4月23日に開催されたこじらせオンラインライブ(夜ゲスト:岡村靖幸)の収録後のおしゃべりです。夜の部の、岡村ちゃんと一緒に作った曲で感情が吹き出した余韻を引きずりつつ、話がスタートしました。最後に大事なお知らせもあります。
構成/前田隆弘
目次
ズッ友より「ズッちじ」
久保 ピーコさんの記事で一番良かったのは、親しい知人がいたことで(*)。その人にインタビューしたいくらい。
*「ピーコが自宅からいなくなって行方不明」のニュースの後、高齢者施設に入居していると伝えられた。その際、ピーコさんの現状を詳しくマスコミに語ったのが知人だった。
──ピーコさん、行方不明になったと伝えられてましたけど、見つかったんですね。
能町 「実は高齢者施設にいます」という情報が入って、その後に、3月に万引きで捕まっていたと発覚して。その万引きというのが、どう考えても認知症によるものみたいな感じだったんですよ。
ヒャダ カードも止められてて。
能町 セルフレジで会計して出ていこうとしたんだけど、実は払ってなかったらしいんです。何回もあるから店の人がさすがに見逃せなくて声をかけたら、「カードで払ってるじゃない」と言ったらしいですけど、そのカードは止まってるカードだったという。
久保 おすぎとピーコの話は聞くたびにせつなくなる。たとえ血がつながってても、あんなにしっかりしてても、そうなるんだなって。「血縁も結婚も友達も全部、老後には当てになんないじゃん!」という気持ち。でも、結局そこでそういう情報を共有し合えるのって知人だなっていうことで。
ヒャダ 知人を絶やしちゃいけない。
久保 たとえ何の連絡もしてなくても、知人の存在はありがたいのでは、という。そこにすごい親しさがなくてもいいし。タレントさんになると、もうファンの人はほぼ知人に近いんじゃないかなって思う。
能町 ファンがいなくなると、消息も追えなくなりますよね。
久保 だからファンも含めて、みんな知人と言ってていいのかなって。
ヒャダ 今日、久保さんが「ズッちじ(ずっと知人)」って言ったじゃないですか。あれを言ったとき、お客さんが本当にうれしそうだったんですよ。笑いだけじゃなくて、本当に感動したような雰囲気があって。
能町 知人でいたいんですよね、きっと。
──僕も感動側でしたよ。孤独に対する不安が潜在的にあるからなんでしょうけど。
久保 「ズッ友っていないよね」みたいな、友達としての付き合いの耐久性にも限界があることを気付く年齢なのかもしれない。
ヒャダ 今日もセンターとしてのカリスマ性を昼夜共に発揮されて。
能町 最終的には泣いて(*)。
*詳しくは6月放送予定の「久保みねヒャダこじらせナイト」をご覧ください。
ヒャダ でもあれは泣いちゃいますよ。ペットの最期とか考えるだけで。嗚咽しちゃう。
その日はいつか来る
能町 知人で最近、ペット亡くした人がいて。ツイッターでしか見てないんですけど、「毎日泣いてる」みたいなことを書いてるから、やっぱりそうなるんだなだって。
ヒャダ 僕の知り合いもそうですね。犬を亡くして、本人は「思ったより平気」と言ってるんですけど、体にめちゃくちゃ異変が起きてて、食欲も全然ないらしくて。「元気だよ」と言ってるけど、「それ完全にやられてまっせ」っていう話はしてますね。
能町 考えたくない。終わりのことは。
ヒャダ 将来の自分がそこまで強度があるのか謎ですよね。唯一の解決策は、ネクストバッターを入れることなんでしょうけど。
能町 そうなっちゃうんですよね。私の知ってる人もみんなそうやってネコが増えていくんです。1匹だったのが2匹になっちゃったりするんですよ。死んじゃったら。
ヒャダ 今日、岡村さんに「(その怖さを)どうしてるの?」って聞かれましたけど、ただ考えないようにしてるという。未来の自分への押し付け、ペンディングですね。うちは今年で10歳だから、そろそろちゃんと考えなきゃいけないんですけど。
能町 人間だともう老人?
