受験生の娘に嫌われたくないけど勉強をさせたいお母さんからのお悩みです【2021年11月 光浦靖子連載「傷なめクラブ」】

みつうら・やすこ●エッセイ集「50歳になりまして」、手芸作品集「私が作って私がときめく自家発電ブローチ集」ともに文藝春秋より発売中です。
近況:バンクーバーは毎日雨です。寒いです。こないだテニスをしたら腰を悪くしました。サーモンフィッシングに行って、また腰を悪くしました。授業中に白湯を飲んでむせました。クラスメイトが笑いました。気持ちだけは10代、20代です。

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<今月のお悩み>

娘を持つシングルマザーです。受験のシーズンが近づくにつれて、どう考えても勉強をさせないといけない状況であることに今更気づきました。娘、もうちょっと頭が良いと思ってたのにショックです。「勉強しろ」と言われるとしたくなくなるのは承知なのですが、言わないと一生しそうにありません。でもうるさく言って娘に嫌われるのはもっと嫌です。光浦さんはどうやって受験勉強や日々の勉強を乗り切っていますか?(娘命・43歳・会社員・女)

 

<お答え>

私のモチベーションはただ一つ。「こんな家、早く出て行ってやる」でした

 

うちの親はマジで厳しく、いつも「ダメ、ダメ」言われてきました。「あれはやっちゃダメ」「これはやっちゃダメ」。なんでダメダメ怒られてるのか理由がさっぱりわからないことは多々ありました。「いいね」と言われたことは数少なく、100対1くらいです。だから褒められたことが響くんですね〜。大切な思い出なんかになったりして。・・うまいことやりやがったな、うちの親は。

私の場合、一回も「ダメ」と言われなかったのが勉強でした。「やれ」とも言われませんでした。自分のペースでできたので、好きも嫌いも、なんか・・・楽でした。

ただ、勉強をしても、いい点をとっても、褒められたことはほぼありません。「褒めたら図に乗るからな」と褒められたことはあります。この文章を読んで、私の近しい友人たちはこう言っていることでしょう。「この親にしてこの子ありだったのか!!」と。私の厄介な性格はここからきていたんですね〜。

10代の私は、とにかく東京に憧れていました。具体的な夢などなく、ただ東京に行きたかったんです。東京に行けば全てが叶うと本気で信じていました。しかし、夢がないのに、夢が叶うと信じてたとは、なんともティーンエイジャー恐ろしいところです。

親に高校を卒業したら東京に行きたい、と言うと案の定「ダメ」でした。「なんの能力もコネクションもない小娘が東京に行って、なんの仕事につけるんだ?」と。これに関しては親が正解です。で、親が条件を出しました。もし行くなら「大学進学しかダメ」。しかも「私立はダメ。国公立しかダメ」でした。私はそこから猛勉強しました。文系に行くので数学も理科もいらないのに、一生懸命勉強しました。受験のテクニックというか、当たり前のことを教えてくれる先生がいなかったので。参考書を買うお金も「ダメ」だったので、小遣いで買った赤本と参考書1冊で乗り切りました。

夜中、勉強をしていると親が言いました。「こんなに遅くまで勉強して・・・」。褒められるかと思ったら「電気代がもったいない」と言われました。クラスメイトのように夜食を作ってもらったことは一度もありません。おかげで太ることなく、アイドルのようなスリムな体型を維持することができました。でも受験勉強はやっぱりストレスで、夜中、屋根に登って星を見て、泣いたこともあります。RCサクセションの「雨上がりの夜空に」を聞きながら、また涙ぐんでいると親がやってきて言いました。「お前か! 泥棒かと思ったじゃないか。何を気取ってんだ?」と。私の座ったちょうど真下が親の寝室でした。

私のモチベーションはただ一つ。「こんな家、早く出て行ってやる」でした。

ね、なんつーのかな、十分な食事はあるし、なに不自由ないし、大学進学まで許してくれてるけど、なんかこう出て行きたくなる環境づくり、これが子供の自立を早めるのではないでしょうか。そして、勝手に勉強を始めるのではないでしょうか。参考にしてみてください。

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