ちゃんみながニューシングル「TOKYO 4AM」でカムバックした。J-POPに振り切った前作『ハレンチ』から打って変わって、今作はBlack Eyed Peasを感じるような乾いたギターをフィーチャーしたR&B。今回はリリックの意図やラップの構成、サウンド感など楽曲の制作過程を話してもらった。また9月から始まる本格的な韓国での活動への意気込みも聞いた。
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取材&文/宮崎敬太 撮影/tAiki
目次
LAの空気を吸って、向こうの人たちと触れ合ったら自然とこういう感じの曲が書けた
—「TOKYO 4AM」はアメリカの西海岸っぽい乾いた音のギターが印象的で、解放感あるR&Bだと思いました。
ひとつにはこの曲をLAで制作したことが関係してると思います。めちゃ久しぶりの海外だったんです。パンデミック以降初めて。だから2年ぶりか。私、これまで2年も同じ国にい続けたことなくて。少なくとも1年に2回は別の国へ行って仕事してました。
ーー前作『ハレンチ』がJ-POPにフォーカスした作品だったのと、コロナ禍が以前よりも落ち着いてきた2022年夏はちょっと羽を伸ばしたい気持ちだったので、「TOKYO 4AM」のフィーリングにはすごく共感できました。
私も『ハレンチ』を作るために東京のバイブスとシンクロしたし、物理的にも缶詰でしたし。でも意識がグーっと東京に向きすぎちゃって、一時期何も書けなくなっちゃったんです。それもあって、とりあえず一旦東京出ようと。だからといってLAで曲が書けるかはわからなかったけど、向こうの空気を吸って、向こうの人たちと触れ合ったら自然とこういう感じの曲が書けた感じですね。
ーー「TOKYO 4AM」のリリックはどのように生まれたんですか?
LAで東京の歌を書くことに意味があると思ったんです。ずっと東京にいた時はわからなかったけど、離れてみると東京は私の命が散らばった街だなって感覚になれて。
ーー“命が散らばった”というと?
命って時間だと思うんです。私は東京でとても長い時間を過ごしてるから、その意味で自分の命が散らばった街だと感じています。改めて“東京大好き”って思えました(笑)。
日本語は柔軟性のある言語だからこそ、物語や書き手の精神性が重視されてる
ーー英語と日本語の歌詞が半々なのに、同じグルーヴでラップされてるのがすごいと思いました。言語が違うとラップの書き方、ライミングのしかたも変わってくると思うのですが……。
そうですね。日本語って母音の数が少なくて、発音にもそんな制約がないと思ってて。例えば、英語だと“Wake up my heels in my hands”というラインの後は、“〜my friends”、“〜my plants”みたくしっかりライミングしたくなる。でも日本語だったら“いつもどおりの悪い癖でも“、“会いたくなるの”、“シンデレラ”、“ロックスター”とまったく(韻を)踏んでなくても、崩して歌うテクニックでライミングしてるように聞かせられる。英語や韓国語だとちょっとした発音の違いでまったく別の意味になっちゃうんですよ。だからこそ、日本語の歌詞は内容が重要だと思ってます。
ーーそれはちゃんみなさんがトリリンガルだから気づけたことですか?
それもあるけど、この「TOKYO 4AM」はLAと韓国で20曲以上制作した曲の中の1つなんですね。いろんな国の人たちと出会って、いろんな言語に触れて、あらためて日本語ってすごい独特なんだなって思ったんですよ。柔軟性のある言語だからこそ、日本では物語とか書き手の精神性が重視されてるのかなって。実際、私の好きな曲や、人気がある曲ってどれもそこに当てはまってる気がしてます。
ーー「TOKYO 4AM」は東京を舞台にしたラブソングですね。
アウトプットはラブソングですが、この曲はファンや制作で出会った大切な人たちがずっと心の中にいる状態を歌った曲です。
ーーなるほど。これまでのお話につながりますね。LAから東京を思って書いた曲で、しかもラブソングの物語性を借りることで歌詞に疾走感やカタルシスが生まれてる。さらにルーツをレペゼンする精神性も込めれてる。
ですです。
ーー作詞で苦労したラインはありますか?
サビの“Tokyo 4am”の後になんて言うかはすごく悩みました。すごく感情的な言葉が良かったんですね。一番恋しくて、会いたくて、叫んでる感じ。それで“恋しいよbaby”ってすごくチープな日本語を使ったんです。でも単語だけ聞くとあまりにもチープだからすごく迷いました。でも最初の英語のヴァースで“When I’m drunk I miss you(酔っ払うとあなたに会いたくなっちゃう)”を使ってるからいけるかなって。明け方に酔っ払って電話してると、こういう感情しかない言葉遣いになるし(笑)。
ーー(笑)。
あと“君の周りにはシンデレラ/私は君に愛を歌うロックスター”ってとこもすごく好き。「美人」でも書いたけど、私は昔から“美しい”という枠に苦しめられてきたんですよ。だから自分らしい“シンデレラみたいに上品じゃないけど、あたしはロックできる”というステイトメントを表現したフレーズを入れられたのはものすごく嬉しかったですね。
ちゃんみなが韓国で活動する理由
ーーいよいよ韓国での活動がスタートするそうですね。
凄く楽しみです。活動曲はほぼ完成してて。ASH ISLANDが客演で参加してくれてます。
ーーえ、すごいですね!
