「予測不可能な映画が好き」だと気づかせてくれた『ニキータ』長濱博史 第2回【連載 アニメ人、オレの映画3本】

あのスパイダーマンの生みの親、スタン・リーとの交流でも知られ、『蟲師』シリーズや『惡の華』の監督としても高い評価を得るアニメーター、アニメーション監督・長濱博史さんの3本。1本目は、ヒーローについて教えてくれた『マッドマックス2』だったが、果たして2本目は⁉

取材・文/渡辺麻紀

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<プロフィール>
長濱博史(ながはま・ひろし)●アニメーター、アニメーション監督。1970年3月15日生まれ。大分県出身。1990年、マッドハウスに入社。『YAWARA!』(1989~1992年/日本テレビ系)などさまざまな作品に参加した後、フリーランスになる。
2005年には『蟲師』(フジテレビほか)にて初監督を務め、高い評価を得たほか、2013年の『惡の華』(TOKY O MXほか)ではテレビアニメ初の全編ロトスコープを採用し話題となった。そのほかの監督作品にOVA版『デトロイト・メタル・シティ』(2008年)、ヒーローアニメ『THE REFRECTION』(2017年/NHK総合)など。本作では、スタン・リーとともに共同原作を務めた。

自分が手掛けたアニメも、予告編で「ああ、こういう映画なんだ」と思われるより、「え? これは何なの?」みたいなのがいいんです。

ーー長濱さん、2本目はどんな作品でしょうか?

長濱 リュック・ベッソンの『ニキータ』(1990年)です。

好きな映画も、影響を受けた映画もたくさんある。そういうなかでこの作品は「オレって、予測不可能な映画が好きなんだ」ということに気づかせてくれた1本です。

――ということは、意外な展開だったということですね?

長濱 簡単に言っちゃえば、そうですね。

たとえば「昨日、コンビニ行ったんだよ」と話し始めたとするじゃないですか、それはとても日常的な会話ですよね。でも続けて、「レジでお金を払うとき、店員さんがオレの後ろを見ながら、“あのお…後ろの方はお連れさんですか?”って聞いてきたんだ。オレ、ひとりで行ったのに」と言うと、ザワザワしてくるじゃないですか。日常的だったはずの会話が徐々に歪み始めて、どこに話が着地するのか判らなくなる。

でも、この会話が「昨日、コンビニでヘンなことがあってさあ」で始まると、こっちも「ヘン」な方向に頭を切り替えて耳を傾ける。心構えが出来るので、その「ヘン」さにあまり驚かないかもしれないですよね? その差って、判ります?

――判ります! でも、そのためには予備知識ナシで観ないとダメですよね? 『ニキータ』の場合、私は予備知識がありまくったので、そういう驚きはなかったんですよ。

長濱 オレの場合は、リュック・ベッソンの新作くらいの知識しかなく劇場で観たので驚きの連続だった。冒頭、雨に濡れた石畳を、不良っぽい連中がヤク中のような男を引きずりながら歩いている。そこに真っ赤なロゴで「NIKITA」の大きな文字が入る。薬局に押し入り、警察が来てみんな殺され、ヘバってた娘だけが助かるんだけど、彼女は発砲して警官を殺害。裁判所でも大暴れして終身刑を宣告される。しかし、殺し屋という第二の人生を与えられる……オレは「え? そんな話なの、この映画」って。冒頭からは想像できないような展開だったんですよ。

――ベッソンの『レオン』(1994年)はどうでした?

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