ゲームマスター山田の招待【岩井秀人 2020年6月号 連載】

岩井秀人がワークショップ参加者や劇団員に「ひどい目に遭った体験を教えてほしい」と取材して聞いたエピソードを、体験者自らが脚本化し、自ら演じる「ワレワレのモロモロ」という企画がある。この連載は、岩井がライフワークとしているその企画の番外編として、岩井が収集したエピソードを、岩井のフィルターを通して文章化したものである。
*体験者の承諾の上、文章化しています。
*人によっては、一部ショックを感じるかもしれない表現があります。

 

前田が小学2年生の時、同級生に山田という男がいた。

体格も良く勉強も出来、クラスでも人気があり、女子にもモテていた。一方、前田はというと、エリアの違う保育園に通っていたため、知り合いがいない状態で入学したので、友達もいなかった。が、やがて友達もでき、人気者の山田とも遊ぶようになった。前田から見た山田像は、「ゲームマスターをやらせると素晴らしい」というものだった。時は1980年代。ファミコンがまだ発売されなかったあの時代は、「人生ゲーム」を始めとしたボードゲームで皆、遊んでいた。そういったボードゲームのプレイヤー達を取り仕切り、時にストーリーを語り、時に銀行係となる「ゲームマスター」は、やはりそのゲームの面白さを左右する重要なポジションであり、山田はそういった「場の空気を読み」「盛り上がりを作る」ことにも長けていたのだろう。そういったことからも山田がクラスの人気者で、女子にもモテていたことも納得がいく。

そんな山田からある日、前田は遊びに誘われる。
「ゲーム大会やろうぜ」と。
名ゲームマスターから直々に「ゲーム大会」に誘われたと言うことはつまり、前田もまた「名プレイヤー」と受け取っても構わない。前田は喜んで参加の意を伝え、山田の家へと向かった。

4人ほどの面々が集まると聞いていたが、家には山田以外いなかった。みんな来れなくなった、と山田は言う。
ボードゲームが出来ない状況になりはしたが、2人きりで電子ゲームをやっていると山田が、喉乾かん?と立ち上がった。特に喉が渇いていた訳ではなかったが、あの山田からの申し出である。断る理由はない。前田が着いていくと山田は玄関で立ち止まり、言った。

「おしっこ飲む?」

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