彼の歌が大好きなんですよ。あと私と同じように韓国版の『高校生RAP選手権』みたいな番組(『高等ラッパー』)出身で年齢も私の一個下。そういった経緯もあってオファーをしたら快諾してくれました。その曲はLAで制作したんですが、まず親睦を深めるためにおしゃべりしたんですね。ほんと他愛もないこと。「いつ来たの?」から始まって、血液型とか、心理テストとか。あと韓国と日本の恋愛観とかも。韓国語のスラングとかも教えてもらいました。日本よりも表現のバリエーションが多くて面白かったです(笑)。
ーー同世代で繋がれるのはデカいですね。
9時間くらいずっと喋ってました。人柄がすごく似ていたり、共感する部分が多かったです。私が韓国で活動する理由も話して。彼もしっかりと受け止めてくれました。
ーーちゃんみなさんが韓国で活動する理由とは?
うーん。私としてはシンプルにちゃんみなの韓国活動を見てもらいたい気持ちもあるから。今から話すことにあまりとらわれてほしくはないんですけど、韓国は私が生まれた国なんですね。音楽的な栄養もたくさんもらったので、韓国でも認められたいというのは長年の夢だったんです。
ーーK-POPからも影響を受けたと公言されてますもんね。
はい。日本で活動を始めて、ようやく自分というものを作れて、やっと韓国でも活動できる状態になったという感じ。
ーーハングリーですね!
楽しみなんですよ、自分がどうなるのか。いろんな人にああでもないこうでもないと言われて。日本と韓国は全然文化が違うから、正直まったく想像がつかない。「ダサッ」って言われる可能性だってめちゃくちゃある。「おりゃー」って感じで向こうに行きますけど、ダメだったら速攻で帰ってきます(笑)。
おこがましいですけどG-DRAGONに“ありがとう”と伝えたい
ーー確かに、日本と韓国ってまったく価値観が違いますよね。というか、日本ってめっちゃ独特だなっていうのはすごく思います。
それはありますねー。いろんな国へ行くと、日本って凄く気遣いの国だと思いました。あと察する国。韓国だけじゃなく、海外には誰かに気を遣うという概念が少ない気がする。自分のことは自分でやる。嫌なことは嫌と言う。日本は「察してください」じゃないですか。私にもその感覚があるから、これまで海外では「なんでそんなひどいこと言うの?」みたいに感じることも結構ありましたもん。日本って繊細で優しい国なんですよ。こういう感覚を歌詞にしておもしろがってもらえたらいいですよね。
ーー韓国の音楽番組には出るんですか?
まだ何も決まってないけど出してもらえるなら、出たいです。バラエティとかも。
ーー『知ってるお兄さん』(韓国の有名バラエティ)に出演するちゃんみなさん、想像しただけで最高です(笑)。韓国で共演したいアーティストやタレントさんはいますか?
いっぱいいます。でもいつか会いたいと強く思うのはやっぱり、G-DRAGON。おこがましいですけど……。10年、20年先でもいいから、いつかG-DRAGONと仕事したい。彼と出会って衝撃を受けてなかったら、私は今もクラシックのピアノを弾いてたと思います。G-DRAGONが作詞作曲して、ラップして、ダンスも踊ってたから、私も全部やらなきゃって思うようになりました。というか、当時はK-POPのことを知らなかったので、みんなやってると思ってたんです。ちゃんみなのルーツなんですよ。ちゃんみなを産んでくれたお父さんに近いです。
ーーK-POPのシステムがつまびらかになったのは最近ですもんね。
そうです、そうです。共演というか、シンプルにありがとうと伝えるだけでも十分なんですけどね。でもやっぱり夢は大きく持っていたいので。
ーー芸術が人をつなぐというのは本当に素晴らしいことだと思います。
私は韓国でも日本でも外国人という立場だから、自分のなかでは、韓国人、日本人というよりは、アジア人であるという認識なんです。だから私はアジア人同士で手を取り合えないことが本当に心苦しい。国同士では一筋縄にいかないんだろうけど、文化や芸術はそういう問題を飛び越えられると思うんですよ。私が韓国で活動する理由のひとつにはそれがある。アジア人同士が仲良くなるきっかけ、手を繋ぐきっかけになりたい。言語の壁を超えたエイジアンミュージックができたら面白いかな、と。
ーー韓国でもちゃんみな名義で活動するんですか?
そうなんですよー。本当はもっと横文字のかっこいい名前にも憧れました(笑)。とはいえ、“ちゃんみな”って名前も平成的な言葉だと思ってて。日本のZ世代感がある。新しい文化。ギャル文化って感じがして今は気に入ってます。
ちゃんみな●1998年生まれ。韓国人の母親と日本人の父親の間に生まれ、日本語、韓国語、英語の3ヶ国語を話せるトリリンガル。幼少期より、ピアノ、バレエ、ダンス、歌を始め、作詞作曲のみならず、トラック制作、ダンスの振り付けなど全てをセルフ・プロデュースで行い、アーティスト活動をスタート。2017年、高校在学中に「FXXKER」でメジャー・デビュー。2018年9月、ワーナーミュージック・ジャパンへ移籍。2022年9月より、韓国での活動もスタートさせる。
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