ヒャダ 50〜60くらいですかね。でも全然ピンピンしてるし。まだまだ赤ちゃんです。走り回って。こないだ、家の玄関開けたら、ポンちゃんが好奇心でぺぺぺって外に出たんですよ。出たら、すぐ近くに野良猫がいて。人生初の……。
能町 他の猫。
ヒャダ 他猫見たら、ビビってバババーって玄関に帰ってきて、僕に対して「シャーッ!」って言いました。何で僕に言うのよ(笑)。
能町 「何であんなのいるんだよ!」って。
久保 犬は散歩で毎日お友達と会えてるけど、猫は飼い主が世界の全てなんだよね。
能町 そうなのよ。
ヒャダ そうなんですよ。
久保 それつらくない?
能町 だから留守番がなおさら申し訳ない気分になっちゃう。
ヒャダ まあ猫は1人の時間が好きというのが救いなんですけど。
能町 それが……私が毒親なもんで、うちのは1人が嫌いな猫になってしまいまして。過干渉なのは分かってるんですけど、やめられないですね。トイレ行っても付いてくる。寝るときも私のすぐそばじゃないと安心できないみたいで。同じ部屋で寝てて、私が別のところに行くと起きてきちゃう。完全に過干渉です。
ヒャダ その日のことは考えたくないですね。一番食らうと思います。愛が強すぎてつらい。
久保 もう同じ力で人を愛せない。
マッチングアプリ観には世代差がある?
能町 そこから急に話の展開を変えますけど。
久保・ヒャダ お願いします。
能町 最近の私のホットトピックはマッチングアプリなんですよ。私がやってるんじゃなくて、他人がやってるマッチングアプリが興味深いという。私からするとめっちゃハイスペックに見える、「普通に恋愛結婚すればいいじゃん」みたいな人がマッチングアプリで結婚するケースが、男女ともにめちゃめちゃ普通にあるんですよね。それがけっこうショッキングで。
ヒャダ 便利みたいですよね。いろいろ聞き出さなくていいとか、答え合わせしなくていいとかで。
能町 だから過去に(アプリ経由じゃない)恋愛もしてるんだけど、20代後半になって「よし結婚しよう」となったときに、すぐそこに行くんですよね。で、実際にそのまんまちゃんと結婚できちゃう。そんな時代になったんだと思って。
──わかります。昔の出会い系のイメージ、まだ根強くありますから。
久保 そういう話を聞くと、日常の生活圏で出会う人と付き合い始めて、でも向こうは結婚願望があるかないかも分からず、「もう何年も付き合ってるのに、どうするのかな……」みたいな悩みって、この時代では一番ダサいんだろうなって。
能町 10歳くらい下の友達がいるんですけど、本人の中では「恋愛は奥手」という意識があるらしいけど、普通にモテそうな感じなんですよ。彼氏はいたことがあって、1人目の彼氏と別れて、もう2人目からマッチングなんです。私の知ってる限りでは。その2人目の彼氏が、外資系IT企業に勤めてて、海外勤務も経て、今は日本で会社員を続けてて、趣味の分野でも活躍しているという高スペック中の高スペックみたいな人で、その人と結婚しました。
ヒャダ おめでとうございます。
久保 その高スペックの人、今までの生活圏でちょうどいい人がなぜ現れなかったんだろうね。
能町 そう思いますよね。彼女がいなかったわけがないと思うんですけど。その女の子がマッチングアプリでうまくいったから、今度はその子が友達に「マッチングアプリいいよ」とすすめたらしくて。で、その女の子もこれまたなかなかのハイスペックな方と結婚まで至ったっていうのを聞いて、何だそれと思って。
久保 ハイスペックじゃない人の話はないの?
ヒャダ ねえ、ほんとに。
能町 私の同世代の女友達がマッチングアプリを始めたんですけど、まあひどい人しか来ないらしいんですよ。その子はけっこう面食いなんですけど、いくつかアプリを変えてやっていたら、カッコいい人とやりとりできたんですって。そしたらLINEの日本語がちょっと変なんです。それで「おや?」と思ったら、業者だったらしくて。
久保 何の業者なの?
