『カウボーイ・ビバップ』や、Netflixのオリジナルアニメ『エデン』等で人気の高いアニメーター、川元利浩さんの3本目のご紹介です。川元さんが大好きなクリエーター、松本零士のあの作品。思う存分、語っていただきましょう!
取材・文/渡辺麻紀
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『タワーリング・インフェルノ』川元利浩 第1回
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<プロフィール>
川元利浩(かわもと・としひろ)●1963年三重県生まれ。アニメーター、キャラクターデザイナー。株式会社ボンズ取締役。キャラクターデザインを手掛けた主な作品に『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』(1991年/作画監督)、『カウボーイ・ビバップ』(1998年)、『エデン』(2021年)ほか多数。
松本零士先生にメーテルを色紙に描いてもらったので、ああ、これで僕の長年の念願は叶ったなって(笑)
――川元さん、今回は最後の3本目です。何を挙げますか?
『銀河鉄道999』(1979年)です。最初の劇場版。僕が高校1年生のときスクリーンで観ました。先に漫画連載があり、それからTVシリーズ、そしてこの劇場版という順番だった。劇場版公開時の触れ込みは「結末が描かれる」だったので期待度もハンパなかったんです。漫画版もTV版も結末を迎えてなかったですからね。
――ということは、結末に衝撃を受けたことで、忘れられない作品になった?
それもありますが、やはり劇場用としてのクオリティが高かった。観る前から期待はしていたんです。というのも、スタッフがTVの『キャプテンハーロック』(『宇宙海賊キャプテンハーロック』<1978~79年>)を作ったメンバーだったから。監督がりん・たろうさん、キャラデザが小松原(一男)さん、美術監督が椋尾(篁)さん。僕はこのシリーズが松本作品の再現度の点ですごくはまったので、期待が高まっていたんですよ。
そういう場合って普通、期待を裏切られることが多いと思うんだけど、これは裏切られるどころか期待以上だった。劇場作品としての完成度が高く、ビジュアル面も素晴らしくて、まさに“映画”という感じ。前年までの人気作品の劇場版化には感じなかった高品質感を初めて感じたくらい。メーテルも美しかったし、鉄郎も頼もしかった。
――松本作品の印象は美女とサエない男子の組み合わせなので、そこが男子にウケるのかなって。女子の反対ですよね。イケメンとサエない女子がカップルになる少女漫画、多いじゃないですか。
願望ですよね(笑)。でも、映画の鉄郎はもっと大人な雰囲気で身長も高くなっていて、原作漫画やTV版よりもメーテルとの差が縮まっている。それに、松本作品で重要なのは、美女が好きになるのは常に、ちゃんと仕事が出来る男子という点なんですよ。見てくれはサエないかもしれないけれど、信念を持ち仕事も出来る。つまり、そういう要素があれば美女も認めてくれるという教訓にもなっているんです(笑)。
――確かに(笑)。
あとは音楽ですよね。映像と音楽のシンクロ感。曲も長編のストーリーのようにつながっている。映像とリンクすることで生まれる幸福感。そういうのを本作で初めて味わったと思います。購入したサントラは、交響詩の構成になっていて、繰り返し聴いていましたし、いまでも車のなかで聴いているくらい(笑)。
もうひとつは大ヒットしたゴダイゴのテーマ曲ですよね。ウェットな感じで終わっちゃった静寂のあと、エンドクレジットのときに凄く軽快な歌が流れてきて、「そうか、やっぱり未来は明るいんだ」という気持ちにさせてくれた。そういう音楽の構成や選択が映画的というか、センスいいなあって思いましたからね。
――終盤はちょっとびっくりですよね。
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