10月23日に開催されたこじらせオンラインライブ(ゲスト:藤井隆)の収録後のおしゃべりです。藤井さんに刺激されたのか、気が付けばコロナ禍ですっかり遠ざかってしまったカラオケの話になりました。
構成/前田隆弘
時差のある生活
──Zoomが普及してそろそろ1年半になりますけど、みなさん上手く使えてます?
能町 やりづらいですよね。相手の反応が読み取りにくかったりするし。
──ほんのちょっとのタイムラグ、いまだに全然慣れないです。何か言った後の1、2秒の空白が怖くて。
能町 NHKの相撲番組に出てるんですけど、NHKは「スタジオに何人以上は入っちゃダメ」というルールがあるんです。だから私、スタジオに入れてもらえなくて。
ヒャダ リモートで?
能町 そう、局内でリモートやるんです。そのリモートがやっぱり0.5秒から1秒くらい遅れるんですよ。
ヒャダ 局内でも遅れが出るんですね。
能町 だから生放送でうまく会話できなくて、「どうにかしてほしい」とずっと言ってたら、いろいろ頑張ってくれて途中からタイムラグなしで会話できるようになりました。1秒のズレで、普通の会話が成り立たなくなるんだなと思いましたね。
久保 昔はテレビの海外中継で会話がズレるの、よくあったよね。あのときは「物理的に離れると、こんなになっちゃうんだな」と思ったけど、いま能町さんとZoomで「デトックス女子会会議室」の収録をしてても、やっぱり回線状況によってディレイが起きることがあるわけだよ。それをYouTube用に編集するとき、めちゃくちゃ細かく隙間を縮めたりしてる。
能町 私もやるやる。
久保 やってるうちに「この作業時間を使って、実際に会ったほうがいいんじゃないか」と思ったりもして。難しいよね。
ヒャダ コロナ禍まっただ中でNHKラジオの生放送に(リモートで)出たときは、電話とスカイプを使ってたんですよ。出演者同士のやり取りは全部電話なんです。で、そのやりとりの音声をスカイプを使って放送にのせているという。ディレイをなくすための工夫なんですけど、面白いやり方をするなと思って。
能町 なるほど、電話ね。
久保 結論。「電話すごい」。
能町 だって子供の頃から電話は時差なかったですもんね。
久保 そして大人になった今、時差がある生活になっているという。
ヒャダ そういや、ある芸人さんが「Zoomでお笑いは無理」と言ってましたね。
久保 お笑いって、タイミングめちゃくちゃ大事だもんね。
ヒャダ 0.1秒の世界ですからね。その間(ま)で笑わせるのに、その間をないがしろにされたら、そりゃもう無理ですよね。
能町 Zoomでツッコミ入れるとか無理。破綻しますよね。
久保 絶対無理。能町さんとの会話を編集してるときも、能町さんの「ああ、うんうん」というリアクションを少しかぶらせるぐらいのほうが、会話がうまくいってる感がちょっと出るんだよね。YouTubeの編集中にこんなことに気付いてしまった。
ヒャダ でもそれはまだ2人だから編集できると思うんですよ。3人になったら……。
能町 もう無理だね。
「他人に届かない時期」をどう過ごすかが大事
能町 最近の、元アイドルの子がやってるラーメン屋騒動(*)が、気になってしょうがないんですけど。
*元アイドルのラーメン店経営者が、「あるラーメン評論家からセクハラと嫌がらせを受けた」との理由で、ラーメン評論家の出禁を宣言。その後、はんつ遠藤が自分がその張本人であると自ら名乗り出て、釈明と反論をブログで展開すると、今度はその「おじさん構文」が話題になる。さらには文春オンラインが、当該ラーメン店の食材産地偽装や内装工事費未払いの問題をスクープし、事態は思わぬ展開を見せている。
ヒャダ はんつ遠藤。
能町 はんつ遠藤がひどいかと思いきや、はんつ遠藤正しかった説が出てきたからね。衝撃だった。はんつ遠藤のセクハラはひどいけど、元アイドルのほうもあんな男(*)と一緒にラーメン屋やってたのか、みたいな。
*元アイドルの店主がかつて所属していた芸能事務所の元スタッフで、ラーメン店の実質ナンバー2。経営がずさんだった内実を文春オンラインが取り上げた。
久保 ああいうの見てると、「なんでアイドルの子はプロデューサーやスカウトマンみたいな人と付き合うんだろう?」って思う。東京で何かしたくて地元から出てきて、未成年に平気で手を出せるような人と付き合ってゴタゴタする……というのを20代の初めのうちに経験してしまうのって、大変だと思うんだよ。
ヒャダ アイドルはちゃんとセルフマネジメントできる子じゃないと、ゆがみやすいと思います。やっぱりSNSとの相性が悪すぎるんですよ。そりゃ病むよっていう。もう取り上げてもいいんじゃないかなと思うんですけどね。SNS禁止!
