【特集】「7つの答えが集まった、その時」~佐藤アツヒロの覚悟~ 光GENJIドキュメンタリー番組制作秘話(WOWOW小林慶吾プロデューサー)

2025年1月5日、WOWOWで始まったドキュメンタリー『7 S.T.A.R.S. ~7つの答え~ 佐藤アツヒロが繋ぐ光GENJIの現在(いま)』(月1回放送、全7話)。約30年前に一世を風靡した7人組アイドルグループ・光GENJIに今年、何かが起こるのか!? メンバーの1人である佐藤アツヒロが、強い想いを胸にメンバーを訪ねていく様子を追う本格ドキュメンタリーは、シリーズが終わるのが約半年後予定。8月19日は光GENJIデビュー記念日、9月は解散から30年となる節目ということもあり、ファンや当時を知る世代は特に気になるところ。番組プロデューサーの小林慶吾氏に、制作秘話を伺った。

 

写真提供/WOWOW  取材・文/TV Bros.編集部

 

プロフィール

小林慶吾(こばやし けいご)

1992年、WOWOW入社。音楽事業部チーフ・プロデューサー。音楽ライブ中継番組の演出及びプロデュースを中心に、ステージ中継番組、お笑い番組、ドキュメンタリー等、多数の番組やイベントの企画・制作・演出を担当。ドキュメンタリーは、WOWOWが取り組みを開始した当初から企画・制作・プロデュースに関わる。

 

佐藤アツヒロの熱い想い

 

――番組の企画の発端やいきさつを教えてください。

 

アツヒロさんと番組制作会社のプロデューサーさんから連絡、相談がありました。WOWOWの音楽コンテンツはアーティストのライブ中継がメインなので、最初は光GENJIが再結成してライブをするのかなと思いましたが、お話しすると、企画内容としてはドキュメンタリーコンテンツだったので少し驚きました。

番組プロデューサーとして純粋に面白いなと思いましたので、そこから何度もお会いして企画を詰めていきました。アツヒロさんの想いは強くクリアにありながらも、アプローチや演出・構成・展開などについてはこれからという段階から一緒に始められたのは、非常に良かったと思います。

 

第1話でアツヒロさんが語った光GENJIの「再結成」について、世の中もそうですけれど、誰でも当然そこに注目、期待しますよね。ただ、僕はその過程に大きな意味があると思いました。光GENJIのドキュメンタリーという世の中があまり予想していないであろう企画そのものへの驚き、また、もしかしたらその日が来るかも知れないと期待していらっしゃる多くの方とアツヒロさん含むメンバーさんが共有する時間の価値、そして、まさかそれがWOWOWでというインパクトなども含め、意味ある企画だと感じました。

 

そして、アツヒロさんと制作会社のプロデューサーさんと打ち合わせを重ね、どういうアプローチだったらアツヒロさんの想いが伝わる作品になるかを話し合いました。

何本かのシリーズで展開した方がいいのか、単発で完結する長編番組がいいのか、または映画やODS(Other Digital Stuff:非映画コンテンツ)として劇場上映を目指す作品として考えるべきなのか。

どんな形でアウトプットしたらその想いにしっかり応えられるのか、僕はWOWOWのプロデューサーですが、この作品についてはまず企画を重視し、プラットフォームが本当にWOWOWでいいのかという根本的な部分も含めて、フラットなところから考えました。

 

予定調和の番組ではない面白さ

 

――以前お伺いした際(※記事はこちら)これから番組がどう展開していくかわからないとおっしゃっていましたが、再結成までの道のりをアツヒロさん主体で追っていくというシリーズになるでしょうか。

 

僕は、再結成してくれとお願いしているつもりは今のところありません。

裏で密約・確定された再結成までを追う予定調和のドキュメンタリーをつくるつもりもありません。再結成の前座の役割を担う「仕込みだらけのドキュメンタリーっぽい番組」に興味はないので。

