植物に覆われたあの店の中は一体? 気になる路上園芸な店を突撃取材!

突然だが外に出て、周囲をぐるりと見渡してみてほしい。どんな街にでも必ずと言っていいほど、民家の軒先に鉢植えが並んでいたり、道の隙間から植物が顔を出していたりするのではないだろうか。

私はそんな、路上空間で行われる園芸活動や路上の隙間に生きる植物のはみ出しっぷりを愛で、「路上園芸」と呼んで勝手に見守っている者だ。

鉢植えをことごとく枯らしてしまう私が、突然降って湧いたように「植物」に興味が湧くようになったのは20代半ば。地方から上京し、都会で暮らしていく中で無意識な自然回帰だったのか。当時はちょうどSNSが流行り始めた時期。様々な情報や価値観で日々踊らされる中、「そのままの状態で美しいもの」を求めた結果にも思う。

最初は植物で空間を「装飾」する道を志し、デパートの屋内庭園や植木を手入れする時給900円のアルバイトをする傍ら、1年間職業訓練校に通い「園芸装飾技能士」なる資格を取得した。

そんな折、軒先や室外機の上など、街角のちょっとした空間で住民の方が行う園芸の姿が目にとまるようになった。

 

鳥が巣を作るようにブロックや石などが寄せ集められ、色とりどりの花を支える

ひとたび気にしてみると路上空間は、人が好き好きに育てたり、勝手に育ったりした植物で溢れている。配置やデザインにこだわりが感じられるものもあれば、植物の生命力にまかせた野性味溢れるもの。時には、街路樹の植え込みやガードレールといった公共空間が私的に緑化されていることもある。

ガードレールにネットが張られ緑化。新宿の片隅にて。

植物は生き物。環境が合えばとんでもないサイズに成長したり、アスファルトのスキマにずんずんとはみ出したりし、「自然ってスゴイね★」なんて無邪気に言ってられないくらい、心ざわつく状態になったりもする。

しかし、あらかじめ決められた枠に簡単におさまらないアウト・オブ・コントロールっぷりや、周りの景色を変幻自在に塗り替えていく感じに、どこかすがすがしさを感じないだろうか?

トロ箱から土石流のように流れるサボテン。実もついており「ここで子孫を残したる」という確かな意思を感じる。

いろんなことをチマチマ気にしながら生きている自分にとって、路上園芸の存在はある意味、元気をチャージする源にもなっている。

中でも圧倒されるのが、植物にもじゃもじゃと包み込まれた店や家だ。そういえば近所にツタに覆われた家があるな、という方もいるのではないだろうか。

都市の一角に突然現れた異世界のような空間に、私は心ときめき、同時に思う。

「中はどうなっているんだろう?」と。

そこで今回、東京で見つけた秘密の花園のような店の扉を開けてみた。

取材&文/村田あやこ 編集/西村依莉


巨大ウチワサボテンに抱かれて…… 下北沢のラテンな理容室

下北沢と笹塚の間あたり、玉川上水の緑道沿いにある青い壁が印象的な理容室「ロゼ北沢」

青い建物に巨大サボテン。異国情緒満点。

店先の植え込みから大きく成長したウチワサボテンが、青い建物を下からじわじわと侵食している。6月のこの日、あちこちに花芽が出て、黄色い花が咲いていた。

店名にちなんだバラの看板とレトロなサインポールがキュート。

青い壁に大きなサボテン、そして黄色い花。南米かアフリカにでもやって来たかのような、鮮やかな色の組み合わせが楽しい。

ウチワサボテンの幹はすっかり木質化し、限られたスペースからうねるように上昇している。今にも動き出しそうな迫力に、「植物」というよりは新種の生き物を見ているような気持ちになる。

す、すごい……!

要塞のごとく入口を護るサボテン。

「営業中」の札を見て中を覗いてみたところ、ちょうど客がいないタイミングのようだ。おそるおそる扉を開けたところ、鏡のほうを向いてなにか作業中の店主の姿。

「あのぅ、表のサボテンについてすこしお話を伺いたいのですが……」

おずおずとお願いしてみたところ、ゴルフのクラブを持ってこちらを振り向く店主。ひ、怒られる!?確かに怪しいですよね!すみません!

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