フィロソフィーのダンスによる連載「偏愛記」。メンバー全員が登場し、最新アルバム『愛の哲学』について、そして先日、十束おとはの卒業と、新メンバー募集を発表したばかりのフィロソフィーのダンスに、今の率直な思いを聞かせてもらった。前後編にわたってお届けします!
取材&文/南波一海 撮影/飯田エリカ
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――十束さんに卒業発表直前にお話しをうかがいましたが、発表後はどうでしたか。気持ち的にスッキリできましたか?
大好きなファンの皆さま・お世話になっている関係者の皆さまへ pic.twitter.com/TYY2a9xbRG
— 十束おとは(おとはす) (@ttk_philosophy) March 4, 2022
十束おとは 考えていた年数が長かったのでやっと発表できたという実感はありました。ネガティブな意見もあるかなと予想していたんですけど、ファンのかたが想像以上に温かくて。11月まで応援するし、その先のフィロソフィーのダンスも応援すると言ってくれるかたが多かったので、本当にファンのかたに恵まれているなというのが率直な気持ちです。新メンバーオーディションに関しては、4人でやってきた期間が長いので反対意見もあって当然なんですけど、私たちも審査に関わらせてもらうので、しっかり選んで、その子を育てていきたいなという気持ちになっています。
――十束さんから卒業発表のコメントがあって、そのあとにインタビュー記事を公開して。それ以降もオンラインライブで話したり、インスタライブもやっていましたよね。何度も説明していたのが十束さんらしい丁寧さだなと感じました。
十束 卒業発表は18時ちょうどにしたんですけど、そのときにみんなでグループ通話していて、怒られたんですよ。
――怒られた?
十束 「通話に加わるのが遅いよ」って(笑)。私、ツイートしなきゃいけないのに!
日向ハル だって約束したじゃん。グループ通話しながらそのときを迎えようねって。
――いい話!
奥津マリリ その前まで会ってたんですけど、夕方以降は一緒にいなかったので、それぞれがそわそわしていて。「みんなで通話しよう。じゃあ18時ね」と決まったんです。
日向 はす(十束)がいないところで勝手に通話することを決めてて(笑)。
十束 知らなくて、ひとりでめっちゃドキドキしてたら「LINE通話始まりました」みたいになってて。それで入ってみたら「遅いよ」って怒られて。本当に変な人たちだなと思いましたよ(笑)。
――そこで反応を見て、話し合ったりして。
日向 はい。温かい人が多いね、みたいな話をしてました。でも、発表当日は、本当に現実だったんだ……みたいな、傷口を見て痛くなるみたいな感じではありました。わかってたのにダウナーモードにはなりました。寝たら元気になりましたけど。
十束 睡眠って大事だね。
日向 でも、はすが辞めても、私たちは心で繋がってるんでね。
佐藤まりあ 急にどうしたの(笑)。
――それらしいことを言わないでいいですよ! 今回はついにメジャー1stアルバム『愛の哲学』リリースということで、じっくりと作品について語っていただきたいと思っています。
日向 どうでしたか?
――アルバムを通して聴いてみると、特定のジャンルに寄りかかることなく、どんなものを歌っても自分たちのものにできているという自信のようなものを感じました。
日向 嬉しい。それはよいことですね!
