E-girls、Flowerでのヴォーカリスト鷲尾伶菜としての活動を経て、2020年10月からソロプロジェクトをスタートさせた伶が、待望のファーストアルバム『Just Wanna Sing』をリリースした。ソロシンガーとしては初の試みとして、コラボや、フィーチャリング楽曲、自ら作詞を手掛けた楽曲など、”いま”の伶が詰まった作品に込められた思いを語ってもらった。
取材&文/吉田可奈 撮影/玉井美世子
――ついにソロアルバム『Just Wanna Sing』がリリースされました。アルバムを完成させた、いまの気持ちを教えてください。
ソロでアルバムをリリースすることは目標のひとつだったので、とても感慨深いです。この1年半ほど、ソロとして活動してきた中で、コンスタントにリリースさせていただいた様々な曲をすべて詰め込めたことも、すごくうれしいです。
――リスナーとしては、E-girlsとしての活動を終えてから、すぐにソロ活動を始めてくれたことがすごくうれしかったんですが、いつ頃から準備をしていたのでしょうか。
E-girlsとして活動している最中に、ソロとして、映画『小説の神様 君としか描けない物語』の映画主題歌と挿入歌のお話をいただいたんです。もともとソロとして歌うタイミングをいつにしようか悩んでいたこともあったので、そのお話はすごくありがたかったです。ちょうどE-girlsとしての活動を終えるタイミングでもあったので、そこからソロをスタートさせることとなりました。
――大きなタイアップでのソロ活動がスタートとなりましたが、どんな反響がありましたか?
たくさんの方から連絡をいただきましたし、ファンの方々にも、たくさん聴いてもらえたことがすごくうれしかったです。私としては、ソロ活動を自由に楽しみながらやらせていただいているので、これからもそのスタンスで歌っていきたいなと思っています。
――ソロで歌うからこそ、新たなイメージの構築が必要となってくると思うのですが、伶さん自身は、どんなビジョンを掲げているのでしょうか。
今まではE-girlsやFlowerの、グループの色に寄せた曲が多かったので、自分の意思というよりも、”これはグループに合っているからやったほうがいい”“このタイミングでこれを歌った方が良い”という気持ちが強かったんです。でもソロになると、自分の色だけで勝負をすることになるので、自分が好きな楽曲のジャンルや、良いと思うものを、自分のタイミングでリリースできること自体、すごく新鮮な気持ちですし、楽しいです。
――Flowerのイメージが強いからか、バラードや歌モノのイメージがあるんですが、プライベートではどんな曲が好きなのでしょうか?
普段はR&Bやボカロなどもよく聴くんです。なかでもYOASOBIさんはよく聴いています。
――今回はYOASOBIのIkuraさんこと、幾田りらさんとも『宝石feat. 幾田りら』でコラボされていますよね。
はい、YOASOBIとしてはもちろん、りらちゃんのシンガーソングライターとしての楽曲もすごく好きなこともあって、お願いさせていただきました。
――この『宝石feat. 幾田りら』は、幾田さんにとっての初めての楽曲提供になるんですね。
そうみたいなんです。本当にりらちゃんの曲が好きだったので、すごく光栄で。以前、YouTubeでりらちゃんの『Answer』もカバーさせていただいていたのですが、それをりらちゃんも知ってくれていただけでなく、Flowerの曲も弾き語りで歌ってくださっていたんですよ。そこに大きなご縁を感じました。
――この曲は、おふたりでディスカッションしていくなかで生まれていったんですか?
そうですね。女性2人で歌うのであれば、どんな曲がいいんだろうと考えたときに、恋愛よりも、夢に対する想いや、これまで経験してきたなかで感じたことが良いんじゃないかという話になったんです。あとは、どんな人が聴いても勇気づけられる“エールソング”ができたらいいねという話をしていました。その後、完成した曲を聴いたときに、りらちゃんが作り出す曲は、ものすごく繊細で、言葉が美しいなとあらためて感じました。
――一緒に歌ってみていかがでしたか?
とても贅沢な時間でした。グループ活動のときもそうだったんですが、声を重ねてみないと、どんなハーモニーになるかはわからないんです。いざ歌ってみると想像と全然違うことも多いんですよね。りらちゃんとの曲は、想像していたものよりも何倍もいい仕上がりになりました。
――プライベートな話はできましたか?
りらちゃんはよくゲーム配信を見ているそうで、私と一緒にゲームがしたいって言ってくれたんです。実は、Ayaseくんとはよくゲームを一緒にやっているので、私もりらちゃんと一緒にやってみたかったんです。ただ、私がやっているのはホラーゲームなので、りらちゃんはちょっと怖がっていて(笑)。なので、一緒にプレイができるのはまだ先になるのかなと思っています(笑)。
――笹川さんが提供した『エンカウントfeat. 笹川真生』では、どのように曲をお願いしたのでしょうか。
以前から笹川さんがYouTubeなどで素敵な楽曲を生み出しているのをずっと聴いていたので、思い切ってお願いしてみたら引き受けていただけたんです。
――どのようなオーダーをしたのでしょうか。
笹川さんの世界観で、笹川さんが思うような私の曲を書いてくださいとお願いをしました。私自身、これまでの曲を聴きこんでいたので安心して任せられましたし、上がってきた曲を聴いたときに、本当に素晴らしい才能を感じて衝撃を受けました。歌詞には、私の今までの活動があって、その先に今があるというメッセージのこもった仕上がりになっていましたし、リリックビデオでは、今までの自分があり、新しい自分がいて、生まれ変わってももう一度自分を生きてみたいと言うメッセージが込められていたんです。さらりと聴いただけでは、曲の軽快さからその深さよりも、楽しさが勝つんですが、聴きこむとどんどん深くなっていくことに気付いて、本当にすごいなって思いました。
――これまで歌ってきた曲とはタイプが違うので歌い方も変化してくると思うのですが、いかがですか?
