『離婚しようよ』宮藤官九郎×大石静 交換日記式脚本が見せる 現代の結婚・離婚観【TV Bros.2023年8月号】

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ヒット作を挙げ始めたらキリがない大物売れっ子脚本家の2人が、わざわざタッグを組んだ意味とは!? なるほど、ベルイマンもビックリ(!?)な傑作・離婚コメディが誕生した! 完成までの道程を探ると……なんと出発点はノア・バームバックの『マリッジ・ストーリー』! ?  いやいや、それより断然面白いと、本編に負けず劣らずの爆笑大放談は傾聴必至です!

撮影/桑島智輝 取材・文/折田千鶴子


なんか真剣な感じがしなくていい
“合体”という言葉(宮藤)

––交換日記のように脚本を交互に書いていったとは、驚きました!

宮藤 こんな風に1話の中で交互に書いていくなんて、僕も初めてでした。

大石 ちょっとあり得ないですよね。

宮藤 普通は各話の“つづく”まで書いて人に読んでもらいますが、今回は頭の3シーンだけ書いて渡す、みたいな。「ここでは面白くないけれど、後でちゃんと面白くなりますよ」というつもりで書いている、それを見せなきゃいけないなんて恥ずかしさと、これを受けて大石さんはどう書いてくるんだろう、という不安と期待が混在して。

大石 私も最初の頃は、宮藤さんに「つまんねえ」と思われたくない、という見栄がありました。でもどうせ分かっちゃうのだから仕方ないと、段々楽になっていって。むしろ途中で渡せるのが楽しくなっていきました。

––どこで自分の筆を止めるかは、簡単に線引きできましたか?

宮藤 それは磯山(晶プロデューサー)さんが、最初に色分けしてくれたんです。青の部分を僕が書いて、と。とか言いつつ、時々破ってました(笑)。

大石 そうそう、「私、ここ出来ない。宮藤さん、お願い~」って投げて。宮藤さんは「出来ない」とかおっしゃらないのですが、私は苦手な部分を投げていました。

宮藤 僕は元々得意なことでしか作って来なかったので、自分が書くものには苦手がまず入って来ない。でも今回は入ってくるので、それが面白かったですね。「うわ、こここんなに膨らむんだ~」と驚いたり。例えば第1話、ゆいが1人で歩いていた時に恭二と出会い、何となくついていく、あの辺のくだり。僕には全然ない発想だったので、半ば責任放棄して大石さんにお任せしたんです。大石さんから送られて来た時は、俺は書いてないけれど寝て起きたら誰かが書いてくれている~、なんか面白いぞ、みたいな感覚でした(笑)。良かった、良かった、出来てる、と。

大石 宮藤さんの台本には軽く時空を超えちゃうところがあって、とても勉強になりました。例えば弁護士のところに相談に行ったところで、一気に爆走しちゃったり。

宮藤 その辺は書くのが面倒くさくて……。

大石 最初に読んだ時は「何これ!?」って思ったけど、会話がメチャクチャ繋がってるんですよ。なるほど、こういうことをやってもいいのかと、その大胆さに驚きました。天才とはこういうものかと。

––『離婚しようよ』というタイトルも二度見必至ですが、元々は映画『マリッジ・ストーリー』から出発したそうですね。

宮藤 たまたま恋愛ドラマをオファーされた時、『マリッジ・ストーリー』を観たんです。海外だと、こういうのができるんだ、いいな、と思って。その時に、別れることが決まっている夫婦のドラマが出来たらいいな、と考えて。

大石 それを聞いて急いで私も観ましたが、もう病気になりそうなくらい暗くて。『マリッジ・ストーリー』より私たちの『離婚しようよ』の方が、ずっと面白いんじゃない!? 楽しいし、奥が深くて、多面的で。