奥津 仰ってくださったように、バラエティに富んだ1枚になったな、というのが率直な感想です。これまでのシングル曲たちとアルバムの新曲が半々で入っていて。いままでは出してきた曲をまとめるだけのアルバムが多かったんですけど、今回は新規収録曲も多くて、新たな気持ちでドカッと新曲を歌っているのがみんなにも喜んでもらえるんじゃないかなと思ってます。
日向 こうして振り返ってみると、ほとんどの曲で誰かとコラボしていて。本当に恵まれた、楽しい1年半だったなというアルバムでもあるし、同時に、みなさんの力を借りて出すことができたので、もっと頑張らなきゃいけないという気持ちを引き締め直すことができる作品でもあります。
佐藤 どれも見せかたにこだわっていて。例えば「ロック★with you」はバスケットボール女子日本リーグ“Wリーグ”の公式応援ソングなので、振り付けは強めの攻めたものになっているし、新たなことに挑戦しようということで、ダンスチームのTeam“S”さんとコラボして踊ったりもします。私たちにとっては初めてダンサーのかたを交えて作品を完成させて、配信ライブで披露されるんです(4/21に開催される配信ライブ「フィロのス ★with you」)。曲の幅が広がったからこそ、できる表現が増えたのがよかった点だなと思ってます。
十束 まずはみんなで1年半、メジャーで頑張ってこられて、これだけ多くの曲を作ってもらえたことと、インディーズ時代の曲も入れてもらえて、集大成となるようなアルバムを作らせてもらえたのが嬉しいです。ラップしながら踊る曲とか、7年目にして新たな挑戦できて楽しいなと思える瞬間も多かったですね。ツアーも発表されて、アルバムの曲をどうパフォーマンスするんだろうという期待をして来てくれる人も多いと思うので、ちゃんとしたものを見せないといけないという緊張感も生まれ始めているところです。
――アルバム用の録りおろしが多いという話が出ましたが、以前、1枚のシングルを作るのにたくさんのプリプロをするという話をしてくれたじゃないですか。もちろんアルバムもそうですよね。
十束 そうです! 一時期、えげつない量のプリプロをやっていて。
佐藤 去年の秋くらい?
日向 うん。その頃は常に摸索している感じだったかもしれない。
奥津 アルバム曲が決まるまでがね。プリプロだからと言って手を抜くことなく、これまで通り1曲1曲大切に歌って。「誓い合ったんだってね、LOVE」は詞先の曲だったので、歌詞にハマるのはどれかということで同じ歌詞で違う曲を4パターンくらい歌ったんです。
日向 それはさすがに初めての経験だったね。
奥津 パッと聴きでいいなと思っていた曲と、実際に4人で歌ってみて、仮で歌割りをはめてみて聴くのとでは全然聴こえかたが違う曲もあったりして。プリプロの必要性を改めて感じることができました。
――ここにあるアルバムの新曲5曲も、ただ5曲を録ったわけではなくて、そういった途方もない試行錯誤を経て残った曲ということですよね。
奥津 そうです、選ばれし戦士たちです。
日向 「愛の哲学」も、まず自分たちの伝えたい内容があって。候補曲がいくつもあるなか、歌詞が一番ハマりそうとか、サビのメロディがライブで映えそうとか、こういうことを伝えたいならこの尺があったほうがいいよね、みたいなところも話し合って、選んでいきました。
――1曲だけでもそれだけ枝分かれしていくということは、このアルバム1枚はどれだけ膨大ななかから厳選した曲でできているんだろうと想像してしまいます。
佐藤 「ロック★with you」が一番たくさん歌った気がします。何度も歌って、やっと決まったのがこれなんです。
奥津 アルバムを作るのってこんなに大変なんだと思いました。メジャーに入ってから、自分たちはこうしたいです、という意見を言わせていただくことが増えたので、より制作に携われた1枚なんですよね。特に新しく録ったものたちは、みんなで一緒に作っていった感覚がこれまで以上に強いです。
――アルバムの新曲の話を中心にうかがっていきたいと思います。まずアルバムに先立ってリリースされたのが、先ほども話に出た1曲目の「ロック★with you」でした。
奥津 バスケの試合を盛り上げるにはぴったりで。
十束 強さの方向性がこれまでと違うのも新鮮で、私はこの曲と出会えてよかったなと思ってます。これで知ってくれるバスケファンのかたもいるだろうし、試合の間に曲が流れる経験って人生を通してないことじゃないですか? 大切な思い出の1曲にもなりました。ライブでみんながどういう乗りかたをしてくれるのか未知数なので楽しみです。
日向 「ロック★with you」に合わせた衣装はダウン素材を採り入れていたり、私はバスケットゴールを頭につけているんですけど、そういうこともWリーグがなかったら挑戦できなかったので、ビジュアル面でも楽しかったです。
――オフィスを舞台にしたミュージックビデオもインパクトがあります。
奥津 オフィスで大暴れさせてもらいました! 普段、打ち合わせをしているような会議室を使わせてもらったり、実際に普段私たちをサポートして下さっているソニーミュージックのスタッフさんにも出ていただいたりしてます。いままでは「おれたち最高!」「みんな愛してるよ!」みたいに昂る曲が多かったんですけど、これは戦っている人を鼓舞する応援ソングだから、私たちにとっては新しい角度での熱さみたいなものが出せた曲になったと思っていて。それがMVにもいい感じに出ていると思ってます。
日向 加茂(啓太郎)さんもMVに出てくれてますけど、あの加茂さんが働けてるんだからいい会社だよね(笑)。
十束 ソニーミュージックは心が広いよ!
