。
Rachel ああいうジョークのセンスがあるのも、田向の兄貴の信用できるとこだよね。どうだった?
――最初は「このままホラーで行くのかな?」と思ったんだけど、1番と2番でRachelとマミちゃんの立場が対称になっている構造だったり、種明かしまでそれが一曲の中に全部収まってるのは、映像作品として見応えがあったし、そして楽曲の内容と全く関係ない映像という「飛距離の遠さ」も最高でした。
Rachel 飽きずに見られるよね。もっともっと見られてもいい作品だと思うし、賞とか取って欲しい。
Mamiko 「O・La」はとにかく光がすごいから期待しといて。
Rachel 田向の兄貴曰く「エレクトリック王将」がテーマらしい(笑)。
Mamiko 中華とライトがメインのMVだね。
――曲は中華というよりラテンなのに(笑)。
Mamiko 意外な取り合わせ(笑)。
――そして6月からは全国ツアー「chelmico gokigen TOUR」がスタートします。
Rachel 始まるね〜。
Mamiko 3年ぶり? あらま〜、そんなに経つ!? でもライブが戻ってくると同時に、ライブの感覚も戻ってきたよね。ライブ好きだったな、ツアー好きだったなって思い出してきたから、ツアーがホントに楽しみ。
Rachel まだアルバムの曲ってライブでは全然披露してないから、今はその作り込みの真っ最中って感じ。
Mamiko しかも今までのchelmicoとはちょっとテイストの違う曲が多いから、それをどうセットリストを組もうか、悩むのも楽しいね。昔の曲もやるかもね。
Rachel 随分やってなかった曲もやるかも!?な〜んて。
――謎の匂わせが(笑)。
Mamiko 初めましての人も多いのかな?
Rachel お久しぶりの人も多いかも。いつも来てくれる人はもちろん、みんなが楽しめるライブにしたいよね。曲数が増えたから、パートごとに「テイストが近い曲」で構成できるようになったり。ライブとしての見せ方が広がってるし。
Mamiko 「chelmicoの大きい音ライブ」でもパートごとに分けたりしたけど、それがもっと膨らんでいくのかな。
Rachel 今まではバラバラすぎたから「じゃあ、ここからゆっくりしま〜す」とか言わなきゃいけなかったけど(笑)。
Mamiko 言わないとビックリしちゃってたから、みんな(笑)。
Rachel 今はサウンド的にまとめることができるようになったから、ライブとしてもスムーズになったよね。
Mamiko だから私達としてもライブがやりやすくなってきてるし、初見の人も楽しめる……と思う(笑)。
Rachel 大丈夫だよ! Rは楽しませます!
Mamiko Mは楽しみます。
――なぜ最後になって一人称頭文字で名乗り出したのか分かりませんが(笑)、ツアー楽しみにしてます!
Rachel chelmico史上、 今回のツアーが一番楽しめると思う!
――かなりの自信が!
Rachel 「chelmicoすごい!」って普通に尊敬しちゃうと思う(笑)。でもそれぐらい「カッケーな!」って思わせるために頑張ってるし、絶対思わせるライブにするよ!
chelmico gokigen TOUR
<イープラス>
https://eplus.jp/chelmico/
<チケットぴあ>
https://t.pia.jp/pia/search_all.do?kw=chelmico
<ローチケ>
https://l-tike.com/search/?keyword=chelmico
6/12(日) 札幌 PENNY LANE 24
開場16:15 / 開演17:00
WESS info@wess.co.jp
6/19(日) 大阪 BIGCAT
開場16:45 / 開演17:30
GREENS CORPORATION 06-6882-1224
6/25(土) 仙台 Rensa
開場16:15 / 開演17:00
GIP https://www.gip-web.co.jp/t/info
7/2(土) 福岡 DRUM LOGOS
開場17:15 / 開演18:00
キョードー西日本 0570-09-2424
7/3(日) 福岡 DRUM LOGOS
開場16:45 / 開演17:30
キョードー西日本 0570-09-2424
7/8(金) 岡山 YEBISU YA PRO
開場17:45 / 開演18:30
YEBISU YA PRO 086-222-1015
<追加公演>
豊洲PIT
2022年7月22日(金)
Open 18:00 / Start 19:00
前売:全席指定 ¥4,500 (税込)
ドリンク代別、未就学児童入場不可
一般発売:7月2日(土)10:00
ホットスタッフ・プロモーション
03-5720-9999
https://www.red-hot.ne.jp
これまでの「キスがピーク」はこちらから
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