ニューミニアルバム『COZY』のリリースを控えるchelmico。そしてRachelは結婚&妊娠と、おめでたいニュースが続く2人による、アルバム解説と連載のこれから a.k.a 雑談をお送りします。
取材&文/高木”JET”晋一郎 撮影/横山マサト
Mamiko:(大声で)今日もよろしくお願いします!
Rachel:アハハ! なんで声デカいの?
M:最近ずっと外ロケだったから大きい声出せなかったじゃない? だから出してみた。
R:たしかに。今日はワーナーの会議室だから平気だね。(大声で)お願いします!
https://tvbros.jp/【連載キスがピーク】/
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――このご時世、元気なことは大事ですね(笑)。今日は4月2日リリースの新曲「COZY」と、4月16日リリースの同名のデジタルミニアルバム『COZY』について、まずはお話しいただければと。まずシングル楽曲「COZY」は「JUNK おぎやはぎのメガネびいき」でも流れましたね。
M:聴いた? どうだった?
――ビート的にはトーキング・ヘッズとかジョイ・ディビジョンみたいなニューウェーブ/ポスト・パンクのリバイバル・ムーブメントだったり、現行のインディ・ロックとの関連性も感じる部分もあって、これまでのchelmicoとは違う感触が新鮮でした。一方で、すごく牧歌的で日常的なイメージもあって。
R:意外?
――うん。ちょっと意外だった。
M:今回はまず「COZY」っていうタイトルを決めたんだよね。
――「居心地のよい」「親しみやすい」みたいな意味ですね。
M:そうそう。そういうイメージと、インディ・ロックを併せた感じが欲しいっていうアイディアをトラックメイクのryoくん(ryo takahashi)に投げて、それでryoくんから上がってきたのがこのビートで。
R:最初からこのビート感だったよね。
M:ryoくんは雛形から完成形になるまで、かなりビートが変化することが多いんだけど、この曲はデモからほぼ変化無しで。
R:音が良くなったぐらい(笑)。
――では「COZY」というテーマを立てたのは?
R:マジで結構疲れちゃったからさ~。
M:その言い方、超語弊あるよ(笑)。肩の力を抜いて、近況報告ぐらいのテンションで作ろうよっていうイメージからかな。
R:気張るよりも、もっと生活の一部みたいな形でラップ出来たら格好いいよね、っていう感じかな。
M:でもまあ、疲れちゃってたよね(笑)。
――前回のアルバム『maze』は、「Easy Breezy」や「Limit」のようなMVが制作された楽曲はハイパーな感じがあったし、全体的に情報量が多い作品だったと思う。だから今回はそのカウンター的に情報量を落としたのかなって。
R:たしかに、はっちゃけたり「やるぞ!」っていうよりは……。
M:「もっとシンプルに出来ることは何だろうね」って。曲を作り続けることは当たり前のことなんだけど、世界がこんな状況になったときにも、私達が作れる曲ってなんだろうね、っていうところから始まった部分があると思う。だから、原点に戻るっていうか、インディーズでやってたときの気持ちにちょっと戻ってみようか、みたいな。ジャケ写もちょっと懐かしい感じ感じだったりするのも、その流れにあるかな。
R:この1年、それまでの生活とは全く違う状況になっちゃってるから、逆にその中でもいつもどおりでいたいみたいな感覚もあったと思う。普通でいいじゃん、みたいな。
――だから「chelmicoの足元」みたいな曲なんだろうな、って。
R:たしかに、そういう部分をまた改めて確認したかったのもあるのかも。でも、インディーズのときよりも全然レベルは上がってるし、アプローチも今の方が上手になってるから。
M:ラップ上手くなったよね、うちら(笑)。
――音がシンプルな分ラップが際立つけど、やっぱりchelmicoはラップ上手い。しかも難しいフロウが出来るから上手いとかじゃなくて、ビートに対して的確なアプローチっていう根本的かつ一番難しい部分で上手いなって。
M:うれしい!
R:気づいちゃった?
M:chelmicoのラップの上手さに世の中が気づいちゃうね(笑)。
――Mamikoさんの「ただ息吸って生きてマジ偉い」っていうリリックはパンチラインですね。
M:周りでも、ちょっと疲れちゃった人も多かったから。
R:どうしても考え込んじゃうもんね。
M:だから息吸ってるだけでも十分だからって言いたかったのかな。
――Rachelの「そろそろ掴む 君の切れ端を/笑ってる 気まぐれなしっぽ」っていうリリックもポエジーで。
R:今回のリリックは全体的にポエジーだよね。最近、日本語ラップをしっかり聴く機会が多くて、改めて日本語ラップってかっこいいなって思ったの。だからそういうラップ的な詩表現がもっと出来たら、ラッパーとしてもっとかっこよくなれるかなと思って。
――4月16日にリリースされるシングルと同名のデジタルミニアルバム『COZY』は6曲入りですね。
R:制作陣もピスタチオスタジオのメンバーだけで。
M:1曲目の「To Be continued」はトラックはryoくん。比較的ryoくんサウンドって感じで「Easy Breezy」の流れにあるかも。
R:派手な曲なのに今のとこタイアップ無しなので、タイアップお待ちしてます(笑)!