奥津 ソニーミュージックの新卒募集のキャッチが「変人、募集中。」だったことがあるらしくて、本当にいい会社だなと(笑)。
――5曲目の「ウォータープルーフ・ナイト」は、これまた新境地ですね。2stepのトラックにラップが乗る展開で。こういうチャレンジを成功させてこそ現在のフィロソフィーのダンスなのではないかと思った次第です。
十束 じつは私、最初に聴いたときはこれをちゃんとものにできるのか不安があったんです。でも、できあがったら、まわりの人にいい曲だねってすごく言っていただけて。それで安心したと同時に、自分のなかで価値観が凝り固まりすぎていたのかもしれないと思って、ちょっと反省したんです。もしかしたらこのグループの可能性を狭めていたのかなと。
――当初はしっくりこなかったんですね。それも興味深いです。
奥津 私も不安みたいなものはありました。曲が完成して、踊っている映像を一歩引いて見たときに、いまのキラキララップみたいな要素もありつつノスタルジックさもあって、私たちが歌う意味のある曲になったんじゃないかなと思います。いい意味での懐かしいエモさが味わい深かったです。
日向 歌詞は私たちのアイディアで、世代感をめちゃくちゃ出した歌詞をお願いしたんです。私たち年齢非公開のくせに(笑)。JK時代のことをテーマにした曲がほしいねという話になって、児玉雨子さんにお願いしました。それがこうしてラップになるとは思っていなかったです。
――ラップがすごく自然にはまっていますよね。しかし、ゼロ年代のケータイの描写が懐かしくなるなんて思いもよらなかったです。
日向 “新着問い合わせ”とか。私たちはガラケー世代なので。
奥津 (とぼけた表情で)そこは私、ちょっとわからないかな……。
――小ボケを入れないでくださいよ。
日向 (笑)。細かいところも色々とアイディア出しさせていただきました。
奥津 ギャル世代最高ということでハルちゃんが先導してくれて。
――“着うたは もちミリヤ”のくだりですよね。
日向 私が加藤ミリヤさんがいいです、と言って。同じレコード会社なので許可を取ってもらって、使用させていただきました。最近、平成がリバイバルしてブームになっていますよね。私たちも去年のハロウィンにマンバメイクをしてみたり、当時のことを懐かしむのが楽しい時期がきたんです。いまってギャルが流行ってるよね?
十束 厚底スニーカーにルーズソックス履いてる子がいたりするもんね。時代が1周しているというのはわかる。
日向 私たちが小さい頃に着ていたキッズブランドのナルミヤのキャラが復刻したりとか、当時の懐かしいものがちょうど戻ってくる時期なのかもしれないですね。
――折しもY2Kの波が来ていますし。
十束 そうそう。Y2Kファッションとか、よく見るようになりましたよね。
佐藤 懐かしい思い出が蘇る1曲になったね。当時はプリクラを何回も撮ってましたよ。400円出して。学生にしては貴重なお金を結構使ってました。
奥津 平気で1日に5回くらい撮ってたよね。あれから時間が結構経ったから、ひとつの時代として感じられるようになったところがあるんでしょうね。面白いカルチャーがたくさんあったなと思う。
十束 頭にハイビスカスつけてたよね?
奥津 ああ、ハイビスカス流行ってたわ!
佐藤 スクールバッグとかにもつけてたのを雑誌で見たことある。
奥津 漫画の『GALS!』も象徴的だよね。
日向 『GALS!』も復活しましたし(2019年に17年ぶりの続編「GALS!!」が連載開始)。私たちもリアルタイム世代として形に残したいと思いました。この曲はJUVENILEさんのアレンジもすごく素敵で、新しいフィロソフィーのダンスに出会わせてもらったので感謝しています。
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