7月9日に開催されたこじらせオンラインライブ(ゲスト:飯尾和樹 [ずん] )の収録後のおしゃべりです。夏らしく、熱中症の話題からスタートしたのですが、そこから最終的に「助けてボタン」問題に話が及びました。切実な人にはとても切実な話です。
構成/前田隆弘
目次
熱中症は突然に
ヒャダ 今日、半パンはいてますけど、足首はこうなんですよ(くるぶしが隠れるショートソックス)。僕、(ベリーショートのソックスで)足首出したり、ロールアップしたりすると、一気におなかピーピーになっちゃうんですよ。
能町 足首なんだ。
ヒャダ よく「首と言われてる所は絶対あっためろ」みたいなこと言うじゃないですか。首、手首、足首。足首がほんとにダメなんですよ。
久保 確かに出てるの見たことない。
ヒャダ だから冷えって、ほんとに嫌なんです。
久保 私も冷えがずっと怖い。家に犬がいるとエアコンずっとつけなきゃいけないから、夏でも部屋は寒くて、けっこう着込んだりしてる。でも寝室はエアコンつけてないから、まあけっこうな確率で熱中症っぽくなりますね。
能町 いやいやいや、それは。
久保 寝るときは体が冷えた状態なんですよ。でもそこからクワーッと暑くなって。犬の散歩のために早起きしてると、昼まで起き続けられなくて早めに昼寝するんですよ。そうすると、一番ホットな時間帯に「あ、熱中症」みたいな。
ヒャダ それは気を付けてくださいね。
久保 この間起きて、「うわー、なんか熱中症っぽい」と思ったら、トイレで目が見えなくなりました。
一同 え?
久保 倒れてはないです。ブラックアウトまではいってないけど、「私、いま目が見えてなかった!?」みたいな感じになって、「怖っ!」て。
能町 怖い怖い怖い。
久保 見えてないけど気付かないんですよ。「あれ、何だろう? 変な感じ」って。
一同 えええええ!
久保 だから具合が悪くなったときって、もう意識が絶対しっかりしてないんだよね。1回、風呂場で倒れた時も思ったけど、「コントロールできなさ怖えー!」と思っちゃって。
ヒャダ ガチなやつじゃないですか。
能町 よく復活しましたね。
久保 でも何度かやってる。
能町 ちょっと怖い。
久保 起きたときに死ぬほど汗かいてたりとか、犬の散歩で汗かき過ぎたせいで、家の中でクラクラしちゃったりとか。一応、塩タブレットは持ってるんですけど、ニュースで言ってる通り短時間でもなりやすいし、布団の中でもなりやすいし。というか、布団に入るまでは寒かったわけだから。なかなか難しい。で、冷え問題に話を戻すと、若い子はもう全ての首を出してるわけじゃん。「守れるのか、それで?」って思っちゃう。
──守らない。それが若さなんでしょうね。
能町、先見の明
久保 言われてみると、子供の頃ってそういうところの寒さに気を付けたことはなかったね。あと、暑さについても、夏はもちろん暑かったけど、ラジオ体操行く時間に歩いてて「蒸し暑い」なんて思ったことなかったなって。
ヒャダ ないですね。
久保 朝、犬の散歩に行くと、近所の公園でラジオ体操やってるんですけど、もう危険な状態なんですよね。朝の時点で余裕で30℃超えたてたりするから。
能町 今の青森(能町の避暑地)の夏が、子供の頃に経験した茨城の夏くらいの気がします。
久保 でも長崎にいた頃、記録的な渇水があったな。フォルクスでバイトしてた時代。
ヒャダ 出た! パフェを適当に作っていた時の頃ですね。
能町 パフェ適当時代。
久保 皿が洗えないんよ。断水しちゃうから。だから苦心して、お皿にラップやアルミホイルをしてから料理出すとか、そういうことをやってた。あの頃はそれが「滅多に起こらない特別な出来事」だと思ってたけど、今はそれに匹敵する自然災害がしょっちゅう起こってる。
ヒャダ どの天変地異がどこで起こるか、ルーレットみたいになってますよね。
能町 夏は特に、必ずどこかで起きますよね。そもそも暑さが相当きてますし。
久保 きてるね。今、土の中まで暑いから、ミミズが土の中にいれなくなって道路にはい出して、大量に死んでるんです。
ヒャダ 干からびて死んでますよね。
久保 あんな壮絶な死に方を選ぶミミズって、すごいなって。「ここにいるよりも俺は地上に出て干からびて死ぬ!」みたいな(笑)。
──苦しさのあまり、もっと苦しい所に行っちゃうっていう。
ヒャダ 6月の酷暑って、変でしたよね。めちゃめちゃ暑いのに、セミが鳴いてないから。
久保 そうそう。だって今までの東京の夏って、こっちが夏だと自覚する前にセミが鳴いて、「ちょっと待って、もう夏が来たとか勘弁してよ!」みたいな気持ちだったのに。
ヒャダ だから能町さんが青森に行ったの(*)、もう最適解過ぎるなって。
*2021年より、夏の間は青森に住むという生活をスタートさせた。
久保 いや、ほんと正解だよ。