能町 それがよく分かんないんですよ。1人目のイケメンがLINEで連絡を取れなくなって、またしばらくたってイケメンな人がいて、その人ともやりとりできたんです。で、その人もLINEの日本語が微妙に変なんですよ。
ヒャダ 日本語っていいですよね、正誤判定がわかりやすいから。
能町 そしたらある日、相手がLINE電話をかけてきたんです。で、話をしたら、やっぱり日本語がちょっと変だったんですって。だからその子も「日本人じゃないですよね」と聞いて、向こうも素直に「日本人じゃないです」と答えたらしくて。「日本に来て何年目で……」みたいなことを言いだして、しゃべってみたら意外と面白かったらしいんです。「でも業者じゃないかな?」と疑っていたら数日後に電話番号のほうでかかってきて。
ヒャダ 電話番号を教えたんですか?
能町 教えてないんです。だから「え?」ってなるじゃないですか。
ヒャダ ♪テュッテュッ・テュテュテュン・テュテュテュン・テュテュテュン……(「世にも奇妙な物語」でタモリが前説するときのBGM)。
能町 それで「これは絶対におかしい」と思って、ガンガン聞き出したらしいんです。「あんた結局何なんだ」って話を。そしたら、1人目の男と、自分と、もう1人スタッフがいて、3人で業者やってるって。
──友達の尋問テクニック、すごくないですか!?
能町 電話番号は1人目の男から教えてもらったと。その男になぜ番号がバレたのかは、私も覚えてないんですけど。「何の目的でそんなことやってんの?」と聞いたら、ちょっとごまかすんですって。「まだLINEが返ってくるから、もう業者だと分かってるけど会ってみる」みたいなことを言ってて。
久保 やめなよ(笑)。「自分を騙す人の顔が見たい」って一番良くないよ。
「良い出会いがあれば結婚しよう」ではもはや無理
──その業者って、昔あった、テレクラとか出会い系のサクラみたいなやつなんですかね。
能町 でもそれにしてはクオリティが低過ぎますよね。私も出会い系のサクラやったことあるんですけど。
ヒャダ マジっすか!
能町 22くらいのときに、「簡単なパソコン作業のお仕事です」というバイトに応募したら、会社が百人町にあって(歌舞伎町から車道を挟んで北側の、新大久保駅を中心とするエリア)。狭い部屋に何人も集まって、チャットだったと思うんですけど、こっちが女の子役で、相手の男性がこっちにメッセージを送るのにお金がかかるというシステムなんです。私はちゃんとした設定でやりたいタイプなので、たとえば「ミツコ」という女性にしたら、「ミツコはどこそこでバイトしてて、学生で」みたいにちゃんとプロフィールを決めてやってたんですけど……。
ヒャダ 整合性を保つために。
能町 スタッフから「そんなのいいから、とにかくたくさん送って」と言われたんですよ。だから「ミツコ」だけじゃなく、10種類くらいの名前でいろんな男性に送って、そしたら最初の「ミツコ」に対して返信されても分かんないじゃないですか。だから矛盾したことを言っちゃって、「お前サクラだろ」と言われたりして。ちょっと面白かったけど2日で辞めました。
久保 出会い系のピンキリはすごい。でも今まではあんまりうまくいかない方の話ばかり信じてたけど、ハイスペックな成功例がどんどん出てきているのが、今の時代なんだね。
能町 それがちょっと衝撃です。昔は「とにかくどうしても結婚したい人」がやるイメージがあったけど。
ヒャダ 「男はセックス目的」「女は金目的、パパ活目的」みたいな考えはもう古いのかもしれないですね。
