押井守のサブぃカルチャー70年「円谷プロの巻 その4」【2021年4月号 押井守 連載第18回】

今回は円谷プロダクションの話題、その4。『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』では特に実相寺昭雄監督作品がお気に入りだったという押井さん。なんと押井作品にもその影響が?
取材・構成/渡辺麻紀

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オープニングのクレジットの最後に「実相寺昭雄」とあれば「やったー!」に

――前回は特撮ヒロインについて語っていただきました。今回は『ウルトラマン』(1966~1967年)と『ウルトラセブン』(1967~1968年)です。

『ウルトラマン』は、思いのほかよかったと言ったと思うけど、それは設定のよさでもあった。科学捜査隊の隊員のひとりが戦いのなかで死ぬんだけど、そこにM78星雲からゾフィが現れ「君は死んじゃいかん。ウルトラマンの魂を君にあげよう」みたいなことを言って、その隊員が蘇ってウルトラマンになる。ちなみに、私が好きだったのは、ウルトラマンよりゾフィのほうだったんです。
で、変身するときにはフラッシュライトのような光が発せられて、3分間だけウルトラマンになって戦うことが出来る。タイムリミットが近づくと胸の赤いライトがピコピコと点滅し始める……。
こういう設定がもう大発明なんですよ。とりわけ3分というタイムリミットを創り出したところ。TVの尺にも合っているし、裏を返せば怪獣とのアクションシーンは3分だけでいいということ。これは画期的なアイデアですよ。
とはいえ、カラータイマーが点滅し始めると、ウルトラマンの必殺技スペシウム光線が出ることを意味しているんだけど、子供心にも「だったら最初から必殺技を使えよ」とは思っちゃったけどね(笑)。

――それはもう、エンタメあるあるですよね。

そうそう(笑)。力道山も伝家の宝刀の空手チョップを出すんだったら最初から出せばすぐに試合も終わって楽なのに、なぜか最後まで出さない。水戸黄門も同じ。最初から印籠を見せれば、誰も被害に遭わずにすむのに、やっぱりギリギリまで出さない。

――分かります!『ロード・オブ・ザ・リング』(2000~2003年)のラストも、最初からワシさんに滅びの山まで連れて行ってもらえば、フロドもこんなに苦労しなかったのでは? と思っちゃいましたからね。

だからこれは、この手のドラマの永遠のテーマなんだよ……ということはさておき、子供っぽい主題歌やチープなガジェット、ダサいコスチュームと同じようにダサいウルトラマンスーツ等、あからさまに子供向け。必殺技だってスペシウム光線とドロップキックだけだし。ところが、これほどダメダメでも見るべきエピソードはあったんです。それは実相寺昭雄監督の手掛けた作品です。
当時、事前のTVの情報は新聞のラテ欄くらいしかなかったんだけど、そこに監督の名前は載ってないじゃない? だから、そのエピソードの監督が分かるのはオープニングのクレジットの最後なんですよ。そこに「実相寺昭雄」とあれば「やったー! 今日は凄いぞきっと」になる。実際、彼が手掛けた作品はほかのエピソードとはまるで違っていた。発想も優れていて、演出も面白く、カメラワークにもこだわりがあった。そもそも非常にあか抜けている。毎回、彼の手掛けた作品には、何か新しいことをやりたいというチャレンジ精神があったんです。子供向けだからという風には考えていなかったと思うよ。

――どんな演出なんですか?

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