洋画の面白さ、役者の魅力、いろんな面で僕を目覚めさせてくれた映画『タワーリング・インフェルノ』川元利浩 第1回【連載 アニメ人、オレの映画3本】

今回のゲストは川元利浩さん。大ヒット作『カウボーイビバップ』(1998年)や『血界戦線』(2015年)等のキャラクターデザイン&作画監督として知られる人気アニメーターだ。お父さんが映写技師だったので、子供のころは顔パスで映画を楽しんでいたという川元さんの3本の映画とは? お伺いしてみましょう!
取材・文/渡辺麻紀

錚々たるアニメ関係者のアツい映画評【アニメ人、オレの映画3本 記事一覧】

<プロフィール>
川元利浩(かわもと・としひろ)●1963年三重県生まれ。アニメーター、キャラクターデザイナー。株式会社ボンズ取締役。キャラクターデザインを手掛けた主な作品に『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』(1991年/作画監督)、『カウボーイ・ビバップ』(1998年)、『エデン』(2021年)ほか多数。

 

スティーブ・マックィーンは寡黙な男がよく似合う。おそらく男が憧れるタイプだと思う

――川元さん、今回はまず1本目をお願いします。

僕が洋画にハマったきっかけとなった作品を選んでみました。まずは『タワーリング・インフェルノ』(1974年)です。
親父が映写技師だったので、小さいときから映画館にはよく通っていました。親父のお弁当を片手に顔パスで劇場に入り、映写室から映画を楽しむ。そうやって子供のころから映画には親しんでいたんです。

――それは羨ましい環境ですね。

招待券をほかの劇場のチケットと交換したりして、あちこちの劇場で映画を観てましたね。確かにいい環境でした(笑)。
父の務めていた劇場が松竹大映系だったこともあったのか、わりと邦画をよく観ていたんですが、『~インフェルノ』を観て、ググっと洋画のほうに傾いたんです。日本であんなスペクタクル映画、作れないでしょ?

――そうですね。

僕の記憶だと『ポセイドン・アドベンチャー』(1972年)の大ヒットでパニック映画が作られるようになって、そのあと『大地震』(1974年)、そして『~インフェルノ』という順番だったんですよ。僕は『~アドベンチャー』をTVで観て、パニック映画って面白いなあと思い、『大地震』は劇場で観たんです。ところが、上映途中に劇場に入ったら、ちょうど地震発生のシーンで、扉を開けた途端、凄まじい音が聞こえてきて。もう心臓が止まりそうになった。

――あの映画は音響がウリでしたね。

「センサラウンド方式」とかいう音響システムで、耳をつんざくような大迫力。この音の洪水がトラウマになって、それから絶対、上映途中から劇場に入らなくなった(笑)。だから、まともに劇場で観た最初のパニック映画は『~インフェルノ』になりますね。

――おいくつだったんですか?

小学校6年生くらいだったと思います。この映画は、公開前からいろいろ情報を仕入れてて期待度マックスでスクリーンに向かったんです。たとえばハリウッドのメジャースタジオ、20世紀FOXとワーナー・ブラザースが、今で言うコラボをした作品、とか。大スターがたくさん出演している、とか。
あとは『ポセイドン・アドベンチャー』と同じスタッフが作っているというのもウリになっていたので、期待がめちゃくちゃ膨らんだんです。

――どちらとも製作がアーウィン・アレンで脚本はスターリング・シリファント。音楽もジョン・ウィリアムズでしたし、編集も同じハロルド・F・クレス。同じメンバーですね。

そんなときは普通、失望する場合が多いじゃないですか? でも、『~インフェルノ』は期待通りだった。期待通りに楽しめて、本当に嬉しかったんですよ。

――私も今回、何十年ぶりかで観直したんですが、めちゃくちゃ面白くてびっくりしました。2時間45分、あっという間でしたね。

そうそう、時間をまったく感じさせない。もしかしたら、そういう映画も初めてだったかもしれない。しかも、消防隊長、めっちゃかっこよくないですか?

――もう、かっこよすぎでした(笑)。

スティーブ・マックィーン。登場するのが映画が始まって30分後くらい。出て来た途端、その場をかっさらってしまう。登場してすぐにかわすO.J.シンプソンとのプロフェッショナルな会話だけで、小学生の僕でも「このおじさん、すげえかっこいい」ですよ(笑)。何というか、プロの仕事を観ている感じ。男のお仕事映画としても見応えがある。
マックィーンが登場するまえは、138階建てのビルを設計した建築家のポール・ニューマンのプロっぷりと正義感に感心していたんですが、消防隊長が出てからはずっとマックィーンばかり見てました。

――私は今回、やっとマックィーンのかっこよさに気づいた感じでしたね。

寡黙なところがいいですよ。必要最小限のことしか口にしないし、大勢の名優が登場する中でも圧倒的な存在感ですからね。スターのオーラと言うかカリスマ性を感じてしまう。

――マックィーンは『~インフェルノ』が初めてだったんですか?

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