久保 明確に「自分はこういう人と結婚したい」というビジョンが持ててる。「出会う人と出会ったらそういう気持ちになるかもな……」じゃなくて、それくらいビジョンがしっかりした人がやれるんだろうね。「良い出会いがあれば結婚しよう」くらいの人は多分無理なんだなと。
能町 やっぱ明確な強い意志が必要ですね。「結婚をしたい」という100%の意志がないと。
久保 だからそこの意志さえあれば、マッチングであろうと、どんな出会い方であろうと、形になるんだろうね。そんなもの私にはないけど。犬にならあった。
──それで思い出したんですけど、この間「#サーチ2」という映画を見たんです。
久保 それ、私も見たいと思ってた。「サーチ」が大好きだったから。
──そこにマッチングアプリで男女が知り合うシーンが出てくるんですけど、マッチングして最初のメッセージがもう自撮り動画なんです。
能町 いきなり動画なんだ。
──外を歩きながら「ヘイ、僕は●●だ。仕事は●●で……」みたいなことをしゃべる動画を送っていて、「初手でそれなんだ」とびっくりしたんですけど、でも理にかなってるなと思って。文面で駆け引きをするよりは、実際に自分の姿やしゃべりをさらしたほうが手っ取り早いんだろうなと。
能町 確かにめんどくさいんですよね、駆け引きみたいなのいらない。
久保 でもそれをやり始めるには、もう年を取ってしまった。こうやってテレビに出てはいるけれども、もう「初めての人と自撮りしながら話す」なんてできなくて震えるよ。むしろ何も自分の記録を残したくない。
能町 記録残りまくってますよ、テレビで。
ヒャダ だったら久保さん自身が、早くChatGPTになってください。
──マザーコンピューターから、今はChatGPTへ。
久保 そうだった。私、「マザーコンピューターになりたい」って言ってたね。時代はすごいことになってるね。
趣味が一緒であれば
能町 最近、「趣味が一緒だと、初対面の人とでもしゃべれちゃう」と分かっちゃったんですよ。
ヒャダ そういう経験があったんですか。
能町 相撲のことを面白く書いている人をツイッターでフォローしてるんです。一般の人を。で、リプライしあう関係になって、10歳くらい下の男性なんですけど、普通に仲良くなって、普通に一緒に相撲を見に行くようになったんですよ。
ヒャダ 趣味が一緒だと、一足飛びで仲良くなりますもんね。
能町 その人がまた別の相撲友達を連れてきて、3人で相撲見て、そのままご飯食べに行ったり。
ヒャダ スモフレだ。
能町 初対面だけど相撲の話しかしないから、かみ合わない部分がまったくないんですよ。
ヒャダ 最高ですよね。僕もずっとセーラームーンとポケモンの話だけしてたい。
久保 私は逆に、同じ趣味の異性でも合わない人とは合わないなって。YouTubeやAbemaで将棋の中継があると、コメント欄に品がない人が少なからず混じってて……。
能町 将棋でもやっぱりそういう人いるんだ。
久保 将棋が好きな人と無条件で楽しく話せるかというと、全然そうじゃなくて。それは犬を飼ってる人でも同じなんだけど。
能町 それはもちろんそうですよ。相撲の友達も、ツイッター上での人となりを見ているから大丈夫なだけで、相撲が好きというだけでは私もウェルカムじゃないです。
ヒャダ 千葉(雄大)君なんて、犬の散歩しててもどの犬家族とも触れ合わないですもん。公園に行くと、自然に4〜5人のモッシュサークルみたいなのができるんですよ。犬飼いの人たちの。でも絶対に入らないんですよね。
久保 若い男性で犬の散歩してる人、私が挨拶しても90%は無視するんですよ。だから男性がはそういうの苦手だろうなというのは、なんとなくわかる。
セルフネグレクト、どれくらい当てはまりますか?
