『僕らが殺した、最愛のキミ』で、承認欲求の強い女子・本多明日香を演じる大原優乃。極限状態で繰り広げられる超ハードな密室グロきゅんラブストーリーのなかで、ギリギリまで追い詰められた明日香をどう演じたのか教えてもらいました。
取材&文/吉田可奈 撮影/佐野円香
――とても衝撃的な脚本でしたが、“明日香”を演じてみていかがでしたか?
じつは撮影が終わってから聞いたのですが、スタッフさんが“こういう大原優乃が見たい”ということで、当て書きをしてくださったんです。そんなこと自体が初めてだったので、あらためてスタッフ皆さんの愛を感じました。それとクランクインする前に、3日間みっちりとリハーサル期間を設けてもらったんです。そのときに、自分が作り込んだ“明日香”では最後まで演じ切ることができないと不安に感じていたこともあり、クランクイン前に自分の中で役を修正し、撮影に入ることができました。なので、その3日間があったから、役に迷いはなく、撮影現場に入れたんですよね。そう考えると、リハーサル期間は本当にありがたかったです。
――ちなみに、最初にどのような“明日香”を作っていったのでしょうか。
もうちょっと可愛らしく、モテを意識しているような女の子だったんです。でも、明日香は全6話を通して、どんどん豹変していく役なので、逆算して作りなおしていきました。
――かなりさらけ出していく役なので、大変さと楽しさ、両方あったと思うのですが…。
大変というよりも、楽しさの方が大きかったですね。柴田(啓佑)監督は、私が迷っていたりすると納得がいくまで声をかけてくださるだけでなく、明日香として大事なシーンは何テイクも重ねてくださったんです。かなり刺激的な毎日を送らせていただいていたんですが、あるとき、明日香でいることに人間としての限界を感じてしまって。(若林)時英もそうだったようなんですが、思い詰めてご飯が食べられなくなってしまって……。ドラマが進むとともに、感情移入をしすぎて、みんなが極限状態を味わいました。
――それは今までにない体験ですか?
そうですね。今までは自分が心で思っていることをあれだけ激しく誰かにぶつける役をしたことがなかったので、明日香が放つパワーに自分でも圧倒されていたんです。怒りのシーンでも涙が自然とこぼれることがあったんです。でも、そこで泣いてしまうと、意味が違ってしまうこともあったんですよね。そんなときに、監督は「ここでは涙はいらない」と、ちゃんと軌道修正してくだり、しっかりと明日香の芯を作ってくださったんです。あとから気づいたんですが、明日香はいろんな男性を誘惑したり、近づいたり、恋をしたりする役なんですが、明日香としては、その行動はまったくブレていないだけでなく、彼女なりに必死に生きて、自分を守るためにしていることなんだということに気づいたんです。大多数の人から見ると悪い見え方もしてしまうかもしれませんが、そう考えると、私は明日香のことが大好きになりました。
――たしかに、一見うがった目で見られてしまいそうな役ですが、芯が一本通っていることが実感できたんですね。
はい。悪女だったり、“ビッチ”という言葉でまとめられてしまうこともあるんですが、すべてが計算ではなく、その時々の本能で動いている結果なのであって。なので、全部が計算しているように見えないように意識しながら演じていました。
――普段暮らしていく上であんなに激しく想いをぶつけたり、暴言を吐くようなことはあまりないと思うのですが、実際に演じてみていかがでしたか?
