現在、Netflixで絶賛配信中の『サイバーパンク エッジランナーズ』の監督を務める今石洋之さんの連載第2回。1回目は『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』で再び注目を集めている、ジェームズ・キャメロンがブレイクするきっかけとなった『ターミネーター』を挙げていただきました。では、今石さんの2本目は? さっそくお願いしましょう!
取材・文/渡辺麻紀
本格的に映画に目覚めた作品『ターミネーター』今石洋之 第1回
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<プロフィール>
今石洋之(いまいし・ひろゆき)●1971年10月4日生まれ。東京都出身。アニメーション監督、アニメーター。多摩美術大学美術学部芸術学科映像専攻卒業後、ガイナックスに入社。『新世紀エヴァンゲリオン』(1995~1996年/テレビ東京系)の動画から始まり、絵コンテ・作画監督などを経て、『天元突破グレンラガン』(2007年/テレビ東京系)、『劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇/螺巌篇』(2008年/2009年)の監督を務める。2011年には共同でTRIGGERを設立。以降『キルラキル』(2013~2014年/MBSほか)、『プロメア』(2019年)などオリジナルアニメーションの監督を務める。最新作は『サイバーパンク エッジランナーズ』(Netflix)。
深作作品に登場する銃は、“ドスの延長”みたいな使われ方。そこにリアリティを感じたんです。
――今石さんの2本目は、ちょっと意外なチョイスですね。
今回は邦画です。深作欣二監督の『県警対組織暴力』(1975年)を選んでみました。
高校のときにキャメロンにハマり、そのあとジョン・ウーも大好きになった。『男たちの挽歌』(1986年)に夢中になったクチですよ。日本でガンアクションは無理だけど、香港はアリなんだって。そんなことを考えているときに深作と出会ったんです。
――いつ頃なんですか?
もう仕事をしてましたね。職場の先輩に深作の『暴走パニック大激突』(1976年)というヘンな映画を「君、これきっと好きだよ」という感じで薦められて観たんです。そしたら、案の定、面白かった。まさにタイトルまんまの映画で、暴走してパニックして激突するだけ(笑)。
――それは潔いですね。そこで深作の魅力に気づいたわけですね?
そうです。そこから遡って『仁義なき戦い』シリーズ(1973~1980年)を一通り制覇して、深作は笠原和夫という脚本家と組むといい映画になるということに気づいたんです。
『暴走パニック大激突』は好きなんですが、アクションだけで物語はほぼない。でも、同じ監督なのに『仁義なき戦い』シリーズはちゃんとドラマがある。しかも脚本家のテーマを感じることもできる。だから、深作欣二×笠原和夫作品に注目したんです。
ふたりのコラボレーションで作られたのが、僕が2本目に挙げる『県警対組織暴力』。『仁義なき戦い』を4本を撮った直後くらいに撮られた、脂がもっとも乗っている時期の作品ですね。
――私も今回、初めて観たんですが、ちょっと切ない話ですね。
ここで『サイバーパンク エッジランナーズ』(2022年)の話になるんですが(笑)、終わり方がハッピーエンドじゃないんですよ。これは、ゲーム会社のオーダーだった。「奇跡が起きるようなストーリーにはしないでくれ」って。こういう展開は原作となったゲームに準じていて、ゲームだから複数の終わりがあるにもかかわらず、スカッとするようなエンディングはほぼないんです。どれも大体ダーク。本当にそういうのが好きな人たちが作っているんだなあ、と。
――徹底しているんですね。
そうですね。その徹底をアニメでもやろうと。例えばボスキャラを倒したものの、主人公はハッピーにならなかったとか、サイバーパンクというジャンルならではのビターなエンディングとか。それはそれでSFとしては深いし面白い。
日本でアニメをやっていると、そういう要求はまずないですから。はっきりそういう原作がある場合は別ですけど、オリジナルをやっているときには、ビターなエンディングにするには勇気がいる。ビターすぎるとお客さんからもクレームが入ったりしますから。でも、『ターミネーター』が心に残ったのも、ちょっと苦味が残ったからじゃないですか?
――そうですね。私もそこが好きでした。
そういうビターなエンディングを考えたとき、70、80年代のアニメにはいくつかあったんですよ。出崎(統)さんの『あしたのジョー2』(1980~1981年/日本テレビ系)とか富野(由悠季)さんの『イデオン』(『伝説巨神イデオン』〈1980~1981年/テレビ東京系〉)とか。
――時代を考えると、アメリカン・ニューシネマの影響があるんでしょうね。
そうだと思います。2本目を選ぶとき、そういう実写映画があるかなと考えたときに深作×笠原コンビの作品になったんです。深作監督のバッドエンド作品ではもう一本重要な『仁義の墓場』というのがあるんですが、好みで言うと『県警』なので(笑)。で、『県警』の菅原文太のラスト、凄くないですか?
――あれは痛いし切ないですね。ちょっと驚きました。
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