元芸人の投資家として注目を集める井村俊哉さん。売れない時代の食い扶持として始めた株式投資で巨額の資産を築くまでには、数々のチャレンジが隠れていた。「自分のお金をこれ以上増やしても意味がない」という境地に至った今、次の挑戦のための準備中という井村さんに、これまでとこれからを語ってもらった。
取材・文/志賀朝子 撮影/市村円香
TV Bros.5月号はチャレンジ応援号!鈴鹿央士ほかチャレンジの歴史とその極意
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<プロフィール>
井村俊哉(いむら・としや)
1984年生まれ。株式投資家、中小企業診断士。群馬大学卒業後コントトリオ「ザ・フライ」(のちに「シンブン」に改名)で芸人として活躍。大学在学中から株式投資を始め、2022年には50億円を突破。2019年に株式会社Zeppyを設立し、YouTubeチャンネル「Zeppy投資ちゃんねる」を開設(現在休止中)。
大学時代にバラエティ番組に夢中になり
「売れる」と確信して芸人に
――井村さんのこれまでの人生を振り返ると、まず大学時代に就活せずに芸人をめざしたということがチャレンジだったと思うのですが。
それが人生で初めてのチャレンジでしたね。大学3年のときに「芸人になりたい!」と血迷ってしまって(笑)。中高時代は父親が厳しくてテレビやゲームを制限されていたんですけど、大学に入ってひとり暮らしを始めて、テレビでバラエティ番組を自由に見られるようになったらもうぞっこん。こんな面白い世界があるんだって。いちばん憧れたのは「爆笑オンエアバトル」(NHK)。「新しい笑いを作るのは~~テレビの前のあ・な・た・た・ちです!!」ってあったでしょ。「え、僕?」みたいな。で、芸人ですよ(笑)。チャレンジするときはいつもそうなんですけど、失敗することは考えないんですよね。テレビに出ている人たちみたいに楽しくおしゃべりしてお金がもらえたら、なんて素敵だろうと。売れるとしか思ってなかったですね。いや、芸人の生活自体楽しそうに見えたので、売れなかったとしてもまあいいかと、リスクがないと思ったんです。
――芸人としての“年収”が3万円だった年もあったそうですね。「あれっ、思ってたのと違う」みたいなことはなかったですか?
金銭的なことは想定してました。下積みで10年とか泥水すするって覚悟は持っていたんです。その間バイトとか何らかの方法でお金を稼がないといけないっていうのは承知の上で飛び込んで、才能にうすうす疑念を感じながらも、のらりくらりと芸人をやっていたんです。でも芸歴3年目くらいのときに一人の女性と出会って、この人と将来を築きたいと思ってしまったがために、このままでいいはずないだろうってなっちゃったんです。彼女と結婚したいっていう動機で、2つのチャレンジをするんですよ。1つは株式投資で飯を食うこと、もう1つは中小企業診断士の資格を取ること。株式投資は大学時代から細々とやっていたので、もっと真剣に勉強すればお金を稼ぐすべになるかもしれないと思ったんです。中小企業診断士の資格は、彼女の親御さんに結婚を認めてもらう説得材料になりそうだし、株式投資にもプラスになりそうだなと。
感慨深かった資産1000万達成。
でも妻の反応はいまいちで…
――株式投資に関する名著を読み込んだり、バイト中に試験勉強をしたりしたんでしたね。挑戦のモチベーションが恋愛感情だったというのが素敵です。そんな女性と出会えたことも含めて。
そうですね。自分、嫁さんのおかげで生きて来れているので(笑)。2012年に結婚して、翌年にアベノミクスの影響もあって株の利益が1000万円を突破したんですが、当時一緒に住んでいた家賃7万円のワンルームのアパートに帰りしな、嫁さんにスマホの「1000万」の数字を見せた記憶が今でも鮮明に残ってます。自分は結構感慨深かったんですけど「へー」みたいな感じで。もともとあまり期待してなかったと思うんですよ。だって芸人しながら株で飯を食うみたいなこと言うヤツですよ。そんなのと結婚してるんですよ。僕の妻こそだいぶクレイジーですよね(笑)。
――その後、1社の株で2000万円という売却益を出されますよね。これは相当努力された結果だったんでしょうか。
これは正直、運がよかったのも大きいんですよね。株を買うときって決算書などを相当読み込むんですけど、今とくらべたら当時はなんもやってねーというレベルで。ただ株式総会には行きました。3年後にすごい利益が出る中期計画が出されていたので真偽を確かめに行ったんですよ。そしたら社長がいろいろ理屈を説明してくれて「なるほど!」ってなって、総会終わりにすぐ注文入れて買い増しして。資産規模が300万円程度のときに二百数十万をその会社の株に突っ込んで、3年後に10倍になって2000万になったっていう感じですね。
――2017年にはなんと資産1億円を達成されます。挑戦が結実しましたね。
そうなんですよね。ウソみたいですよね。なんかもうリアリティがなくなっちゃって。M-1グランプリの賞金が1000万円だから、1000万円のときはおぉ……っていうのがあったんですけど、デジタルの数字が増えてるだけで生活は今までどおりだったから1億のときは実感がなくて。
芸人引退を相方に切り出させて
しまったことは今でも負い目に
――同じ年に芸人を引退されました。憧れの職業だった芸人を辞めることは、別の道へ進むためのチャレンジという側面もあったのでしょうか。
その2年くらい前から停滞感があったんですよね。「株大好き芸人」として番組に呼んでもらえるようになったりして何とかもがいてはいたんですけど。起死回生でトリオ名を改名したりして“社会派コントトリオ”として当てに行ったものの、ネタに魂が入らなくなって。これは今でも負い目に感じているんですが、リーダー格だった相方が切り出してくれて。もう引退しようと思うって……。で、芸人辞めて、ベタに東南アジアを旅するみたいなこともやったんですよ(笑)。旅したところでやりたいことは見つからない。その後2年くらいはもんもんと煮え切らずに過ごしましたが、いずれは起業しようと思ってました。
――その思いが、その後の株式会社Zeppyの設立という挑戦につながるのですね。
自分の得意分野が投資で一応芸人としてメディア系の仕事していたわけなので、「芸人×投資」というかけ算で生かせることを考えたんです。当時のYouTubeはまだ投資の情報とか知識系のことを発信するチャンネルってあまりなかったんですよ。テレビブロスさんの取材で言うのはあれかもしれないけど(笑)、テレビからYouTubeにシフトするような時代背景があって。あとUUUMが上場したりしてむちゃくちゃ稼いでて、株価がうゎーって上がって。UUUMが配信しているチャンネルってエンタメ系だったので、ちょっと軸をずらして、勉強系とか投資系とか、知識を習得するっていう方向で空いている枠を取りに行こうとしたわけです。それまでの人生の中でいちばん大きなチャレンジでしたね。ほとんどの時間を事業活動に使ってました。朝起きて寝るまでずーっと仕事してましたね。
――最強コスパ男の異名をとる井村さんですが、何かにチャレンジするときもコスパを考えますか?
考えます。常に考えます。Zeppyの事業に関してもコスパがいいと思ったんです。自分の株の知識と、芸人のときのノウハウを生かせるってコスパがいいじゃないですか。白紙の状態からやるよりも、下地があるぶんコスパがいい。あらゆるチャレンジでコスパを考えますね。
ファンドをつくり、死ぬ気で
投資に打ち込む環境に身を置きたい
――「ニッポンの家計に貢献する」という理念を掲げていらっしゃいますが、まさにこれから挑戦したいことにつながるわけですね。
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