あっという間に2021年も残り1/4、歳を取るたびに１年が早く感じると言うが、コロナによる影響もあってか、今年はよりそのスピードが速まったような気がする。個人的な仕事で言えば2021年は、舞台『マシーン日記』、V6『僕らはまだ』ミュージックビデオ、キリン一番搾りCM数本、電気グルーヴドキュメンタリー（YouTube）を作ったが、一応の本業であるドラマや映画はなく、いつもよりは暇な時間が多かった。
とはいえ、まだ内容を発表できない数年前から作っている某アニメ作品が仕上げの大詰め段階に入ったので、そのチェック作業に追われたり、同じく数年前に企画を立ち上げた某配信系ドラマの脚本を書いたりしていたのだが、それでも長期拘束の仕事がなかったので、特に夏の期間はチェック作業や脚本執筆の合間に、久しぶりにたくさんの映画やドラマや音楽や本、漫画、YouTube動画などを大量に浴びることができた。今回はその中でインパクトのあった作品を紹介するという、この連載の本来の趣旨である【ポップカルチャーレコメンド】に立ち返ってみたいと思います。
空気階段単独ライブDVD『anna』
先日のキングオブコント2021の優勝で、一気にお笑い界のスターダムを駆け上がった空気階段だが、今年行われた単独ライブ『anna』を観た者であれば、その結果は当然どころか、「優勝しない訳がない！」だっただろう。オレはライブ配信で観ていたのだが、配信でこれだけ面白いのだから、生で観たら腰を抜かすほど笑い転げていたのではないかと思うくらい笑った。１本１本のネタのクオリティはもちろんだが、ラストのネタでそれまでのネタの一部分がインサートされ、観終わるとトータルで１本の作品になっているという全体構成も見事だった。いや、この構成はお笑いライブではよくあるのだが、『anna』はそのパターンを踏襲しつつも最後に、彼らのコントとは別のもう一つの柱である“ラジオ”（TBSラジオ『空気階段の踊り場』）を使うところがもう……エモかった!! オレは知り合いの16歳の女子高生から２年前に「踊り場がヤバい！ 空気階段は絶対に売れるから!!」と聞いて、それ以来のリスナーなのだが、キングオブコント優勝をいちばん喜んでいて、誇らしい気持ちになっているのは踊り場リスナーだと思う。
そういえば、キングオブコントで１本目のネタが終わった後、松ちゃんがコメントをしている時に、左後ろに座っていた観客の女性がマスク越しでもわかるくらい号泣していたのだが、あのコは踊り場リスナーに違いない。ちなみに１本目のネタは『anna』では演っておらず、この夏に作った新作なのだが、あのネタを初めてかけた若手芸人との合同ライブの時は（これも配信で観た。ヒマか！）、まだ荒削りで「設定はメチャクチャ面白いけど勢いだけだなあ」という印象だった。なので、キングオブコントの１本目が始まった時は「うわ、これで行くんだ……」と不安だったのだが、完全に仕上げていて笑いながらも鳥肌が立った。一緒に観ていた女子高生は「はい！ 優勝!!」と手を叩きながら、思いっきり涙を流していた。
２本目の『メガトンパンチカフェ』は『anna』でも演っているのだが、ある重要な設定がキングオブコントでは端折られていた。だがそれは『anna』全体で生きる設定なので、まったく問題はなかったし、あんな飛び道具というかトリッキーなネタで爆笑をかっさらい、優勝を決めたことに、また鳥肌が立った。いやもう本当に嬉しい。
空気階段のことを語り出せばキリがないのだが、思い起こせばオレが初めて空気階段を意識したのは、NHK大河ドラマ『いだてん』を撮っている時に、スタジオの喫煙室でもぐらを見かけたことだった。その年のキングオブコント2019の直後だったので、「あ、もぐらだ」と思ったのだが、もぐらはタバコをスパスパ吸いながら携帯電話で誰かに謝っていた。「いやすいません！ 来月には必ず！ はい！ 必ず!!」今思えばあれは借金をしている相手と話していたのだろう。電話を切って溜息をつき、出て行こうとするもぐらはタバコを持ったままで、「あっ」と言うと、「ああ！ すいません!!」とタバコをもみ消したのだが、だらしないヤツあるあるで完全に火を消さないまま出ていってしまった。「なんだよもう……」と、オレはもぐらのタバコの後始末をしながら、ヒョコヒョコ歩く後ろ姿に舌打ちをしたのだが……今となってはそんなことすら嬉しい!! っていうか自慢!!!
空気階段の好きなところはたくさんあるけど、こいつら信用できるよなあ！って思うのは舞台の出囃子が、暗黒大陸じゃがたらの『タンゴ』っていう!!! じゃがたらだぜ。信用しかできないよ。キングオブコントで空気階段を好きになった皆さん、ぜひライブDVD『anna』を買いましょう。