久保 まだ自分が未熟なうちに、「ファンと交流する」みたいな能力を鍛えなくてもいいんだよね。いきなり他人に届けるんじゃなく、「他人に届けるまでの時期」「他人に届かない時期」をどう過ごすかがすごく大事だと私は思ってる。
──ステージに立てるようになる前から、なんなら事務所に入る前から、ファンと交流する経験を積むのって、冷静に見るとすごく特殊な状況ですよね。
久保 私はSNSがない時代を過ごしてきた人間だから、そういう自己形成が大事だと思ってるんだけど、あっという間にSNSの時代になって、まだ人格形成が未熟なうちから「SNSでどう自分を見せるか」「どんなリアクションもらえるか」という視点が入ったままずっと生きていくのって、めちゃくちゃきついぞって。だけど、もうSNSがない時代には戻れない。
ヒャダ そうですね。1回この味を知ってしまうと戻れないでしょうね。インスタライブとか17LIVEとか……それでTwitterの利用者が減ってきているという話も聞きますし。
能町 でもみんなどこに行くんだろう。TikTokですか?
ヒャダ TikTokとインスタですね、若い子は。
能町 私がTikTokの良さをわからないのは、やっぱり年齢なんですかね。
ヒャダ 「基本、TikTokからヒットソングは生まれる」というくらい賑わってますよ。
能町 そういう話は聞くんだけど。
久保 謎の再燃があったよね。筒井康隆がTikTokで人気出たという。
能町 『残像に口紅を』という本の紹介をした人がいるんですよね。いろんな本を薦める人気のTikTokerが筒井康隆の『残像に口紅を』を薦めたら、本当に本屋から消えるくらい人気になったというのは、私も見ました(*)。
*1989年に刊行された『残像に口紅を』を、人気TikToker「けんご」が紹介したことで若い世代に広まり、8万5000部の重版につながった。アイフル「和尚女将」篇のCMは、このブームを取り入れたものだと思われる。
久保 そんなことあるんだと思って。それはちょっとびっくりした。
ヒャダ 音楽や映像だったらまだわかりますけど、本もそうなんですね。最近はなくなりましたけど、一時期、「TikTokでバズる曲を作ってください」みたいな発注がめっちゃあったんですよ。そんなの狙ってできるわけないんですけど。
能町 TikTokって、開いたらいきなり始まるじゃないですか。あの感じが耐えられなくて。
ヒャダ びびっちゃいますよね。
能町 だからまったくなじめないんですよね。アプリを入れてはいるけど。
久保 面白そうな動画はいっぱい見かけるから、合う人にはすごく合うんだろうね。でも……こんなにテレビに出といて言うのもなんだけど、顔出ししたくないよね。
能町 自撮りに抵抗ない世代だと、久保さんのその感じはもうわかんないよね。(その世代で)抵抗ある人たちもいるのかな、どこかに。
ヒャダ ああいうのって、ツルッツルのフィルターを掛けるじゃないですか。「フィルター掛けるならやるなよ」って思いますけど。
──自撮りをしないというより、久保さんは最近ツイートも控えてますよね。
久保 私、SNSで自分の考えを発信するのは、今あんまりやってなくて。ツイートが少なすぎて「久保みねヒャダ」の打ち合わせにも困るくらい(*)。だから今の私、面白くない人になってるなと思う。実は今日も「藤井隆と会って何が話せるんだろう」って、けっこうナーバスになってた。
*「久保みねヒャダ」前半のトークコーナーは、3人の最近のツイートを元に進行していく。
1人1時間ずつのカラオケがやりたい
能町 私も「何しゃべったらいいんだろう」って思ってたけど、いざ始まってみたらめちゃくちゃ聞きたいことありました。
──藤井さんが最後に「あれ」をやってくれたのは、今日のトークが楽しかったことへの最大級のお返しみたいな感じだと思いますよ。
能町 あれはありがたいね。
久保 「もうやってくれないんだろうな」と、ずっと勝手に思ってたから。
ヒャダ 僕もけっこうびっくりしました。
能町 今日、本当に「一緒にカラオケ行ってください」って言いたくなりましたよ。
ヒャダ 言えばよかったのに!