久保 私の場合、ツイッターで先に知り合ってから実際に仲良くなるパターンって、あんまりないんですよ。能町さんか海野つなみ先生とかくらい。
能町 海野さんはそうなんですね。
久保 私がもともとファンで、ツイッター始めてから、会ったことない他のマンガ家さんとやりとりするようになったんですよ。なぜか私は相手が同い年だと勘違いをしてて、タメ口でやりとりしてて。あるとき、「同い年だよね?」と話しかけたら、「みっちゃん、私、万博生まれだよ」って(笑)。
ヒャダ 表現(笑)。
──1970年生まれだから、久保さんより5つ年上ですね。
久保 でも、もう今はネットに期待ができない。私が「1人で生きよう」と思ってるからしょうがない。
ヒャダ 無理ですよ。そんな修行僧みたいな真似できるわけないです。
能町 「1人で生きる」と言っても、どうせ人は絡んでくるんです。諦めてください。
久保 でもやっぱり、いま一番自分のことが好きじゃない状態だから、そういう一番卑屈な時期に他人を巻き込んじゃいけないなって。たとえ仲良くなりたくても、そこで「自分の卑屈な話をしちゃいけない」というのを気にするようだったら、もう絶対会わないと決めたほうがいい。将棋でも会いたかった人と会う段取りしてないままだし、海野先生もずっと連絡取ってないままだし、(昨年番組ゲストに来てくれたぼる塾の)田辺さんともあれから連絡取ってないもん。
ヒャダ だろうと思いました。
久保 いっそ「また会いましょう」の段階で、友達と会わなくなるのがちょうどいいのでは、と思うようになって。
──ずっと知人のレベルにとどめておくということ?
久保 そう、まさに「ズッちじ」で。そして、その方が負荷がないのではって思って。
能町 誰の負荷?
久保 お互い。
ヒャダ うーん…………久保さんがそう思うならしゃあないっすね。でも……あえて「絶対」って言いますけど……向こうは絶対にそうは思ってないですよ。
能町 向こうは仲良くしたがってるのに。
──話したい話題がないわけじゃないんでしょ?
久保 ないわけじゃないですけど、私が今、「自分のこのメンタル状態で会うのよくないな」みたいな……。
能町 良くなるんですか、この後。
久保 ならないです。
──「このメンタル状態」というのは、前回の取材で言ってたセルフネグレクト(*)みたいな話ですか?
*前回、取材終わりにセルフネグレクトについて話をしていました。ここから回想シーンに入ります。ほわんほわんほわん。
***
(海外のどこそこに行ってみたい、という話で盛り上がっている最中)
久保 いま話聞いてて「いいな」と思ったけど、もうそこに行くのはいろんな面で無理だなって気持ち。
能町 どうしたんですか。ちょっと危ないですよ、久保さん。
久保 セルフネグレクトの項目見たら、「あれ? 全部当てはまってる」と思って。
ヒャダ そういうのって普通、「●個以上当てはまったら要注意」じゃないですか。全コンプなんですか。
久保 ゴミがたまり過ぎないうちに、頑張って捨てたりはしてる。でもお風呂の回数は明らかに減ってる。
ヒャダ それはセルフネグレクトですね。
久保 散歩しながらも、しんどいって思っちゃうし。別にリュウちゃんが私に無理をさせてるわけではなくて、私が家を出るのがしんどいという。
能町 それは大きな問題ですよ。
久保 だから私、セルフネグレクトなんだなって。
ヒャダ (スマホで調べながら)セルフネグレクト……「人との関わりを拒否する」。
久保 はい。
ヒャダ 「病気があっても、治療や介護を拒否する」。
久保 それはない。
ヒャダ 「壁に穴が開いていたり、生活が不便だと感じる環境に住み続けている」。
久保 それはない。
ヒャダ 思ったより大丈夫じゃないですか?
久保 よかった。
ヒャダ 「失禁しても、放置している」。
久保 それはない(笑)。
能町 いく人はそこまでいくんだ。それはもうセルフネグレクトどころじゃないですよね。
久保 私が見たセルフネグレクトのチェックリストと、レベルが違う。
ヒャダ 失禁しても、放置してないんでしょ?
久保 うん。
ヒャダ だったら大丈夫じゃないですか。
久保 それで大丈夫って言われても……(笑)。
ヒャダ (チェック項目を見て)郵便受けに郵便たまってないでしょ?
久保 まあ、ためるときはある。
ヒャダ 玄関周りや室内の床に小銭が落ちていませんね?
