今の自分とシンクロした『映画はアリスから始まった』川崎芳樹 第3回【連載 アニメ人、オレの映画3本】

佐藤真登による同名人気ライトノベルのアニメシリーズ化『処刑少女の生きる道(バージンロード)』。現在、配信中の本作の監督を務める川崎芳樹さんが選ぶ「オレの3本」、今回はその3本目。これまで黒澤明監督の『七人の侍』、そして湯浅政明監督の『夜は短し歩けよ乙女』を選んできた川崎さんの最後のチョイスは⁉

取材・文/渡辺麻紀

『七人の侍』川崎芳樹 第1回
『夜は短し、歩けよ乙女』川崎芳樹 第2回
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【プロフィール】
川崎芳樹(かわさき・よしき)●東京生まれ。アニメーション演出家、アニメーション監督。『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません』(WOWOWプライムほか)の第1期(2019年)、第2期(2020年)に副監督として参加。『処刑少女の生きる道(バージンロード)』(2022年/TOKYO MXほか)で初監督を務めた。

フィルムで映像を撮って観たときの僕の感動は、
130年前、アリスが感じた気持ちと重なるはず。

――さてさて川崎さん、今回は3本目です。これで最後になりますが、どの作品でしょうか?

めちゃくちゃ好きというより、今の自分に重なるということで選びました。『映画はアリスから始まった』(2018年)というドキュメンタリーです。

――7月に公開されたばかりの作品ですね。

そうです。映画の誕生を実際に目撃したアリス・ギーという女性のドキュメンタリーです。リュミエール兄弟が初めて映画を上映したとき、その内覧試写みたいなのが行われ、そこにのちに映画製作会社になるゴーモン社の社長の秘書として同席した人物ですね。

このときの試写というのは、映画という新しい技術を見せるためのものだったようなんですが、彼女はそのときすでに「ストーリー」を考えていたんですよ。おそらく、そこに同席したほかの男性たちは「技術」としてその映像を見ていたのに、彼女だけは「物語」としての可能性に気づいた。いわば、いまの映画の在り方に、いち早く気づいていたわけで、その先見性に驚いたんです。

――そのあと彼女は自分自身で物語としての映画を監督したんですか?

早い段階から何本もの短編を撮っていて、『キャベツ畑の妖精』など、それこそ1000本以上の作品を監督したようです。社長に「若い女性が何かばかみたいなことを言っているよ。まあ、やってみれば?」くらいの軽い感じで言われ、アリスは実行に移したみたいですね。

――行動力があるんですね。

ドキュメンタリーのなかでも言われているんですが、いまのユーチューバーのようなものだったのではないかって。最初はユーチューバーもばかみたいと思われて、冷ややかな目が注がれていたけど、一部の先見の明のある人は「これで何か新しいことが出来るのではないか」という可能性に気づいた……ちょっと似ているんですよ。

僕がこのドキュメンタリーにグッときたのは、アリスという女性に共感したからなんです。映画が初めて上映された瞬間に立ち会い、そこに映し出された映像に感動したその気持ちに共鳴したんです。というのも僕は、去年の秋くらいから8ミリと16ミリのカメラを買ってフィルムで映像を撮り始めたからなんです。

――趣味で、ということですか?

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