今回は円谷プロダクションの話題、その3。ウルトラマンの素晴らしさの要素には、ストーリー性やキャラクターといった作品性のほかに、「おねえさん」の存在があったようで、押井さんはいつも以上に力んでおります。
取材・構成/渡辺麻紀
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桜井浩子さんが出演した『曼陀羅』公開時は何度も劇場に通った(笑)
――押井さん、今回は『ウルトラマン』(1966~1967年)の2回目です。前回は前夜祭についてお伺いしましたので、その本編のお話をお願いできればと思います。「蓋を開けてみると、思いのほかよかった」とおっしゃってましたよ。
そう、思いのほかよかった。
一番よかったのは、地球上では3分間だけウルトラマンとして戦うことが出来るという設定。これは画期的アイデアだった。
――この設定だけは、日本人なら誰でも知っているんじゃないですか?
そうそう。そして、もうひとつは桜井浩子さんです。私にとっての初の特撮ヒロイン。『ウルトラマン』は彼女抜きには語れないんです……。だから今回は、特撮ヒロインについて話しましょう!
――は、はあ……。
かつては特撮ヒロインの系譜的な本も出ていたし、彼女たちの姿だけを集めた2枚組のLDもあった。私の(空手の)先生は酔うと必ずこれを取り出し、特撮ヒロインの話をし始める。おねえさんたちが網羅されているマニア垂涎のLDですよ。
――特撮ヒロインって、もしかして『007』シリーズ(1962年~)のボンド・ガールみたいな存在なんですか?
そうだよ。いまだにそういうおねえさんだけを追いかけているおにいさんもいるからさ。で、私の場合は『ウルトラマン』の桜井さんなわけです。フジ・アキコ隊員。
彼女はのちに実相寺昭雄の『曼陀羅』(1971年)という映画でいきなりフルヌードになっちゃった。しかもくんずほぐれつの濡れ場もやっている。これはもう大衝撃。特撮ファンにとっても、私にとっても大衝撃。私のフジ・アキコ隊員が! という感じでさ。
――ということは、もう観てられなかった?
いや、何度も劇場に通った(笑)。当時はビデオなんてないから、何度も何度も劇場に通うしかなかったの! 実相寺監督だからというより、桜井さん見たさだったからですよ!
当時の彼女はガリガリに痩せていてスリム。ショートカットがよく似合っていた。眉毛が濃く、エラも張っていたせいか、ちょっと男性的な顔立ちだったので、いわゆるヒロインの系譜とはズレていたイメージだった。もしかしたら実相寺監督はその辺を気に入って起用していたのかもしれない。そもそも実相寺さんはスレンダー系が好きなんだけどね。
――ああ、この顔は私も憶えていますね。
そのあと、桜井さんは実相寺監督のATG映画の準レギュラーみたいな立ち位置で出演していたんだけど、私が読んだ彼女のインタビューによると、自分は実相寺監督の想い人というのではなく、言ってみればイメージガールのような存在。それ以上は期待されていなかったということが分かり、当時はかなりへこんでしまったって言っていた。
彼女は、本格女優を目指して転身をはかり、脱ぎまくったんです。でも、結果としてはそれ以上にはなれず、ほぼ女優業を辞めて円谷の社員になっちゃった。女優を辞めたと同時に、かなりふくよかになっちゃったけどね。
――社員って、そういう選択肢もあったんですか?
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