久保 落ちてない。でも確かに、ごみ屋敷動画を見てると、部屋の中にめちゃくちゃ小銭落ちてる。あの小銭、やっぱりセルフネグレクトの特徴なんだ。
能町 たまたま落として、もう面倒くさいって感じなのかな。
久保 私が見たチェックリストって、ごみ屋敷のセルフネグレクトチェックだった。「1人暮らし、または、1人で過ごす時間が多い」、イエス。「信頼できる友人や家族が周囲にいない」。
ヒャダ いる。
久保 いない。
能町 いないの?
久保 まあここは置いといて、「歯磨きや洗顔、入浴などをさぼっている」。これはよくあるけど……。
ヒャダ 歯磨きはしますよね?
久保 散歩するとき、マスクの中で口臭くなるのが嫌だから、絶対、歯磨きはする。
ヒャダ さっきから、ほぼ当てはまってなくないですか(笑)。ご自身のほうから当てはめにいこうとしてますよ。「私はセルフネグレクトなんだ」って。
能町 私が調べたチェックリストでやってみましょうか。
ヒャダ お願いします。
能町 「服を着替えない」。
久保 着替えない。3日、同じ服着たりしてます。
能町 そうなんだ。
久保 でも寝るときはパジャマに着替える。
能町 着替えてるじゃん(笑)。
ヒャダ で、次の日、また同じ服に着替えるってこと? それは「着替えない」に入らないですよ。
能町 「洗濯をしない」。
久保 1週間分たまるときがあって……。
能町 それはみんなあります。
ヒャダ 僕もあります。
能町 「風呂に入らない」。これは程度によると思うんだけどな。
久保 入らない。3日くらい入らないときがある。
能町 まあそれは入れていいか。次、「失禁を放置する」。
久保 またそれ(笑)!?
能町 「失禁を放置する」、必ずあるんだ。
久保 でも、ごみ屋敷動画を見てると、トイレ使わない人が多いよ。トイレが使えなくなったからとか、その場でペットボトルにしたりとか。
──そう言われると確かに、セルフネグレクトと密接に関わってる感じがしますね。
久保 でも聞いてたら、意外と当てはまってないなって。私、セルフネグレクトに寄せようとしてたかもしれない。ワナビー過ぎたか。
***(回想終わり)***
取っ組み合いの果てに
(今回のおしゃべりに戻ります。少し巻き戻し)
──「このメンタル状態」というのは、前回の取材で言ってたセルフネグレクトみたいな話ですか?
久保 そうですね。
能町 良くしたくもないんですか?
久保 良くはしたいけど。
能町 したいですよね。「良くしたい」という気持ちが芽生えるのを待ってられないから、もう良くするのは諦めようと思おうとしている?
久保 プレッシャーを自分にも他人にもかけてしまう感じがして。やり方がもう分からないし、ちょっと疲れてる。「自分を良くしたい」と思ってても、口ばっかりで結局何も形にできてない状態が本当に嫌でしょうがないから、そういう状態のときに平気なふりをして、「役に立つ友達ですよ」という演技をするのがつらい。
能町 役に立つかどうかで判断してないです、人は。
──世の中には「役に立つかどうか」で友達を作る人もいるでしょうけど、さすがに田辺さんは違うと思いますよ。
久保 私もそう思います。そういう人だからこそ、私が付き合っちゃいけないなっていう。
ヒャダ それなら、人の役に立てる人間になりましょう。
能町 いや、もう役に立ったんですよ。すでに。池袋のおいしい店に連れて行ったんですよね?
ヒャダ 確かに。
久保 その後が持続してない。
ヒャダ 何か役に立ちましょう!
能町 役に立つぞ、と思っていきましょう!
