仲野太賀インタビュー ドラマ主演が続いた今年を振り返って「インディペンデントなものに還元したい」

10月22日(土)から放送の土曜ナイトドラマ『ジャパニーズスタイル』(テレビ朝日系)は、『俺の話は長い』(日本テレビ系)で向田邦子賞を受賞した脚本家・金子茂樹が手がける本格シットコム作品。旅館を経営する実家へ久々に帰ってきた青年と、その旅館に居座る変人従業員たちとの騒動を描いたコメディドラマだ。

 

10年ぶりに実家に戻ってきた訳ありの主人公・柿丘哲郎を演じるのは、『拾われた男 LOST MAN FOUND』(NHK BSプレミアム・ディズニープラス)、『初恋の悪魔』(日本テレビ系)に続き、今作で今年放送される主演ドラマが3作目となる仲野太賀。今作に懸ける想いと主演ドラマが続いている現在の心境について語ってくれた。

撮影/玉井美世子
取材・文/編集部
スタイリスト/石井大
ヘアメイク/高橋将氣

【番組情報】
『ジャパニーズスタイル』
テレビ朝日系
2022年10月22日初回放送スタート
毎週土曜 よる11時30分~深夜0時00分

         

これまで自分が培ってきたものを総動員して
本番30分にぶつけていくようなお芝居


━━今作は観客を前にした舞台上で、ほぼ一発本番30分でお芝居をする「シットコム」。オファーを受けたときの印象はいかがでしたか?

シットコム自体、海外ではよくあるスタイルですが、日本ではなかなか馴染みがないものなので、今作で挑戦できるのは凄く素敵なお話だと思いました。

━━ご自身はシットコムというジャンルに馴染みはありましたか?

たくさん見ていたというわけではないのですが、やっぱり『フレンズ』シリーズ(米・NBC)は英語の勉強も兼ねて、見ていました。

━━膨大な量のセリフを、ほぼ一発本番で、観客を前にしてお芝居をするというのはなかなか過酷だと思うのですが…。撮影されてみていかがでしたか?

楽しいですね。普段のドラマの撮影では、1日で1話を撮り終わるということもまずないですし、倉庫に舞台のセットを組んで、お客さんの前でお芝居をすることもなくて。演劇とも違うし、映画やドラマ、どれにも似ている感じがなくて、貴重な経験をしている気がします。

例えば舞台の場合は1ヶ月稽古して1ヶ月本番というリズムが多いと思いますが、今作は1日稽古して翌日に本番。しかもその本番も一度やったら終わりなので、他にはないリズムで撮影しているのも新鮮ですね。

━━稽古は1日なんですね。

はい。大体朝の9時から夜の7時まで、1日稽古して、次の日に本番ですね。本番ギリギリに芝居が立ち上がるほど、時間がない中でやっています。すごく瞬発力が鍛えられる現場で、紡いで編んでいく作業というより、これまで自分が培ってきたものを総動員して、本番30分にぶつけていくようなお芝居なので、とにかく力が入っています。

━━コメディなので、やはりアドリブも多いですか?

セリフがぎっしりあるので、そのリズムを崩さない範疇で入れるときもあります。監督からの演出もそこまで細かくないので、その分、役者全員の自由度が高くて。やはりシチュエーションコメディなので、作品の世界観においても、大きな芝居をしても違和感がない。だからこそ何が良い形なのか、キャスト全員が探りながらやっています。本番になると皆さんの芝居が稽古からまた変わるので、それも楽しいです。スタッフ、キャスト全員が初めての挑戦をしているので普段の現場の空気とはまた違っていて、高揚感があって──緊張感とも言えますが、特別なことをやっている感覚があります。

━━充実感を感じているというか。

そうですね。1〜2話を見てもらうとわかると思うのですが、皆さん汗だくです(笑)。単に撮影が夏で暑いからということもありますが、めちゃくちゃ疲れます。稽古の時点で既にヘロヘロなので、本番は満身創痍で「やるしかない!」という感じ。終わった後はどこか抜けていくような開放感があります。

━━現場の雰囲気はいかがですか?

やはり皆さん大変なので、その大変さから逃れるように、差し入れの話とか、全く関係ないことを話しています(笑)。KAƵMAさんがムードメーカーで、場の空気を朗らかにしてくれて。本当に居てくれてよかったと思います。

━━共演者の中で「本番に強い」と感じる方はいますか?

今作は俳優でも大変な現場だと思うのですが、普段はミュージシャンとして活動している石崎ひゅーいくんが、堂々と、そして魅力的に役を演じられています。普通に一人の役者として接している感覚があるんですけど、冷静に考えると(ミュージシャンなので)本当にすごいなと思います。KAƵMAさんもミスがなくて、役者が本業でない方たちの地肩の強さを感じています。

 


ドラマ主演作が続いた今年を振り返って


━━今作で、今年放送される3本目の主演ドラマです。立て続けに主演ドラマが放送されることについて、ご自身でどのように感じていますか?

すごくたくさんの方に観ていただけるということは、やはり大きいですね。僕は舞台や映画、ドラマといったジャンルの垣根にとらわれずに自分が「素敵だな」と思う人たちと仕事をしたい、ということは常々思っていて。今年はドラマの放送タイミングがたまたま重なったんだと思います。オファーをいただいてから始まる仕事ですから、それほどチャンスをもらえているということは、本当にありがたいことですね。今年は20代最後の年でもあったので、とにかくたくさんお芝居をした年になってよかったなと思っています。

━━特にドラマにおいては宮藤官九郎さん、坂元裕二さん、そして今作を手がける金子茂樹さんのように、会話劇が評価される脚本家が手がける作品に強く求められている印象があります。

確かに言われてみれば、魅力的な会話劇が特徴的な作家さんとご一緒することが多いのかもしれないですね。僕自身も、そういった会話劇を演じることが好きなんだと思います。

それに金子さんも坂元さんも宮藤さんも、まず僕が視聴者として皆さんの作品が好きだということがあって。だからこそオファーをいただけて、とても嬉しいです。

━━金子茂樹さんとは『コントが始まる』(日本テレビ系)以来のタッグとなりますが、金子さんの脚本の魅力はなんでしょうか?

やはり会話ですね。セリフのひとつひとつがキャラクターの個性となっていて、会話で物語が膨らんでいく。キャラクターに厚みがあるような気がします。今作の主人公・哲郎は公式ホームページに「偏差値51」と書いてあるように、設定も細かくて、セリフを発していても凄く楽しい。ここまでのクズ役を演じることもあまりないので、とても楽しく演じさせてもらっています。

━━テレビドラマの出演が続くことで考え方に変化はありましたか?

僕自身、インディペンデントな作品が好きで、そういった作品を観て育った自負があります。特に俳優って監督やスタッフの方々よりも、テレビや映画といった色んなジャンルの作品に携わるチャンスがあると思っていて。だから自分自身がしっかり有名になって「この人の芝居を見たい」と思ってくれる方を少しでも多く増やすことで、インディペンデントなものに還元したい、という気持ちがあります。

【Profile】
仲野 太賀(なかの・たいが)
●1993年2月7日生まれ。東京都出身。2006年に俳優デビュー。『今日から俺は!! 劇場版』『生きちゃった』『泣く子はいねぇが』(すべて’20)、『あの頃』(’21)など。映画『すばらしき世界』(’21)では、第45回日本アカデミー賞優秀助演男優賞、第64回ブルーリボン賞助演男優賞などを授賞。公開待機作に『ある男』(2022年11月18日公開)がある。

 


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