そうですね。なので、レコーディングのディレクションは笹川さんにお任せしました。自分の色を出すと言うよりも、笹川さんが思うような、思い描く世界観に沿えるように、オーダーに忠実に歌っていきました。たぶん自分だけだったら、こんな風に歌っていないと思うんですよね。新しい自分を発見できたようで、すごく楽しかったです。
――ちなみに、どんなディレクションだったんですか?
滑舌を悪くしてほしいって言われたんです(笑)。
――え! 今まで、絶対に言われたことがないですよね?
ないです(笑)。もともとハキハキと、アクセントを入れて歌うクセがあるんですが、今回はニュアンスを重視で、滑舌悪いくらいがいいと思うというオーダーをいただいたので、努力してけだるさを意識して歌いました。なので、最初は“これでいいのかな?”って不安だったんです(笑)。でも、すごくカッコよく仕上がっていて、天才だなって思いました。
――先ほど言っていたように、歌詞もすごく衝撃的ですよね。
はい。“群れてないでおいで”“自由自在に息をしてみよう”“はみ出せ”という言葉はすごく強いですよね。きっと、グループからソロになった私だからこそ、この言葉をくれたんだと思うんです。そこで“はみ出していいんだな”って思えましたし、自分が思い描くものを遠慮せずに、自信をもって表現していいんだってあらためて感じました。音楽は正解がないので自由に個性が出るし、それぞれの良さが出るし、好みも分かれると思うんです。だからこそ、私の曲を好んで聞いていただく方々に、愛していただけるものになればいいなと思いました。
――さて、『恋と、終わりと、Kiss feat. 清塚信也』という曲では、伶さんが作詞をされていますが、どのように作ったのでしょうか。
清塚信也さんから曲をいただいて、そこで感じたインスピレーションを大事に、歌詞を落としました。メロディが本当に美しいだけでなく、エモーショナルだったので、邪魔しない言葉を、どうはめ込もうかと悩みながら書いていったんです。最初にこのメロディを聴いたときに、どちらかというと、幸せなハッピーエンドよりも試練を感じたので、誰もが経験があるだろう、上手くいかなかった恋愛や、一緒にいるのになぜか寂しくなってしまうというような、様々な場面にリンクできる歌詞を作らせていただきました。もともとのメロディが、1番が少し暗くて、2番には色っぽさがあるんです。なので、1番は男性目線、2番は女性目線で描くことに挑戦しました。
――作詞はいかがでしたか?
大変でしたね。1から作っていくのは楽しさもあり、難しさもあり、すごく勉強になりました。これを機に、作詞にチャレンジしていきたいです。
――自分の言葉を歌うとなると、また気持ちも異なるのではないでしょうか。
そうですね。自分の恋愛観や、様々な本を読んだり、映画を観たり、いろんな人の話を聞くなど、インプットをたくさんしたうえで、自分をその気持ちに持っていくのが大変でした。
――伶さんが、インプットをする中で心を掴まれたカルチャー作品を教えてください。
1年前くらいに見た『LION/ライオン~25年目のただいま~』という映画はすごく心に刺さりました。インドで迷子になった5歳の少年が、25年後にGoogle Earthで故郷を見つけるという実話なんですが、“事実は小説より奇なり”って、本当なんだなって。すごく色々なことを考えさせられましたし、驚くほど様々な感情になりました。そのときに、揺さぶられた感情をそのまま歌に、曲に落とせるようになったらいいなって思ったんです。
――いまお話を聞いただけでも、本当にいろんな感情に向き合った1年半だったと思うのですが、今後はどんな歌を歌っていきたいですか?
今作には本当に様々なジャンルの曲を収録していて、作詞をしたり、コラボをしたりと、新たな挑戦を多くさせていただけたんです。そんな曲たちを受け入れて下さる方がいること自体がすごくうれしくて。今後もみなさんに寄り添えるような曲を歌っていきたいですね。
――ちなみに、今後プライベートでしてみたいことはありますか?
私は本当にインドアなんですが、海外へ行くことは大好きなんです。でも、今は難しいので、家に閉じこもっていて(笑)。性格的に、0か100かなんですよね(笑)。なので、家でドラマや映画を観る時間が多いですね。でも、歌詞を書いているときに、もっといろんな試練を経験すればよかったなって思っていて。
――他の人がしていない経験をだいぶしている方だとは思うんですが…(笑)。
そうですね(笑)。でも、この曲を書いているときに、“もっとどん底のときって、どんな言葉を出すんだろう”って思ったんです。それもあって、普段からいろんな感情に触れることが大事だなって思いました。
――今後の曲たちも楽しみにしていますね。さて、タイトルである『Just Wanna Sing』は、すごく素敵な言葉ですね。
ありがとうございます。“ただ、歌いたいだけ”という、すごくシンプルなタイトルではあるんですが、どんな状況下であっても、歌いたいと思う今の自分の状況にピッタリだなって思ったんです。それに、このアルバムって、好きなものを好きなだけ表現している意味でも、“ただ、歌いたいだけ”という言葉がピッタリと来るんです。今まで、E-girls、Flowerとして経験してきた10年があるからこそこの言葉を使うことが出来ると思うので、すごく想いのこもったタイトルとなりました。いま、この想いで歌っている曲たちを、思いきり楽しんでもらえたらうれしいです。
伶『Just Wanna Sing』
【初回限定盤】(CD+DVD+フォトブック、三方背トールケース)¥5,800
【初回限定盤】(2CD)¥4,200
【通常盤】¥3,000
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