押井守のサブぃカルチャー70年「YouTubeの巻 その7」【2022年5月号 押井守 連載第42回】

当連載「押井守のサブぃカルチャー70年」が、押井さんがYouTubeを語る連載と化して早7回目。押井さんがよく見るという食べ物系YouTubeチャンネルの話題を通して、食べることや食べるシーンの描写についてお話しいただきます。そんな中、なぜか映画の「ラブシーン」についてに話が逸れてしまいます。押井さんの唸った「ラブシーン」とは。

取材・構成/渡辺麻紀

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<新刊情報>

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当連載がついに書籍化します。昭和の白黒テレビから令和のYouTubeまで、押井守がエンタメ人生70年を語りつくす1冊。カバーイラスト・挿絵は『A KITE』(1998年)などを手掛けた梅津泰臣さんが担当し、巻末では押井×梅津対談も収録。ぜひお手に取ってみてください。

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押井守/著
『押井守のサブぃカルチャー70年』
発売中
発行:東京ニュース通信社
発売:講談社
カバーイラスト・挿絵:梅津泰臣
文・構成:渡辺麻紀

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上手い役者は食うシーンも上手い

――押井さん、今回は食べ物系チャンネルの第二弾です。前回は『たっちゃんねる』という名古屋のおじさんの食べ歩きでした。今回、ご紹介してくださるのは、どんなチャンネルなんでしょう?

食べ物系にはホントいろんなチャンネルがある。栄養学的、衛生学的な真面目なものから料理チャンネルも当然ある。多いのは大食い系なんだけど、私は好きじゃない。やっぱり、(食べ方が)きれいじゃないし、そもそも美味しそうじゃないでしょ。食べているというより流し込んでいる感じで、はっきり言って苦行だからね。

人が何かを食べる姿が好きなんですよ、私は。自分の作品でもほぼ、食べるシーンを入れる。人間のそういう姿になぜか惹かれてしまうんだよね。

――宮崎(駿)さんの作品も食べるシーン、結構ありますよね。

宮さんも好きですよ。『千と千尋の神隠し』(2001年)のおにぎりとかね。いつも言っているけど、宮さんはおにぎりとか蕎麦とかパンとか、シンプルな食べ物を食べる表現が天才的に上手いんですよ。なぜかと言えば、当人が食いしん坊で、そういう食べ物が大好きだから。私もそうだからよくわかる。ただ、そういうシーンを作画するのは大変難しく、Aクラスのアニメーターじゃないと絶対に上手く描けない。

――『千と千尋』で、千尋の両親がブタになり春巻きを頬張るシーン、担当のアニメーターが宮崎さんに何度もダメ出しを喰らったと当時、話題になってしまたよね。

メイキングのドキュメンタリーでやったんだけど、あれはちょっとやらせっぽい(笑)。でも、いまどきのアニメーターは食べることに興味がないと言われているからね。それは何を意味しているかと言えば、人間に興味がないということ。興味があるのはキャラクターを動かすことで、女の子がキョロキョロしてる姿は喜んで描くからね。それは彼らが、人間性等を表現するのではなく、記号化することからスタートしているということになる。だから、最近のアニメには食事シーンが極端に少なくなっているんですよ。

――興味がないだけじゃなく、描くのがめんどくさいという理由もありそうですね。

あると思うよ。でもさ、アンパンを頬張ったり、蕎麦をすすったりするのは、キャラクターを表現する上で大切。食べる姿でその人となり、キャラクターなりが出るんだから。泣いたり笑ったりするシーンと同じ。純然たる表現のテーマなんだよ。『千と千尋』の泣きながらおにぎりを食べるシーンを見ればわかるじゃない? あれは本当によく出来ている。さすが宮さんです。

――あのシーンは泣けますよね。

年寄りと子供じゃ食べ方が違って当然だし、シチュエーションも大事。『コナン』(『未来少年コナン』<1978年>)のスープを飲みながら、パンを割り、みんなとワイワイいいながら食べるシーン。『ルパン』(『ルパン三世 カリオストロの城』<1979年>)のルパンと次元の、奪い合いながら食べるミートボールスパゲッティとかね。

そういうのは、どのシチュエーションで何を食べるかが重要。演出の問題であると同時に表現の問題なので、私はいつも注目しているんです。

――でも押井さん、最近はアニメだけじゃなく実写にも食べるシーンが少ないんじゃないですか? 若い女性タレントのなかには、食べるシーンはNGという人もいると聞いたことがあります。

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