さて! 作中のちょっとした方言のニュアンスで「こんなもん俺やんけ」と妙にテンションが上がってしまうことが地方出身者の皆様にはよくあると思いますが、対話力特化で立身出世と復讐を目指す、「今、ゼロから楽しんで読み始められる三国志」こと『日本三國』2巻の第5話で、重度の軍規違反を犯して主人公に死刑を宣告される町山主簿補佐の言い訳の初っ端に出てくる「ちゃうちゃう!! ちゃうねんて!! いや、ちゃうことはないけど!!」が、本当に「自己弁解にセルフツッコミ入れてしまうスーパー関西人ネイティブしぐさ」という感じで無敵!
松木いっか『日本三國(2)』(小学館)※マンガワン/裏サンデーで連載中
自分の言い訳が100%通らないのが分かってるから、相手に「何が違うねん?」と追い込まれたくないためだけに自ら退路を断ってしまうアレ、頻繁に下手を打って謝り慣れている関西人は本当によくやる。こんなもん俺やんけ。
町山主簿補佐の断末魔の苦しまぎれは「THE・いのちのかがやき」という感じで、ここからしか得られない養分があるし、主人公サイドで一番の権力者のはずなのに絶体絶命のモノローグを魅せてくれる”藤3世のいのち”も終始かがやいているので併せてお楽しみください。
あと、この巻から活躍が始まる軍師の賀来さんが最高で、彼がかっこよく立ち振る舞うところが見たくもあり、裏の裏を突かれて痛い目を見るところも見たくもある「どっちでも面白くなりすぎる」超有能キャラなので、今後の活躍に期待。
『最強の弁護士』3巻は、高橋のぼるの一番美味しいところが高密度で圧縮されているので本当にクセになる。
著/高橋のぼる 脚本/久慈希跡 原案協力・監修/プロジェクトB『最強の弁護士(3)』(小学館)※グランドジャンプで連載中
各キャラの「その謎のリアクションのコマ、要る?」とか、「何の感情やねん」という表情のアップとか、みんな本当にこの謎の「めちゃくちゃおいしい雑味」を読みまくってほしい。大統領の顔が全部良い。
この巻での一番の最高の雑味としては、第19話に2コマだけ出てきた、チラシを台車で運ぶ男のビジュアルが赤ちゃんオランウータンすぎて最高すぎるので必読。これが好きなら『土竜の唄』も全巻すぐ読んでください。
いい感じで雑味が混ざってくるといえば『擬態人A』2巻も良くて、ストーリー自体はシリアスでかっこいいものなのに、なぜか作者が「ふざける気持ちを抑えきれませんでした」みたいなことを不意に突っ込んでくるので毎回不思議な気持ちになる。人類に擬態するスキルを学ぶ過程で、カラオケがうまくなり過ぎるのはおかしいですよ!
あと、宇宙の知的生命体が「タカ派」と「ハト派」に分かれて争ってるのすごくいいな。鷹と鳩が「強硬」と「穏健」の対立する概念を象徴する宇宙の共通生物になっているの、我々地球の勝利だ!という感じですごくいい。
渡辺アカ『擬態人A(2)』(秋田書店)※別冊少年チャンピオンで連載中
『日本三國』について書いてて思い出しためちゃくちゃどうでもいい国盗りマンガの話ですが、『武田みけん星』(著/司 敬 )で、主人公の武田くんが「全国の不良を統一したいが、クリーンにラグビーで勝負して最強を決めよう」と提案して全国の不良に話をつける際、ケンカでボコボコにして、ほかの地方の番長にラグビー参戦を飲ませる流れ、「もう最初から最後まで暴力でやれ!」という感じで意味不明と思います。
げきが・うるふ●マイナーマンガ紹介ブログ・なめくじ長屋奇考録の管理人&特殊出版レーベル・おおかみ書房編集長。個人ブログ「なめくじ長屋」、パスワードが分からなくなって2年放置していましたが、ようやく分かったのでまた要らんことをしていきます。
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