日本のウェブトゥーン業界に必要なのはどう考えても作品の紹介記事だろ【2021年10月マンガコラム】

10月の間、「マンガ」をテーマにお届けするTV Bros.WEBの「マンガ大特集」。本日は韓国発のWEBコミック「ウェブトゥーン」についてのコラムを公開。

文/飯田 一史

【筆者プロフィール】
飯田 一史
●出版社にてカルチャー誌や小説の編集者を経験したのち、ライターに。単著に『ライトノベル・クロニクル2010-2021』『いま、子どもの本が売れる理由』『マンガ雑誌は死んだ。で、どうするの? マンガアプリ以降のマンガビジネス大転換時代』など。構成を担当した本に、週刊少年ジャンプ編集部編『描きたい!を信じる 少年ジャンプがどうしても伝えたいマンガの描き方』、藤田和日郎『読者ハ読ムナ』、福原慶匡『アニメプロデューサーになろう!』ほかがある。小説投稿サイト・エブリスタのオウンドメディア「monokaki」にてWeb小説書籍化クロニクル、出版業界紙「新文化」にて「ヤングアダルト最前線 10代は何を読んでいるのか?」連載中。

      

なぜか「おもしろい作品を紹介する」という普通の記事があまり流通しないジャンル


 韓国発のフルカラー縦スクロールマンガ「ウェブトゥーン」のことが騒がれるようになって久しい。

 しかし、決定的に不足しているのが作品の紹介記事だ。どうもウェブメディアでは「PVが取れないから」が理由らしい。日本では圧倒的に10代、20代がウェブトゥーンの中心読者だ。だからLINEマンガでもピッコマでも高校生や大学生が殴り合ったり恋愛したりするマンガがやたらランキング上位にある。だが、記事系のウェブメディアで10代を取れている媒体はほとんどない。ウェブトゥーンの読者と記事の読者が乖離しているから書かれないし、書いても数字が伸びないのだろう。ただ、一昔前と比べると大人が読んでもおもしろいウェブトゥーンの翻訳も増えてきている。でもいまいちそういうタイプの作品が日本で人気が伸びないのは「これがおもしろい」「おすすめ」と語る人が少ないからであり、なぜ語る人が少ないかといえば書ける媒体がない――というニワトリとタマゴの関係にある。そういうわけで、今回「ウェブトゥーン」というお題で自由にコラムを書いていいという機会をいただいたので以下は「読んでおもしろかった作品を普通に紹介していく」という、ウェブトゥーン読者としての自分が欲しているタイプの記事を書いていきたい。

                                         

■縦スクロール特有の演出云々はおもしろさとあまり関係がない

 その前に、ちょっと断っておくと、日本の白黒マンガと描き方が違うので縦スクロール特有の演出がどうのとか見開きで描けないからダメだとかよく言われるが、そういうことは話が面白いかどうか、読者が付くかどうかとは本質的に関係がない。もちろん、私も初めて読んだウェブトゥーンである『DICE』でサイコロが落ちていく重力表現が縦スクロールとマッチしているのを見て「なるほど、こういう魅せ方ができるのがウェブトゥーンか!」と気づかされた。『ゴッド・オブ・ハイスクール』で主人公たちが読者に対して背を向けて立ち、敵が読み手側に迫ってくるように襲ってくる演出がなされるのは縦長の画面ならではの演出ではある。国産ウェブトゥーンの最高峰である『剣の王国』では縦スクロールではなく横スクロールで読ませる斬新な演出がなされるなど技術的な面で挑戦が多く、独特な色使いも含めて横描きの白黒マンガには絶対できないことをやっている。ただ、読み手にとってはキャラやストーリーのほうがはるかに重要だし、今挙げた作品を読者がおもしろいと思うのは、技術的な理由が主ではない(「すごい」と思うのは技術的なことが理由だが)。

DICE』(LINEマンガ)
©HS/LINE Digital Frontier

『ゴッド・オブ・ハイスクール』(LINEマンガ)
©Dragon&dragon/LINE Digital Frontier

『剣の王国』(MAGCOMI)
©yoruhashi/MAG Garden

■韓国○○について知りたくて読むのもアリ

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