<新連載>裏切られた映画たち(仮)【2023年7月号 押井守連載 introduction】

祝! 新連載!! ということで押井守監督にお願いした連載コラムは『裏切られた映画たち(仮)』。「アンな映画だと思っていたらびっくり! コンな映画だった」のような作品について語って頂きます。もちろん、その裏切りに気づくのはすべてが明らかになるラストまで観てのこと。つまり、今回の連載はすべてネタバレありで進みます。果たしてどんな映画が出てくるのか!? 押井さん、よろしくお願いします!

なお、この記事は『TV Bros.』本誌8月号(発売中)でも読むことができます。

取材・文/渡辺麻紀

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「友人のマウンティングがウザい」、「パワハラ、セクハラの線引きは?」、「成果を横取りする上司が許せない」など、寄せられたお悩みに答え、そのロジカルで実践的な回答が読者の間で話題を呼んだ『押井守の人生のツボ』が、増補版となって待望の再登場!

「結婚や出世に興味をもたず、マイペースに生きる息子や若者の姿を見ていると、日本がどんどん落ちぶれそうで不安になる」、「韓国ドラマ沼から抜け出せない」、「環境破壊をする人間に、その愚かしさを気づかせたい」など新たな悩みを加え、それぞれの“お悩みに効く映画”についても、たっぷり語っていただきました。

押井監督自身の体験と思索の日々に裏付けされた、刺激的でユーモラスなアドバイスに価値観を揺さぶられること間違いなし。

早くも人生に悩んでいるような押井少年のお写真が目印です!

『押井守の人生のツボ 2.0』
著者 押井守
構成・文 渡辺麻紀
発行:東京ニュース通信社 発売:講談社
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まれに予期せぬかたちで、自分の価値観を崩壊させる映画に出会うことがある。それを「裏切られた映画」と呼ぶんです。

――押井さん、TV Bros.WEBでの長年に亘った連載『押井守のサブぃカルチャー70年』の「YouTubeの巻」が終わり、これからは新しい連載、『裏切られた映画たち(仮)』をお願いします!
これって、(M・ナイト・)シャマランの『シックス・センス』(99)のようなどんでんがえし系ではないんですよね?

違います。“どんでん返し”というのは、こうなるだろうと予測するからであって、その予測がなければ“どんでん返し”にはならない。とはいえ、今どきの若い人は、そういうどんでん返しさえ「裏切られた」と思うのかもしれないけど。

連載を始めるにあたり、イントロとしてはまず、私がなぜそういう映画に興味をもったのか? その理由から話そうかな。

――お願いします!

映画を観に行って、ときどき「思っていた映画じゃなかった」という作品に出会うこと、あるじゃないですか? それで結構、ショックを受けてしまったりするわけだけど、問題なのはそのショックの意味。トラウマになるようなショック、だよね。この連載で取り上げるのは、簡単に言ってしまえばそういう映画です。

――トラウマになるほどのショックというのはあまりないかも……。

私はあったんです。それも子どもの頃。だから大きなショックとして記憶に残っている。もちろん、それは子どもだったからというのも大きい。こうなるだろうと思っていたら、そうはならなかった。裏切られた、悔しいと言ってぎゃあぎゃあ泣きわめいたりね。大人の場合はそこで能書きを垂れたり、理屈をひねり出したりするけれど、子どもはどうしてくれるんだ! と思うだけ。たとえていうなら、誕生日の夕飯のときにケーキじゃなくおでんが並んでいる感じ。まあ、私の体験ですが(笑)。

ここでいう「裏切られた」というのは、その誕生日のケーキに近いニュアンスかな。

――でも押井さん、それだとネガティブな感情ですよね?

基本的にはネガティブなんだけど、裏切られたからこそ忘れられないという意味合いのほうが強い。最近はそういう映画やドラマのことを胸糞映画とか胸糞最終回とか呼んでいる。

――先日観た、韓国ドラマの最終回はそれに近かった‥‥。

だいたい、そういうことは最終回に起きるもんです。だから、最後の最後まで観ないとその作品の正体は判らない。途中まで期待通りだとしても、最後の最後に自分の予測とは違うことが起こりうる。そういう映画やドラマはそれなりにあるとは思うけど、そのなかにどうしても忘れられない作品があったりする。そこには絶対、何かがあるはずなんだよ。

それが何かといえば“発見”なんですよ、私に言わせれば。そういう体験は大変貴重。映画を観るという体験の意味さえ変わってくる。だから、いつか話したいと思っていたんだよね。

――最近の若い人たちは前情報を入手して、絶対にはずさないように心掛けていると聞いたことがあります。なので裏切られることは少ないのかもしれない。

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