裏切られた映画たち(仮)【2023年8月号 押井守連載 #1『DEAD OR ALIVE 犯罪者』】

連載タイトルにもなっている“裏切られた映画たち”とは、どんでん返しなどではなく、映画に対する価値観すら変えるかもしれない構造をもった作品のこと。もちろん、その裏切りに気付くのはすべてが明らかになるラストまで観てのこと――というわけで、すべてネタバレありで進む本連載。

前回はイントロダクションでしたが、今回からいよいよ「裏切り映画」について語っていただきます。1本目となるのは、哀川翔と竹内力が共演した、三池崇史監督作『DEAD OR ALIVE 犯罪者』です!

なお、この記事は『TV Bros.』本誌8月号(発売中)でも読むことができます。

取材・文/渡辺麻紀

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「映画は何でもアリ。やっちゃいけないことなんてない!」と思った『DEAD OR ALIVE 犯罪者』

――さて押井さん、連載1回目の作品です。最初なのでキャッチーなものが嬉しいと注文を出したところ、この映画になりました。

キャッチ―かどうか分からないけど、裏切り度に関してはハンパないんじゃないの? 三池(崇史)監督の『DEAD OR ALIVE 犯罪者』(99)です。麻紀さんは観た?

――今回、初めて観ました。しかもご飯を食べながら観たので、すっごくヤバかった。そういう意味では私もすでにトラウマです(笑)。

それは三池さんの作品を観る上ではサイアクのシチュエーションだよ(笑)。

私が初めて観たのは『イノセンス』(04)をやっているとき。当時、Vシネにハマっていて、片っ端からビデオレンタルして観ていた。そのなかの1本が『DEAD OR ALIVE』で当然、ヤクザ映画だと思って観始めたらアレだったから、もうぶっ飛んじゃったわけですよ。文字通り、見事に“裏切られた”。もちろん、この場合はいい意味。あまりにも面白く強烈だったので、今でも忘れられない。

――確かに、これは忘れられないです。

途中でヤクザが背広の襟の下からコンクリートブロックを出した瞬間、ああこれはそういう映画なのかと思った。それからは怒涛の勢いで、最後は刑事が背中かからバズーカを出し、対峙していた中国の残留孤児3世の男がカメハメ波みたいなパワーを繰り出し、しかも最後には地球の半分くらいがぶっ飛んでしまう。

私がこれを観て最初に思ったのは「映画は何でもアリ。やっちゃいけないことなんてない!」ということだった。所詮は映画のなかで起きたことだから、何ひとつ責任を負う必要はないし、死んだことになっている役者で続編を作っても何の問題もない。映画はそうやってブレーキを外したほうが映画本来の姿に近づく。行儀よくスタイルを守って禁欲的に完成度を上げて行くというという作り方が正しいわけではないんだということですよ。

ただし、監督にとってこれは危険な誘惑で、これから映画を撮ろうという人にはおススメできない。限られた能力と資質をもった人だけに許される特権です。

三池さんは干されることもなく、ずーっとそのノリで撮っている。しかも、お金をかけた大作も低予算の作品も同じ感覚で撮っている。低予算になると嘘のつき方が露骨になるだけ。これはかなり凄いことですよ。

――そういう感じはしますね。

三池さんはスタイルで押し通すだけの技量はある人。どんなジャンルだってこなせる監督だから。ただ、そういう映画であっても、どこかで必ず堂々と開き直っている。映画なんだから、嘘なんだから、何をやってもいいでしょ? 目くじら立てなさんなーーなんて言ってないけど、明らかにそう考えていると思う。

――『DEAD OR ALIVE』の最後のバズーカとカメハメ波って、最初から脚本にあったんでしょうか? 途中で生まれたアイデア?

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