久保 できない、できない。役に立たない。
能町 松之助(*)を買っていきましょう。
*代官山にある「松之助 N.Y. 」。この日のゲスト・岡村靖幸さんがお土産にこの店のアップルパイを買ってきてくれて、取材中、みんなで食べていました。
ヒャダ 絶対喜ぶと思う。
久保 そりゃあね。絶対あんなの、智加が喜ぶに決まってるわ。
ヒャダ それじゃ今、LINEしましょうよ。
久保 それはいい。ここで背中押されないと行動しないという自分を、のちのち責めそうだから……。
能町 背中押されたら行動するんだから、背中押されたほうがいい。
久保 嫌だ(笑)。
能町 人に押されないと動かないなってときは人に押されたほうがいいです。動きたいんですよ、ほんとは。
ヒャダ LINEしましょうよ。
能町 ほんとは動きたいだもん。
久保 やめて、やんない、やんない(笑)。
ヒャダ 友達なんて唐突でいいんですよ、LINEなんて。
久保 やめて、やめて。
ヒャダ 「松之助N.Y.食べておいしかった」、写真、終わり。
久保 だって今まで連絡してないのに、何でそこで連絡するの?
能町 昨日、中学の友達から3年ぶりにLINE来ましたよ。そんな感じでいいんですよ。
ヒャダ 唐突でいいんですよ。
──重い話題でもないし。
能町 「久しぶり」だけでもいいんですよ。
久保 ノンノンノンノン……。
ヒャダ 「久しぶり。松之助N.Y.食べたけどおいしかったよ」。
久保 嫌だ、嫌だ。絶対嫌だ。このパターンもうやめて(笑)。もうこのパターンはいいの(笑)。私はもうこれから谷の底に深く沈んでいくんだから。
ヒャダ いい加減にしてください。
能町 いい加減にしてください。ほんとに。
久保 Wi-Fiが届かないところに行くんです。
能町 そんなことは無理なんです、あなたは。
ヒャダ そんな仙人みたいなこと、無理です。
久保 最近はLINEの文言を考えるのもしんどくって。
ヒャダ だったら僕たちで考えますよ。
能町 私、いま書いてます。
久保 やめて、私のChatGPTやめて。
──「友達じゃなくてもいい。知人でいい」と思っていても、この感じだともう知人ですらなくなるかもしれないですよ。
能町 そうです。「ズッちじ」って言ったの誰ですか。
ヒャダ 自分の言葉に責任を持ってください。
久保 もういい。私はみんなの記憶から早くなくなりたいの。
ヒャダ あなたね、今ちょっと疲れてるんですよ。
能町 疲れてるだけです。LINE送るのは、ただ体力がないだけです。
ヒャダ 今日のあなたは正直疲れてます。そりゃあ、あんだけ八面六臂の大活躍したら。普段しゃべり慣れてない人が、昼も夜も何百人の前であんなに大見得切ったしゃべりをしたら、そりゃ疲れますよ。
能町 いまグループLINEに送りましたんで、転送してください。
久保 しません。
ヒャダ (読んで)いいですね。めっちゃいい。
久保 しません。
能町 じゃあちょっとやりますね。
久保 やめて。ばか、ばか、ばか。
(久保のiPhoneを能町が奪おうとする。久保は暴れて抵抗。2人、取っ組み合いのような格好になる)
ヒャダ (取っ組み合いを見守りながら)田辺さんにLINEを送りましょう!
久保 (iPhoneを死守して)うえーん、このChatGPT、怖い(笑)。
ヒャダ 送ればいいのに。僕もそういう友達いますよ。ずっと連絡取ってなくて、急にLINEするような人。
能町 いやー、久保さんめっちゃ体力あるわ。
久保 ないよ。(ポチポチと文字を打ちながら)自分で文章考える。
能町 今回は体力勝負でしたね。
ヒャダ ヘレン・ケラーですよ(笑)。さっきの話の続きですけど、もう友達とも言えないかもしれないくらい、ずっと会ってない人がいるんですけど、とりあえずLINEだけはつながっておこうと思って。相手が人見知りなんで、LINE不精というか、嫌われてるのかなと思うくらい返ってこない。一応、返ってくるのはくるんですけど。相手は友達が全然いないと言ってたから、こうやってLINEだけでもつながっていようと思って。
久保 できた。(文面を朗読して)どう? 良くない?