宮藤 確かに『マリッジ~』は監督の実体験だから、だいぶ暗いんですよね。僕は別れる夫婦の話でも、弁護士とのやり取りとか、恋人の存在が面倒臭くなったり、離婚すると決まったら急に(夫婦の)相手といる方が気が休まる、みたいになったらいいな、と思ったんです。離婚をネガティブでなく描けたらいいと思い、タイトルも『離婚しようよ』にした気がします。

大石 私は、とにかく宮藤さんのやりたい世界に、足手まといにならないようについていこう、宮藤さんの出す雰囲気に乗っかっていこう、という感じでした。

––劇中、“合体”という言葉がやたらおかしかったですが、どちらが使い始めたのですか!? 妙に気に入ってる風に感じましたが。

大石 弁護士さんに取材した時、「合体したら不貞なんですね」と私が質問したら、宮藤さんがバカうけして、あ、これ面白いんか、と思い使ったんです。

宮藤 そうでした、そうでした(笑)!! うわ、面白い、“合体”ってすごくいいなと気に入って何回も使いました(笑)。“合体”なんて、一周して僕は『釣りバカ』を思い出しちゃいますが、なんか真剣な感じがしなくていいですよね。「合体したら不倫でしょ」とか、「合体したんでしょ!?」、「いや、合体はしていない」とか(笑)。

昔は「俺ってこんな世の中で生きてるけど、死んでるんだ」みたいなことを言う気取った奴がいっぱいいたんですよ(大石)

––それにしても大志のヘタレぶり、ダメっぷりも最高です。

大石 大志の「今日できるよ」あたりの言葉選びは、すべて宮藤さんですね(笑)。第1話の「今日できるよ」もそうですし、最終回の「今日できるよ」も宮藤さん。

宮藤 「やろうと思えば出来る」っていうのが、浅はかですよね(笑)。大志の母親(竹下景子)が不妊クリニックのパンフレットを持って来たと知って、ゆいに「だから機嫌悪いんだ。やろうと思えばできるよ」だなんて、本当に腹が立ちますよ(笑)。

––離婚のハードルが低くなった今だからこそ、描きやすい側面もありましたか。今の時代の結婚観、離婚観、不倫観みたいなものは、どのように感じましたか。

宮藤 今って“マッチングアプリ”とか“婚活”とか、結婚自体がそもそも目的化してますよね。「結婚する!」と言ってから立ち上がるというか。

大石 今はもう、事故のように欲情の発露でフッと一緒になる、みたいなことがないんでしょうかね。それはつまんないですね。

宮藤 額に“結婚したい”とプラカードを掲げた人同士が出会うなんて、それはそれで面白いかもしれないけれど、ドラマにはしづらい。そんな風に結婚自体が変わったので、当然、離婚の状況も変わる。これまでは職場や同級生など、別れた後も何かとドラマになりそうな接点がいっぱいあったんですよ。でも今は、別れた後にあと腐れない気がしますね。だからドラマになりにくい。結婚も離婚もシステム化されているというか。

––そんなシステムからポーンと1人だけ遠いところにいる、恭二というキャラクターがまた素晴らしいです。恭二が出てくるシーンは、ほぼ大石さんが書かれたと聞きました。

大石 恭二とゆいのシーンは、9割ぐらいが私です。恭二は今どきあまりいないタイプ。私が若い頃、ちょっと上の世代に「俺ってこんな世の中で生きてるけど、死んでるんだ」みたいなことを言う気取った奴がいっぱいいたんですよ(笑)。そんな人が今いたら新鮮だろうな、と。

宮藤 はい、逆に新鮮でした。しかも政治家である大志とは真逆で。

大石 血筋も地盤もあり、進む道が決まってる大志に対して、恭二は明日ホームレスになっても不思議はない。それでも「俺はいいんだ」と思って生きてる感じが色っぽくならないかな、と。

宮藤 錦戸君が、また良かったですよね。

大石 彼、本当に良かったです!

約45年結婚していた夫が去年他界した時、
ある種の爽快感や充実感があった(大石)

––最後に『離婚しようよ』を書かれたお2人にとって、結婚や離婚に関する信条のようなもの、日々心掛けていることはありますか?

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