自ら築いた草の根のネットワークを頼りに全国のライヴハウスやカフェ、飲み屋などをツアーして回り、人によっては年間100本を超えるライヴを行なう“ツアー・ミュージシャン”たち。笑いと涙、心の痛み、そしてささやかな希望が息づく彼らの歌には、たまらなく人懐っこい魅力がある。
そんな彼らの活動に付きものなのが旅と酒、そしてブルーズ。ライヴと酒を通じて音楽の歓びを伝える、愛すべきツアー・ミュージシャンたちを紹介する不定期連載「旅と酒とブルーズと」。6日連続の4日目は、有山じゅんじ編の2日目をお届けしよう。
取材・文/染野芳輝
♯2 有山じゅんじ(PART2)
関西ブルーズ/ソウルのレジェンド、有山じゅんじをクローズアップするインタビューのPART2。ここでは濃密だった上田正樹とサウス・トゥ・サウスの解散後から現在までをお伝えしたい。ソロとして自由でマイペースな活動を展開する一方、サウス時代の盟友、上田正樹とは上田正樹R&Bバンドで活動を共にするほか、故・石田長生&木村充揮とは平成トリオとして、これまた関西ブルーズ・シーンのレジェンド・ギタリストである山岸潤史とは有山岸として精力的に活動。さらに、彼を慕う若手ミュージシャンともこだわりなくコラボレートするなど、心から音楽を楽しんでいる様子は、なんともいい感じなのだ。
おもろいヤツとはどんどんやっていきたいですねぇ
ーーサウス・トゥ・サウス解散後、77年に1stソロ・アルバム『ありのままじゅんじ』をリリースしますが、その後、90年に2作目『聞こえる聞こえる』を出すまでかなりブランクがありましたね。
でも音楽はやってたんやで。ソロも、シェイカーズやアプサラスいうバンドもやってた。バイトしながらな。9時から5時まで発掘調査のバイトして、7時から磔磔でライヴ、みたいな感じ。バイトがない時は地方をツアーしてな。僕はそれでいいと思ってた。好きなことができてるんやから。でも、家内は苦労したやろうね。口では言わんけど。そんな頃、僕が37歳やったと思うけど、小さい所でライヴやってたら、後ろの方に見覚えのある男がおって。(サウス・トゥ・サウス時代のマネージャーの)藤井淳や。で、あいつが言うわけや。なんでバイトなんかしてるんだ。お前は音楽で行けるんだから、バイトなんか辞めてしまえ、俺がCD出すからってな。嬉しかったな。バイトやめて音楽だけでやってる今のような形になったのは淳のおかげ。ただ、淳はもうちょっと2枚目路線というか、売れるようにしたかったようで、「ぐるぐる」みたいな曲は歌わんで「ウーララ」みたいなラヴソングだけやってくれとか、こんなイメージはどうやとか、色々アイディアを出してくれたけど、俺は自分にないもんはでけへんし、やったとしてもムズムズして居心地が悪い。だから、淳の思いどおりにはできなかったかも。
ーーでも、有山さんの一番新しいCDである2枚組ベスト・アルバム『アリ・ヤ・マニア』も藤井淳さんのUKプロジェクトから出てます。
そうやね。ずっと僕の曲を好きでいてくれてるのが嬉しいし、こんな僕のことを気にかけてくれていた。感謝やね。
ーーそれ以降、順調にソロ活動をしてきましたが、91年にはサウス・トゥ・サウスの再結成がありましたね。
あれは良かったな。解散して15年ぶりやったけど、みんな音楽を続けていて、しかもみんな進化してた。上手くなってんねん。それが嬉しかった。宝物や。でも、それで終わり。あのまま続けるつもりはなかったし、それでいいんちゃう? 2014年に、裕ちゃん(ベースの藤井裕。2014年10月16日死去)が亡くなる直前に1回だけ(再々結成の)ライヴをやって、リハーサルの音源も残ってるんやけど、俺は自分の心の中にだけ残しておきたいと思ってる。
ーー現在も有山さんは自分のペースで、ゆっくり、じっくり音楽を続けていらっしゃいますが、その在りようが素敵だなと思うんです。
素敵かどうかは分からへんけど、ありがたいことやなと思ってます。感謝やな。こんなんで、よう生きてるなぁ思う。
有山じゅんじ『アリ・ヤ・マニア』
UK PROJECT 3,800円(税込4,180円)<Disc1>
01.梅田からナンバまで/上田正樹と有山淳司
02.Baby お前が好きだよ
03.ディディ ワァ ディディ
04.今夜はカキ色の月が
05.時代遅れのバースデイプレゼント(未発表 1985ライヴ)
06.気持ち(2012ニュー・ヴォーカル&ミックス)
07.あつい夏(2012ニュー・ヴォーカル&ミックス)
08.ウーララ(2012ニュー・ヴォーカル&ミックス)
09.なんだ坂こんな坂
10.そんなにガミガミ
11.抱きしめよう
12.今夜はカキ色の月が/LOS RUMBEROS feat. JUNJI ARIYAMA
13.C’mon 買いもん/LOS RUMBEROS feat. JUNJI ARIYAMA
14.クリスマス・イン・マイ・ハート
15.時代遅れの馬オスデイプレゼント<Disc2>
01.Saba-Gin/LOS RUMBEROS feat. JUNJI ARIYAMA
02.時代遅れのバースデイプレゼント(未発表 1993 スタジオ)
03.明日元気になれ
04.唄は悲しみに勝つ
05.陽よ 昇れ Let it shine on/木村君と有山くん
06.Ain’t Nobody’s Business
07.Think of You
08.ありやまな夜だ
09.ぐるぐるぐる(未発表 2003 スタジオ with FUJI・MASA)
10.Woo…(未発表 2003 スタジオ with FUJI・MASA)
11.光の中から笑顔が見えるよ(未発表 2003 スタジオ)
12.くそっ、Blues!(未発表 2009 スタジオ)
13.残しとこう/有山岸
14.元気をだそう(2012 ニュー・レコーディング)
15.胸があついよ(新曲 2012 ニュー・レコーディング)
16.呑気(2012 ニュー・レコーディング)
17.ぼちぼちいこか(2012 ニュー・レコーディング 有山ソロ)※未発表ヴァージョン、新曲、新録曲を含む全32曲入りオールタイム・ベスト・アルバム。2013年リリース。
ーーソロだけじゃなく、石田さんが亡くなるまでは石田長生さん、木村充揮さんと平成トリオをやってたし、上田さんとは上田正樹R&Bバンドでずっと一緒に活動しています。去年は三代目魚武濱田成夫や清水興さんらとラウドなロック・バンドBa-chilliをやり、若いミュージシャンたちと有山じゅんじと昆虫採集なるバンドもやっていた。自由ですよね。
おもろいヤツとはどんどんやっていきたいですねぇ。平成トリオは、平成に変わってすぐ、金森幸介が服部緑地の野外音楽堂でフリー・コンサートをやるいうんで、呼んでくれてね。で。その3人で出たわけや。ギャラなしの手弁当やったけど、今と違って当時は客席が芝生でね、ええ感じやった。僕たちも気分良く演奏できて、それから平成トリオとして定期的にやるようになったわけやね。
腐れ縁というか、やっぱりキー坊は特別やねん
ーー毎年、正月の3日から5日に平成トリオが中心になったコンサート「新春!南吠える!!」を続けてますよね。各自のソロの順番はジャンケンで決めるとか、なんともユルくて、しかし味のあるライヴで、毎年楽しみにしているんですよ。
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