推し問答!【2人目:仮面推し活経験者 野田春香さん後編】「時にオタクは推しを隠してた Because I love you」

様々な人に「推し」や「推し活」について語ってもらう「推し問答!~あなたにとって推し活ってなんですか?」、第2回のゲストは編集・ライターの野田春香さんです。なお、この記事は後編になります。

 

前編はこちらから

https://tvbros.jp/oshimondou/2023/03/24/65584/

 

取材&文/藤谷千明 題字イラスト/えるたま

 

 

前編では、「好きなものを好きだと言えなかった」学生時代のお話をしてくれた野田さん。

いまや「好きなものを好きだと言える」というか「どんどん言うべき!」みたいな時代になりました。ファッション誌も例外ではありません。コロナ禍で人と気軽に会えなくなったこともあり、巣ごもり消費からの「推し活」ブームを背景に、「誰かと素敵な時間を過ごす人」ではなく「一人の時間を楽しめる人」がイケているとされる時代に? ちなみに、「イケてる」って今でもイケてる言葉なんでしょうか……? すみません。時代についていけなくて。

 

とはいえ、自分としてもファッション誌での「推し活」の取り扱い方にモヤモヤしたこともあります。ブームが終わったら、またデート特集に戻るのかしら? それとも? そんな、ファッション誌と「推し活」の微妙な関係について、伺いました。

 

 

インスタ映え=「“誰か”と素敵な時間を共有している」

 

藤谷 いわゆる「推し活」というものは、かつてはファッション雑誌の世界では「イケてる」ものではなかったと記憶しています。少なくともコロナ禍より以前は、モデルさんやタレントさんが「私、●●推しなんです」的な単発企画はあったとしても、ここまで推しカルチャーがもてはやされることはなかったかと。最近はもう表紙にガンガン「推しのために可愛くなる」とか「推しの見つけ方」なんてキャッチコピーが表紙に載ってるファッション誌もありますし。野田さんは編集者として現場に変化を感じていますか?

 

野田 やはりコロナ禍が決定的だったと思います。2010年代のトレンドを作っている人々といえばインスタグラマーでしたよね。人気ブランドの服を着て、話題のカフェやレストランに行ったり、週末は友達と旅行したり……、つまり「恋人や友達、“誰か”と素敵な時間を共有している人」がよしとされる時代でした。

 

藤谷 「インスタ映え」って、単にきれいな写真を撮るのではなく、「“誰か”と素敵な時間を共有している」ということなんですね。言われてみたら、たしかにそうだ!

 

野田 でも、コロナ禍になるとその前提が崩れてしまったじゃないですか。

 

藤谷 「“誰か”と時間を共有」することが「(まん延防止の意味合いで)よくないこと」とされてしまう時代がくるなんて。

 

野田 そうなったときに注目されたのが、自分だけの世界を持っている人や、没頭できる趣味を持っている人でした。ある意味、形勢逆転というか。

 

藤谷 人気インスタグラマーやインフルエンサーの方のストーリーで「ネトフリで『鬼滅の刃』にハマってる!」みたいな投稿を何度も見た記憶があります。

 

野田 コロナ禍に入って半年くらいだったかな? 私は普段から会社員の女性に取材をすることが多いんですけど、そこで女性たちが「今はカルチャーを感じるファッションの人が目立つようになった」と言い始めたのをよく覚えています。

 

 

藤谷 カルチャーですか。たとえば「量産型ファッション」(※藤谷はアイドルのファンの「量産型ファッション」を指している)とか?

 

 

野田 いや「量産型ファッション」ではないです。(※野田さんは女子大生や若い女性の「量産型ファッション」を指している)

 

 

藤谷 ……。

 

野田 ……。

 

藤谷 あっ、すみません。今、すれ違いが発生していました(笑)。

 

野田 オシャレなんだけど、推しのキャラがプリントされているTシャツを着ているとか、そういうことです(笑)。

 

藤谷 失礼しました。たしかに、一昨年くらいにそういうファッション誌の特集の記事を読んだことがあります。

 

野田 やっぱり職場でも「あの人いいよね」って言われるのが、そういう人に変わってきたそうです。その話を聞いて、衝撃を受けたんです。「友達が多い人」「皆と楽しくやれる人」ではなく「一人で何かを楽しむ力のある人」が注目されるようになったのだと。もう一点、コロナ禍以前は読者モデルの方に「趣味は?」という質問に「買い物」と答える人は多かったんです。

 

藤谷 「買い物=ネットショッピング?」みたいになってしまうのでしょうか。ユーチューバーのような「通販で爆買い」も、また違うジャンルの話でしょうし。

 

ファッション誌の「推し活ブーム」は価値観の変化によるもの

 

野田 そうなると、「買い物」はモデルとしての個性としては弱くなってしまうのかなと。そうなると「自分を紹介できるなにか」を探さないといけなくなってしまった。

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