「解散から30年、メンバー全員が50代となり、最年少の佐藤アツヒロがひとつの想いを胸に動き出す。光GENJIのメンバー7人、その7つの答えとは。」

この番組はそれ以上でも以下でもなく、そういうドキュメンタリーシリーズです。

そのプロセスを撮影し作品にすることに意味があると思っていて、そのプロセスこそがドラマティックだと信じています。

アツヒロさんが想いを伝えるために動き、メンバーそれぞれがどういった考えや答えなのか、そしてその時それをどう伝え合うのかはご本人たちじゃないと分かりません。

 

――想定外なところも番組の魅力でもありますね。

 

難しいといえば難しいし、そもそもドキュメンタリーはそういうものだろうとも思います。

撮影するそれが想定内か想定外かということが、番組の魅力をはかる基準ではありませんし。

メンバーさんそれぞれどんな考えや答えを持っていらしてもいいと思いますし、ある意味不安定な状態で撮影が進んでいくことを僕はポジティブにとらえています。

何話かストーリーを重ねていくにあたって、例えば追加撮影が必要になるとか、それによって深みが出るのであればそういうのもありかなとも思いますし。

アツヒロさんが行く旅の中で色々なことが起こると思いますが、起きたことを撮り、作品として軸がブレぬよう丁寧に紡いでいく。それがこの作品の魅力になれば良いなと思っています。

企画に対するアツヒロさんの考え方にブレが無いので、制作演出チーム全体としての動きも自然とまとまっている感覚はあります。

 

――ここまで制作されてきた中で、難しい局面もあったでしょうか。

 

番組が始まったばかりなので現状は未知数ですが、今後、難しい局面は少なからずあるだろうと思ってはいます。

もちろん企画構想段階や撮影準備段階で、さまざまな壁や局面はありましたが、それはまたご質問の趣旨とは違う種類のものですので。

 

この企画は、どこかの誰かが「こんなことしたら面白いんじゃないか?」と言い出したものではありません。

光GENJIのメンバーの1人が意を決して、ドキドキしながら僕に話をしてくれ、僕もそれなりの覚悟で受け止めました。

カメラに撮られていることを分かってアツヒロさんやほかのメンバーの方がする発言は、ある意味覚悟を持って発しているものです。

僕は、覚悟を持ってされた発言は覚悟を持って電波に乗せなければならないと思っています。

カメラの前で覚悟を持って発した言葉を、止めたり、内容を曲げたりする権限は誰にあるのかなと。

本人が覚悟を持って発した本心、事の核心を突くその言葉に、安易にハサミを入れることは出来ません。ドキュメンタリーではなくなってしまいます。
 
言葉ひとつで状況が大きく変わることもありますので、アツヒロさんやメンバーさんの発言や言葉、その文脈の解釈についてなど、この先番組が進むにつれて難しい局面は出てくると思います。

 

次回は赤坂晃が登場!

 

――初回の落ち着いた流れも印象的でした。番組作りで意識されたことや、次回は赤坂晃さんが出られますが、第2話(2/11放送)の撮影時のことも少し教えていただけますか。

 

番組の演出テイストとしては、企画内容と同じでガチなドキュメンタリーのつくりです。良く言えばシンプル。悪く言えば地味。

カラフルで大きな級数のテロップをバンバン出して画面を派手に、軽快なBGMや効果音でテンポ良く・・・といったものではなく、じっくりと観て、聴いて頂ける作品にしたいと思っています。

あえて必要以上の装飾はせず、出来るだけシンプルに、どちらかというと引き算の演出を意識しています。

詳細は番組を観て頂ければと思いますが、第2話の赤坂さんが登場される回の取材は和やかで、お互いの本音を素直に交わしていたと思います。

おふたりの会話や言葉を、観て、聴いて頂き、またそこから垣間見える気持ちや心も感じて頂きたいと思っています。

次回放送は2月11日(火・祝)19時~。WOWOWオンデマンドでも配信され、放送後1カ月間、視聴できる。お楽しみに!

 

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TV Bros.編集部
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