能町 私も「こんなに当たるかね」って思っちゃいました。それでまた、東京に帰ってきたタイミングが割と涼しめだし。気候には恵まれまくってる。
ヒャダ どこに行けばいいんでしょうね。日本は気候だけじゃなく物価もおかしくなってるし、かといって海外に行くにも円が弱くなっちゃってるし。
能町 海外もよく考えるんですよ。語学と仕事のことはいったん置いといて、どこの国がいいかと考えてみるんですけど、意外と最適解が出ないんです。台湾いいかなとも思ったけど、意外とそうでもない感じだし。
ヒャダ 今は特に(中国との)緊張状態が続いてますしね。
能町 そういうことを考えていくと、いろいろ最悪なところもあるけど、結局「日本にいる」という選択肢になっちゃう。
飼い主の「死ぬときはここで死ぬ」という覚悟
──このところでかい事件が次々に起きてるから、みんな忘れてると思いますけど、ちょっと前まで「電気が足りない、どうしよう!」って言ってたんですよね。
久保 この暑さだと、電力が逼迫しても、悪いが協力はできん。
ヒャダ 悪いが地球に厳しくいかせてもらう。
久保 でも「もし大きな災害が起きたら、犬と一緒に逃げるのってけっこう難しいな」って最近改めて感じてる。
能町 いや、大変でしょうね。
久保 結局、行き着いた答えが「どんな状況になっても、家が壊れてなかったらもうここにいるしかない」っていう。
ヒャダ 僕もそうですね。まさしく。
久保 YouTubeで、100匹くらい生き物飼ってる1人暮らしの女の人がいてさ(*)。
*熱帯魚、モルモット、爬虫類など約100匹の生き物を飼育する「こうちゃがーでん」さんのYouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCbJoWdIyULC-VuJebfKhPLQ
能町 そんなことできるの? ちょっと怖い。
久保 まあ大半はそんなに大きくない生き物、モルモットとか小さい爬虫類とかなんだけど。
能町 ああ、モルモットとか。それでもすごいね。
久保 そうすると、やっぱりコメント欄で、意地悪な人が「地震が起きたら生き物はどうするんですか? 連れて逃げられないですよね?」みたいな書き込みをするわけだよ。でもその人は「逃げませんから」みたいに返事してて。それでもいろいろ言ってくる人はいるけど、やっぱり飼ってる側としては「死ぬときはここで死ぬ」という気持ちだよなって。
ヒャダ 自分もそうですね。避難所へ行かないかもしれないです。
久保 そうなんだ。私は避難所に犬ごと行くのが厳しかったら、犬を家に置いてまめに見にくるとかかな。「家がつぶれてなかったら」という前提だけど。家が倒壊したときは、たぶん犬と一緒に死んでるんだろうな。
ヒャダ 猫と一緒に死ねるなら、それはそれでいいと思います。
能町 それが一番。
久保 でも「逃げて」って言われたら、置いてけないよね。
能町 置いてけない。
ヒャダ 置いてくのは、もう絶対ないっすね。
能町 最悪の場合は、もう猫を逃がす。
ヒャダ うちの子はそれ無理だ。ネズミも捕れないだろうし、外で戦える力がないから。
能町 でもすごい地震が来て「もうここにいられない」となって、避難所に行っても「猫は絶対ダメです」と言われたら、家に閉じ込めておくよりは逃がしちゃうほうが、まだ助かる可能性はあるかもしれない。もちろん猫ごと移動できるのがベストですけど。
「勉強すれば何かを得られる」という感覚、今もある?
──その話でいくと、収録でヒャダインさんも言ってましたけど、車があると便利なんじゃないですか?
能町 車で? でも実際、家がなくなって車で生活してる人がいるんですよね。ちょっと前にドキュメンタリーでやってました。
──道の駅の駐車場に住んでるみたいな。
能町 ああいう人の中には、犬を連れてる人もたぶんいますよね。
久保 教習所、調べたことはあるんだけど、信頼できそうな教習所ってだいぶ離れてるんですよ。でも根本の根本は、私、車運転するのたぶん好きじゃないという。
ヒャダ 好きになりますって。僕ももともと嫌いでしたもん。けど、運転するようになったら、なんだかんだ楽しいなって思えてきますよ。
──都心は交通量多いから緊張しそうですけど、地方で乗ったら楽しいんじゃないですか?
能町 いや、怖い。怖いです(*能町はペーパードライバー)。
久保 能町さんがそんなに怖がるなんて。
ヒャダ 能町さんが一番、運転の拒否感が強いですね。
能町 絶対に事故ります。
久保 なんで取れたの、免許。
能町 (教習所で)エンスト4回してもハンコ押してくれたんですよ。私、本当に集中力がないんです。絶対によそ見するし、寝ます。自信がなさ過ぎる。信号とか、普通に見落とすと思う。
──じゃあ免許取ってから全く運転してない?