能町 そのまま送っていい。
久保 「久しぶり」もなしで?
──そうしましょう。「久しぶり」と書くと久しぶり感が強調されちゃうから。
能町 そうだ、韓国のおすすめも聞かなきゃ。「久保さん、智加と親しいんでしょ?」
ヒャダ 「智加に聞いといてよ」。
能町 「久保さん、役に立つ」。
久保 私は智加と最後に会ってから、異常に韓国好きになってて、ハングルも母音ぐらいは覚えてきました。
ヒャダ それは別れた女の影響じゃないですか。
──本人知ったらうれしいと思います。語学まで勉強するなんて。
久保 (ついにLINEを送信して)今日は疲れた……。
ヒャダ でしょうね。昼も夜も大活躍で。
──お疲れさまでした。ところで、最後にちょっとお知らせがありまして。先に結論を言いますと……。
能町 まさか。
──この連載が終わることになってしまいました。
能町 きたかー。
ヒャダ 久保さんが今日のライブで「長くなる」って言ったからだ。
久保 ごめんなさい……。
──それは関係ないです(笑)。それで、次の収録が最終回ということになります。
久保 私のさっきのやつ、写真撮っとかなくていい?
──撮りましょう。
ヒャダ 宗教画みたい(笑)。
久保 こんなに人前で股を開いたことはない。今日は人生で一番、股を開いた。でもこの連載の間、私いろいろあったね。
──将棋から始まって、犬を飼い始めて。自動車の免許を取って。
久保 しかし今日は本当に疲れた。
能町 今日は久保さん大活躍過ぎる。最後は心理的負担も強めで。疲れたっていうけど、「まだこんなに動けるじゃん」って感じですよ。
久保 この年で、あんな取っ組み合いをする日が来るとは……そうだ、次の連載タイトルこうしよう。「最近、取っ組み合いをしてますか?」。
一同 (笑)
ヒャダ してねえよ(笑)。あなたたちだけです。
久保 あ、田辺さんから返信が来た。
「久保みねヒャダこじらせブロス」連載バックナンバーはこちらから。
【ライブ情報】
有観客&オンライン配信での開催
久保みねヒャダこじらせライブ
開催日:2023年6月24日(土)
昼の部:久保みねヒャダ3人のトークSP(会場限定)
夜の部ゲスト:ミラクルひかる(有観客&配信)
チケット詳細は公式ツイッターにて後日発表!
【番組情報】
ほぼ月一で不定期放送中
久保みねヒャダこじらせナイト
次回放送:2023年5月19日(金)
フジテレビ●深3:05〜4:05
*FODプレミアムでこれまでのライブを限定配信中(FOD限定トークあり)。
【プロフィール】
くぼ・みつろう●漫画家。代表作として『モテキ』『アゲイン!!』など。現在は『ユーリ!!! on ICE 劇場版 : ICE ADOLESCENCE』制作中。
のうまち・みねこ●自称漫画家。新刊『鉄道小説』(乗代雄介・温又柔・澤村伊智・滝口悠生・能町みね子共著/交通新聞社)が発売中。『私みたいな者に飼われて猫は幸せなんだろうか?』(東京ニュース通信社)、『ほじくりストリートビューザ・フューチャー』(交通新聞社)、『皆様、関係者の皆様』(文春文庫)、『私以外みんな不潔』(幻冬舎文庫)も発売中。
ひゃだいん●音楽クリエイター。J-POPからアニメソング、ゲーム音楽まで幅広く手掛ける。初のピアノ・ソロ楽譜集『ヒャダイン(前山田健一) / ピアノ・コレクション』、『ヒャダインによるサウナの記録 2018-2021 -良い施設に白髪は宿る-』が発売中。
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投稿者プロフィール
- テレビ雑誌「TV Bros.」の豪華連載陣によるコラムや様々な特集、過去配信記事のアーカイブ(※一部記事はアーカイブされない可能性があります)などが月額800円でお楽しみいただけるデジタル定期購読サービスです。
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