能町 いや、言えないな。その踏み込み方はできないよ。私が行って盛り上げるわけでもないし。むしろ盛り上げてもらうんだし。
久保 いやいや、能町さんのカラオケが絶対楽しいのは保証するよ。
能町 カラオケでまた思い出したんですけど、けっこう前にデイリーポータルZで、1人で1時間歌うカラオケをやってたんですよ。普通3人で行ったら順繰りに歌うじゃないですか。そうじゃなくて、3人で3時間取って、1人が1時間ずつ担当するという(*)。
*ひとり1時間ずつぶっ続けで歌うカラオケはどうか(デイリーポータルZ)
ヒャダ それはすごそう。
能町 あれ、すごい憧れがあるんですよね。ちょっとやりたい。
──要するに、1人1時間ずつワンマンショーをやるという。
能町 そうそう、ちゃんと他のメンバーを客として見る。
ヒャダ 「今日は来てくれてありがとうございます!」みたいな。
能町 だったら私、1時間Charaやりますから。それをやりたいんですよね。
ヒャダ 出る順によって感覚が全然違ってきそうですね。自分の順番が最後だったら、ずっとハラハラして、他人の歌をおだやかに見れないかもしれない。早めに終わったら、後はもう純粋に楽しめますけど。
能町 ちゃんとセットリストを決めて、何なら最初に全曲いったん入れてからスタートのほうがいいですよね。
ヒャダ そうです。「この曲はワンコーラスだけ」とか、ショートバージョンもありますからね。
能町 スマートにパッと演奏ストップして、「ありがとうございました。いまお聞きいただいた曲は●●●でした」とか言って。
ヒャダ でも1人1時間制って本当に面白そうですね。
能町 やったら面白いと思うんですよね。
久保 カラオケ、気付いたら遠い世界の話になってるな。久しぶりにカラオケ行ったら何歌おう……。
能町 ラジオで誰かが言ってたんですけど、その人が昔、尾崎豊のコンサートに行ったら、1曲目が「卒業」だったんですって。「そういう飛ばし方するんだ」って、めちゃめちゃびっくりしたらしくて。それ聞いて、尾崎豊いいなって思いました。
ヒャダ いいですね。流れ無視でいくという。
能町 1曲目からもう爆発させたいのかな。つかみはすごすぎるけど。私、思い返すとカラオケでいろんなこと試してきたなと思って。
ヒャダ 実験場だった?
能町 実験してましたね。まず大学生のときに1人カラオケに初挑戦してますし、その後も1人カラオケばっかりやって、友達と一緒に1人カラオケ行ったこともあるんですよ。
───ん? どういうことです?
能町 「友達と、『1人カラオケは楽しい』って話で盛り上がって。盛り上がりすぎて、じゃあこのまま行こう」となって、2人でカラオケ屋に入って、2つの部屋を取って。で、それぞれ1人で1時間歌って、「楽しかったね」って。
一同 (笑)
──それ、2人で行かないとダメなんですか!?
能町 まあ2人で行く必要性は全然なかったんですけど(笑)。
ヒャダ 斬新がすぎますよね。
久保 意思が明確すぎる。
能町 あと、1人でパーティールームというのも何回かあって。たまたまそこしか空いてなかったからなんですけど。
ヒャダ 時々ありますよね。
久保 たまにある。
──3人とも……。
能町 でもそういうのを経験した人はだいたい「パーティールームに通されて困ったんだよ」と言うんですけど、私はもう超うれしくて。
ヒャダ のびのびと。
能町 もうめっちゃのびのび。靴脱いで、U字型のソファをうろうろしながら歌ったりしてて。
久保 懐かしい。昔、パセラにめっちゃ行っててさ。池袋のパセラはやたらバンドマンとファンが行ってて、広いVIP系の部屋に集まって歌ってたりしてて。
能町 何かえぐいな。
久保 トイレに行くと、バンドマンと来ているファンの女の子が何人かで話してて、その女の子の1人の嘆きが「ああ……つながりたい!」っていう(笑)。
ヒャダ 明確な性欲(笑)。
久保 あんなに体重が乗った「つながりたい!」初めて聞いたよ。
能町 本当にそういう人いるんだ。
久保 やっぱつながりたいよね。ここまできたらさ。
ヒャダ あと一歩ですからね。
久保 「このグループを抜け出して、どうやってすぐそこのラブホに行くか」とか考えてるんだろうなと思って。
ヒャダ ラブホで思い出しました。去年、僕のやってるインターネットラジオを、ずっと家からやってるのもつまんないから、ラブホに行ったんですよ。サウナ付きの。初ラブホだったんですけど、行った結果、Wi-Fiがクソオブクソ、ASDLくらいの速度だったんで、配信は諦めて帰ったんです。でも帰るまで時間あったんで、部屋でカラオケ歌ったんですよ。めっちゃ古いカラオケで、1回受付まで番号通して、それから受付が送り返してくれるみたいな感じで。それが最後のカラオケ体験です。
久保 そんなシステムあるんだ!?
