「つけびの村」の著者で「ロイヤルホストを守る市民の会」代表でもあるフリーライターの高橋ユキさんがお届けする、社会派新連載!
事件や報道を追う中で引っかかった“違和感”を軽妙に綴ります。
(マイブームメニューの紹介つき、みんなもロイヤルホストを守りに行こうね!)
写真・文/高橋ユキ
編集/西村依莉
私は裁判所に通い、色々な裁判を見ている傍聴人である。いまは主に、刑事裁判や事件を取材し、記事を書く仕事をしている。そのため、普段書くのはだいたい事件の原稿だ。ところが今回、テレビブロスさんから、コラムのお話をいただいてしまった。大変なことである。学生の頃に愛読していた雑誌(ウェブに形は変えたが)からの依頼をいただくなど、こんな畏れ多いことがあるだろうか。しかし問題は私が、錚々たる連載メンバーのみなさまのように、カルチャー的な側面から何かを語るような立場にはないことだ。多分どうしても事件が絡んでしまうことだろう。明るい話にはならないが、どうかお付き合いいただきたい。
* * *
数年前、ある事件の取材をしているときにたまたま立ち寄った山口県周南市の道の駅に、感謝状が飾られているのを見つけた。2018年に富田林署から抜け出し、自転車旅を装いながら逃走を続けた男の確保に協力した……という内容だった。そのとき道の駅にいた万引きGメンが、男の万引きを現認。声かけしたことによって、逮捕に至った。道の駅に飾られていた感謝状が贈呈された時のニュースは、いまもインターネットで見ることができる。
普段みなさんは、どんなニュースを目にしているだろうか。仕事に関係する分野のニュースサイトや、個人的に関心のあるカテゴリなど、さまざまに巡回することと思う。私は専ら寝起きにパソコンかスマホで、新聞社が公開している記事を眺める。ひととおり巡回が終わってから、最近好んで見ているのは、上記のような感謝状贈呈のニュースだ。
ポータルサイトなどでニュースをチェックしていると、見るつもりのなかった記事をうっかり見てしまうことがある。ついでにその記事の配信元のトップページに飛び、記事一覧やランキングを眺める……という“寄り道”をしてしまうこともある。だが、そんなふうにして見かけた記事のタイトルに、だいたいげんなりしてしまう。
「〜の違和感」
「〜の真実」
「〜の理由」
「〜のワケ」
こんなワードが躍りまくっているからだ。親切にも、真実や理由を私に教えたがってくれるウェブ記事は多いが、そこに大した真実が書かれていない場合もある。ブッダも悟りを開くまでに長い時間をかけた。私ごときが、こんなに簡単に真実にたどり着けていいわけがない。というかもう、インターネットから違和感や真実を押し付けられることに私は疲れてしまったのである。
その点、感謝状贈呈ニュースは違う。コンビニの店員さんや郵便局員、銀行員が、詐欺に騙されそうになって多額の送金をしようとしている高齢者に声かけをしたり、自宅を出て家に帰れなくなっている高齢者を高校生が助けたり、迷子の幼児を小学生が交番に送り届けたり、溺れた子供を大人が助けたり……市井の人が日々、誰かを助けて、感謝されている。「すごいなあ」というアホみたいな感想しか出てこなくなるところがいい。「〜の真実」みたいな記事より、よほど親切な人々の存在を知ることができる。
今年特に心に残った感謝状ニュースはこちらである。
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