今回はありがたいことに順撮りで撮影してくださったので、それぞれのキャラクターから怒りや疑問、嫉妬心などをちゃんと受け止めたうえで、発することができたんです。さらに、リハーサル期間に一度、お芝居を通しで演じたのですが、本番でやってみると感情や意識が変化することもあったので、すごく面白かったです。
――若林さん演じる“大翔”から「ブス」と言われるシーンもありましたよね。お芝居とはいえ、女性としては辛い気持ちになってしまいそうです。
ありましたね~(笑)。真っ先に「は?」と言い返すんですが、そういう素の部分をちゃんと出すのが明日香らしいので、リアルに見えていたのならうれしいです(笑)。でも、本番でもブスと言われたことが引っ掛かって、カットがかかるまでのアドリブのシーンも「お前の方がブスだから!」と言い返したりしていて(笑)。そんな風に、“大翔”といつもケンカをしていたんです。スタッフさんからは、夫婦喧嘩みたいって言われていました(笑)。それが、ちゃんといい伏線になっているのかなと思います。
――すごくいい雰囲気での撮影だったんですね。現場は同世代の役者さんが多くいましたが、ご一緒してみていかがでしたか?
すごく刺激的でした。それぞれ役の作り方が違いますし、現場の居方も全く違うんです。そういう部分でもいただく刺激はたくさんありましたし、とにかくみんなのキャラクターがすごく濃いんですよ! 私自身、撮影現場にいる間は、ずっと明日香の気持ちでいるようにしていたんですが、もともと知っている『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』のメンバーなどは本番直前の集中の仕方が似ているところもあり、すごく助けられました。
――そのメンバー(古川毅、鈴木仁、若林時英)と久しぶりにお会いしていかがでしたか?
『3年A組』のときは、ドラマが緊迫した空気だったこともあり、カメラ前では私語が禁止だったので、芝居の動きの確認くらいしかできなかったんです。でも、今回はお互いの本質を初めて知れたような気がして、より仲良くなれました。撮影中もそれぞれが思いやりを持ち、何かあったら助けてくれるような、すごく心強い存在でした。
――明日香ちゃんは、作品を最後まで見ると本当に愛すべき存在ですよね。
分かってくれますか⁉ すごくうれしいです! 私自身、明日香のことをもっと知りたくて、家族構成や生い立ちなどをすごく細かく教えていただいたんです。そこまで一つの役に対して掘ったことは初めてだったんですよ。脚本の中でも、目線の動きなどがト書きに詳しく描かれていたんです。それもあって、より責任感も生まれましたし、明日香の未来をすごく考えました。みなさんも、明日香にびっくりすることも多いかもしれませんが、できれば嫌いにならず(笑)、愛してもらえたらうれしいです。
大原優乃(おおはらゆうの)●1999年10月8日生まれ。2009年にDream5のメンバーとしてデビュー。その後、ファッションモデル、グラビアアイドル、女優としても活躍。様々なドラマや舞台、映画に出演し、現在は『ただ離婚してないだけ』に出演中。
<ドラマ情報>
TELASAオリジナルドラマ 『僕らが殺した、最愛のキミ』
【第1話・第2話】 配信中(※第1話は無料配信)
【第3話・第4話】 2021/09/24(金)20:00~
【第5話】 2021/10/01(金)20:00~
【第6話】 2021/10/08(金)20:00~
https://www.telasa.jp/series/11875
投稿者プロフィール
- テレビ雑誌「TV Bros.」の豪華連載陣によるコラムや様々な特集、過去配信記事のアーカイブ(※一部記事はアーカイブされない可能性があります)などが月額800円でお楽しみいただけるデジタル定期購読サービスです。
最新の投稿
- お笑いブロス102024.11.22OWARAI Bros.vol.10は永野特集号!ご予約はこちらから!
- 「レイジ、ヨージ、ケイタのチング会(仮)」2024.11.21オカモトレイジ(OKAMOTO’S)、Yohji Igarashi、宮崎敬太 presents「レイジ、ヨージ、ケイタのチング会」20
- 未分類2024.11.22星取りレビュー:『ふたりで終わらせる/ IT ENDS WITH US』【2024年11月号映画コラム】
- 映画2024.11.22「してやられた!」感たっぷりの痛快クライムエンターテインメントの誕生!! 映画『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』 上田慎一郎監督インタビュー