ヒャダ めちゃめちゃ時間かかるんですよ。番号入れてから2~3分くらい待たなきゃいけなくて。
能町 そんなに待つんだ。
ヒャダ そこで自分がCD出してたときの曲をめっちゃ歌って、そそくさと帰ったんですけど、楽しかったです。ベッドの上で歌うのは。
ドン引きソングは最高
能町 楽しそう。いろいろやってきたけど、ベッドはないな。久保さん、昔ファンみたいな人と大勢でカラオケ行ってませんでしたっけ? 10人くらいで。
久保 あ、『モテキ』のときの企画で募集したやつだ(*)。「自分の一番ドン引きされる曲と自信がある曲、2曲考えてきてください」と伝えて歌ってもらったんだけど、やっぱね、ドン引きソングは最高なんですよ。
*『モテキ』のキャンペーン企画。全巻セットを買った人の中から抽選で10名が久保とカラオケできるというもの。
能町 ドン引きソング、いいですね。
久保 みんなさすが『モテキ』を好きなだけあって、こんなにも珠玉のドン引きを持ってるんだなって。曲はもう覚えてないんだけど、良かったという思い出だけはあるんだよね。上手い歌じゃなくて、みんなの「これ歌ったらドン引きされるよね」自慢を聞きたかったという。
能町 ドン引きされる曲……私はたくさんあるな。そうだ、さっき言ったワンマンショー的なやつ、1回やったことがあるんですよ。
ヒャダ 「やってみたい」とか言って、もう経験あるじゃないですか。
能町 自分でも相当いろいろやってるなと思います。5人くらいで飲んでたんですけど、私、飲んだ後にカラオケ行きたくなるんですよ。
久保 懐かしい。その感覚も、もう今は遠い。
ヒャダ 千葉(雄大)君とも一緒ですね。
能町 他の人はみんなカラオケ好きじゃない人で、でも私がけっこう酔っ払ったから「カラオケ行きたい、行きたい」って言いだしちゃって。で、「カラオケ付き合ってもらってもいいですか、お金も全部払っていいですから」みたいなこと言って、付き合ってもらって。そしたら「じゃあ聴きたいです」みたいな感じになって、1時間私しか歌わないカラオケをやりました。
ヒャダ ただ歌がうまいスナックのママみたいになってますよね。
能町 そうなっちゃうね。
久保 でも能町さんの歌は聴いてて楽しいから、それは成立すると思う。
能町 でも今はもう声出ないな、きっと。
ヒャダ リハビリしなきゃ。
能町 リハビリしたいですね。明日1人でカラオケ行こうかな。
「久保みねヒャダこじらせブロス」のバックナンバーはこちらから。
【ライブ情報】
テレビでは話せないトーク満載
久保みねヒャダこじらせオンラインライブ
次回開催
ゲスト:ヒコロヒー Aマッソ加納
配信日:2021年11月21日(日)14:00スタート
(11月28日(日)23:59までアーカイブ配信あり)
配信先:PIA LIVE STREAM
料金:¥2,980(税込み)
チケットはチケットぴあにて発売中
【番組情報】
ほぼ月一で不定期放送中
久保みねヒャダこじらせナイト
次回放送:2021年11月19日(金)フジテレビ●深2:35〜3:35予定
ゲスト:藤井隆
*FODプレミアムでこれまでのライブを限定配信中(FOD限定トークあり)。
【プロフィール】
くぼ・みつろう●漫画家。代表作として『モテキ』『アゲイン!!』など。現在は『ユーリ!!! on ICE 劇場版 : ICE ADOLESCENCE』制作中。
のうまち・みねこ●自称漫画家。新刊『そのへんをどのように受け止めてらっしゃるか』『雑誌の人格3冊目』発売中。『結婚の奴』も売れてます(当社比)。「猫のつまらない話」も連載中です。
ひゃだいん●音楽クリエイター。J-POPからアニメソング、ゲーム音楽まで幅広く手掛ける。初の著書『ヒャダインによるサウナの記録 2018-2021 -良い施設に白髪は宿る-』が発売中。
投稿者プロフィール
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