M:2曲目が「COZY」でこれもryoくん。3曲目の「mustard」はピスタチオスタジオのメンバー総動員で作った曲。
R:総動員し過ぎて、私たちもトラックのどの部分を誰が手掛けたか分かってない(笑)。
M:ドラムは%C(TOSHIKI HAYASHI)みたい。
R:ラップはお互い1ヴァースにフックだけっていう、すごく短い曲なんだけど良い曲だよね。曲自体は結構前に作って、2年ぐらいは寝かしてるかも。
M:温めてた感じよね。アルバムに入れたかったんだけど、ハマりどころが見つけにくくて。
R:すごく良い子なんだけど、控えめだから埋もれちゃいそうで。だからミニアルバムみたいな少人数グループだったら目立てるかなって(笑)。
M:4曲目の「飽きた」も%Cビート。
――「モマエ(藻前)=お前」と「モレ(漏れ)=俺」という微妙に古いネット・スラングをRachelは使ってて。
R:最近ハマってTwitterでも使ってるやつ(笑)。女性の一人称ってしっくりくるのが少なくて、「私でもないし、俺でもないし……」の結果が「モレ」(笑)。
M:しっくりきた(笑)?
R:いまのとこ。この曲はchelmicoの中でも一番長い曲じゃない?
M:良い意味で適当に気持ちよく書けるビートだよね。
R:だからいくらでも書けちゃう。
――後半で同じリリックを2人で交互にラップしてるけど、これは初めての試みですね。
M:たしかにいままでになかったかも。
R:同じリリックはユニゾンで歌ってたよね。でも今回はそれぞれで歌ってみてる。
M:だから新鮮かも。
――「N.E.S.」は夏曲ですね。
R:毎回、chelmicoはリリースが夏前なんだよね。だから夏曲作りがち。
M:夏曲入れがち。
R:でも今回はゆったりした夏ソングっていう感じだね。
M:冬曲もあるのよ、じつは。でも入れるタイミングがなくてストックのままになっていて。
R:外国のリスナーの方からも指摘されたもんね。「なんでchelmicoは毎回夏の曲を入れるんだい? WHY SUMMER SONG?」みたいな(笑)。
M:不思議がられた(笑)。
R:ラストの「cupcake ATM」っていうタイトルは、私達がインディーだったときのレーベル名からの引用。
M:かわいい曲になったよね。おもちゃ屋さんで流れたりして、子供に盛り上がって欲しい。
R: Eテレで使って欲しい曲だね。
M:この曲はESME MORIと一緒にトラックを作って。でも私たちはDTMが出来ないから実際に音を鳴らしたりは出来ないし、「こういう感じにしたい」っていうのは頭の中にはあってもそれを言葉にするもの難しくて。だから一緒にスタジオへ入って、「このタブラの音とこのドラムをここに貼り付けて!」ってモニター指差しながら作ったよね(笑)。
――デジタル・デコーディングなのに超アナログな方法で(笑)。
M:でもめっちゃ楽しかったよね。本当にゼロから一緒に作った曲だし。
R:DTMソフト使えたら2人でトラックも作れるんだよな~。完璧じゃない?
M:とか言ってるよ(笑)。
R:などと供述しており(笑)。
――でも(BUDDHA BRAND の)D.LさんもDTMソフト使えなかったしね。
R:そうなんだ! じゃあウチラも目指せBUDDHA BRANDだね(笑)。
――はからずも『COZY』はRachelのお腹に赤ちゃんがいる期間にできた作品ということになりますね。
R:うふふ。そうかも。(お腹を指差して)このミニアルバムを一番最初に聴いた人・通称バナナ(笑)。でもその部分は今回の作品にはそんなに関係ないかな。今はやっぱり「RachelとMamikoの2人のchelmico」っていうところを大事にしてるから。「COZY」のMVも普段の私達のカジュアルな感じにしようと思ってるんだけど。
M:日常の思い出ビデオみたいな感じで。
R:まったく意図してないけど、めっちゃ思い出ビデオになっちゃいそう。タイミング的に意味出てきちゃったなって(笑)。
――そして改めてご結婚とご懐妊おめでとうございます。
R:ありがとうございます!
M:めでたい。