「子どもの書いたモノガタリを大人がなんとか作品にする」企画として誕生し、その後NHK Eテレにてシリーズ放送していた、岩井、森山未來、前野健太の3人がメインメンバーとなっている「なむはむだはむLIVE!」が無事に終了した。しかも場所は渋谷WWW。ちゃんとしてるぅ!
元は、昨年後半くらいに凍結状態になっていたこの企画メンバーでZOOM打ち合わせをした際、僕が「バンドやりた~い」と言ったことがスタートになっている気がする。でも、あまりにも大掛かりなことになってしまったので、元々のことをしっかり思い出すのが恐ろしい。
「バンドやりたい」と言ったときの僕のイメージとしては、50人キャパくらいのところで、5曲くらい頑張って演奏して(歌うのは森山と前野に任せるつもり)、あとは帰る……みたいなものだったが、フタを開けてみれば、日本映画専門チャンネルが完全にバックアップし、さらにはLINE LIVEで世界同時配信され、そこからさらにAmazon Primeからも見られるシロモノになり、ダメ押しでその「なむはむだはむ」の創作の景色を追ったドキュメンタリーが2作品オリジナルで作られ、ライブ舞台上には馬鹿みたいにでかいLEDパネルが吊られた。
そういうイメージでYouTube見ながらギターを練習してきたつもりはなかった。本番前のサウンドチェックとか、緊張で死にそうだった。音楽面を取り仕切る種石seedstone幸也なんか、水を得た魚のごとく、サウンドチェックでふざけて見せたりしてたけど、ギターのチェックの岩井は、何のリズムもない中でカッティングとかされるだけで拷問だった。
でも始まってしまえば、そういった「ビビろうと思えば一生ビビっていられるハードル」を気にする暇もなく、特に何も起こっていなくてもギャーギャーし出す子どもたちの賑わいによって、「ステージも客席も好きにやっている」雰囲気が立ち上がり、「とにかく楽しもう」と切り替えられた。そして改めて、この企画の潜在的なキャッチーさに感じ入った。元々の発案者、野田秀樹大先生にお礼を言いたい。絶対TV Bros.読んでないけど。ありがとうございます!
それぞれの楽曲といえばいいのか、作品といえばいいのか分からないが、そう言った一品一品の中には、そもそも僕たち3人でさえ、「この場面、どうしてこんなことしてるんだっけ?」と思いながらパフォーマンスしている瞬間が多々ある。子どもの原作を読み、3人でギャーギャー盛り上がって、何かしらの案からさらに飛躍して、パフォーマンスが決まっていることが多いのだが、当の本人たちが根っこを失っていることがあるのだ。
そういう場合でも企画のシステム上、舞台上のLEDパネルには子ども文字の混じった原作字幕が流れてくれているから、「そもそも無茶なモノガタリ」の上で、我々大人たちが必死こいてパフォーマンスしているのだということを、ずっとお客さんに訴え続けてくれる。常に最前面に「そもそも子どもが書いたんだよ!」という、人質のようなものをぶら下げているのだ。お気楽である。
それにしても、楽しかった。やはり音楽というものは、観客の姿勢も違う。僕がホームとしている演劇の「ステージと観客」の関係は、何かこう「ちゃんとやれよ?」とか「次は何を見せてくれるんだ?」といった、「試す」側と「試される」側のような緊張感が常に漂っている。が、音楽、特に今回の企画のようなものになると、まずは「どれくらいめちゃくちゃなことになるんだろうか!?」とか「どうなったとしてもおもしろい」という空気が漂っている。諦めムードというか、そう、まさに「良い意味での諦めムード」だったと思う。
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