おとどちゃん連載・18「三日月と観覧車」

創業92周年! 高知県桂浜にある小さな水族館から大きな声で、いきものたちの毎日を発信中!

広報担当・マスコットキャラクターのおとどちゃんが綴る好評連載第18回は、新年早々のてんやわんやと、2年前に旅立ったあの子の思い出。今年もハマスイから目が離せない!

以前のお話はこちらから。

高速道路沿いのサービスエリア内にある大きな観覧車が好きだ。高知へと急ぐ銀色の車体が夜を切り裂き、真横を通り抜ける。車窓に映るその姿に、何度となく永遠の刹那を覚えた。淡路サービスエリアの大観覧車は、夜になると、投光器の電飾で緑一色にライトアップされる。以前、立ち寄った時に、一度だけ下から見上げてみたことがある。ゆっくりと回転し、微かに揺れるゴンドラに、揺るがない幸せを思い描いた。遊園地で見る観覧車には特別な思いを抱くことはないのに、高速道路沿いにあるということが、どうしようもなく儚く、この胸を搔き立てるのだ。

そして私たちは、夜の闇を振り払うように生きる街へと滑る。車内で流れる流行りの曲が、運転席と助手席という絶妙な距離感で交わす他愛もない話を、どこかエモーショナルに彩る。いくつかのトンネルを抜けて、頼りない信号機に従い、水族館へと走る。澄んだ冬の夜に、歪な金色の月が浮かんでいた。それがどうも割り損ねた卵みたいで、「美味しそうね」と溢した私に、「ほんとやね」と笑った彼の横顔を、どうしてだろう。ちゃんと見ることができなかったのを、少しだけ悔いている。

令和五年一月八日の早朝、館長と私は、主に淡水魚の世話を担当している飼育員が運転するハイエースに乗り、神戸へと向かった。二泊三日の出張は、桂浜水族館の飼育顧問が校長を務める「さかなの学校」でのイベントのためだった。神戸出張の一日目は、施設の前に設置されている掘っ立て小屋で揚げ物を販売したり、写真撮影会を開催した。二日目は、施設内でみちのくプロレスの大会が予定されていて、十五時の開場後、前説を任されていた飼育顧問といっしょに、私も少しだけリングに上がらせてもらった。

試合は六十一分三本勝負で、師弟での戦いだった。結果は、二対一で弟子の「のはしたろう」が勝利した。満身創痍でリングに横たわる師匠を抱きしめて涙を流す姿に、喉の奥がじんわりと痛み、観客の誰もが目頭を熱くした。

年明け一発目の出張は無事に終わったが、妙に慌ただしいものとなった。桂浜水族館のツイートがまたネット上で話題となり、館外イベント中にも関わらず、メディアからの取材依頼が舞い込んで、その対応に追われたのだ。今回も今回とて、水族館の公式アカウントとしての発言内容に賛否両論があった。昔の方が尖ってはいたが、我ながら、よくもまあこれほどにもエッジの効いたツイートができるものだと感心する。

今年は、一月二日に人気お笑い芸人がプライベートで水族館に遊びに来たり、撮影のためではあったが、日本一の整形男子として活躍しているタレントが来館したり、バラエティ企画で特集が組まれ、桂浜水族館が丸々一時間番組を独占したりと、正月早々からハマスイ節を炸裂させている。

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