能町 免許取った直後にちょっとだけ。でも、それも誰かと一緒に乗ってるときに、ちょこっと運転させてもらったくらいですね。1人で運転したことは一度もないです。運転は怖い。
久保 あと、事故に巻き込まれるのが怖い。
能町 それもある。
久保 自分もボーッとする瞬間があるし、昔より今のほうがそういう時間が多いので。これは車じゃなくて歩きの話なんだけど、コロナ禍で家にこもってた時期に、久しぶりに買い物に出たら、人と人との距離の空け方が分かんなくなったんですよ。向こうから人が来てるのに、「自分がよけたほうがいい」という感覚をすっかり忘れてて。
一同 え?
久保 「人に道を譲る」という感覚が鈍っちゃって、なぜか「向こうがよけてくれる」と思い込んでたんですよ。ギリギリでかわしたんだけど、「あれ? なんで私、向こうがよけてくれるって思い込んでたの?」と思って。ちょっと感覚が鈍ったり疲れてたりするときって、そういう思い込みが強くなるような気がして。歩きだったらよかったけど、これが車だったら超怖いと思って。
ヒャダ それ、めちゃめちゃ怖いですね。
久保 「気を付けていれば大丈夫」って言われそうだけど、そういうスイッチって無意識に入るものだと思うから。
ヒャダ わかりました。もう、お2人には勧めません。
久保 でも、勧めてくれてありがとうございます。5年後くらいになったら「やっぱり取ろう」と思えるかもしれない。「勉強すれば何かを得られる」という感覚が、私たぶん薄いというか、苦手意識があるんですよ。免許みたいに「勉強すればこの資格が取れる」という感覚、若い頃に経験していればよかったんだろうけど、それがないまま来ちゃったから。学びに対する意識が低いことに、自分でもちょっと引いてるところがある。たまにニュースで「高齢になって大学に通う人」を見ると、「あのモードのスイッチ入るのすごくない?」って思っちゃう。
ヒャダ ああいう人、すごいっすよね。
久保 大学の勉強とか、語学を学ぶとか、たとえそれが空回りでも実際に行動して学校に行くって、私これから思えるんだろうか……と考えると、うわー!ってなる。そういう意味でも、自分で行動起こさないとこれからどんどん鈍っていきそう。ひゃっくん、そういうのあります? 今から勉強したいものって。
ヒャダ 語学はやってたんですけど、コロナ禍で「もう使わないな」と思ってしまって、ストップしましたね。実際使わないですし。海外に行ったら「しゃべれなかった、悔しい」という思い出ができて、帰国してしゃかりきに勉強するんでしょうけど、今の状態だったらないかもしんないですね。
「傷つきやすさ」と「図々しさ」の間で
ヒャダ それで思い出したんですけど、海外でお世話になった方が一時帰国したという連絡が来たから、じゃあ食事でも……と誘ったんですよ。そしたら逆にパーティーに誘われてしまって。海外在住経験者が集まるような。でも行ったらたぶん日本語と英語が飛び交っていて、英語が飛び交ったときには僕、一気にのけ者になるわけじゃないですか。
久保 そこまで考えてたんだ。
ヒャダ 話についていけなくて、ただニコニコしてるだけになるんじゃないか……と考えたらつらくなってしまって。
久保 そういうの、わかる。私、そこまで気持ちが入っていないのに、ぼんやりと流されてどこかの集まりに出かけるのはもう止めようと思ってて。それやってると、驚くほど出かけなくなったりするんだけど。若くて体力があるうちだったら、そういうのに乗ってもいいけど、年々そういう誘いに乗っかる体力が落ちてると思うんだよね。まだ深く仲良くなったわけではない人の誘いの場に行って、全く知らない人たちに対応する体力、たぶん落ちてる。
──僕もいまだにそういう経験をするんですけど、ちょっと実感してることがあって。もしかして……若いときより傷つきやすくなってません?
一同 ああーー。
久保 なってます。めちゃくちゃ……。
ヒャダ それはほんと、そうですね。
久保 最近よく思うのが、「あの頃はただ図々しく生きてただけだったな」って。
ヒャダ そうですね。鈍感にね。
久保 「すごく仲良かったんじゃなくて、図々しさで乗り切ってただけだった」ということに気づいて、カーッと恥ずかしくなる。最近、犬を飼うことでできた知り合いがいてさ。すごくいい人だし、前もその人の車に乗せてもらったりしたんですけど。
ヒャダ 素敵なことじゃないですか。
久保 でも「相手の車に乗ること前提で甘えてしまってるんじゃないか。甘えようとしている人みたいに思われたくない」というガードが自分の中にできて、誘いづらくなってしまって。
──でも相手から迷惑そうなリアクション取られたわけじゃないんでしょ?
久保 それはないんだけど。なぜそう思うようになったかというと、ネットでたまたまママ友グループの愚痴みたいなやつを見てしまって。グループの中で大きい車を持ってる奥さんがいて、いつもその人がみんなを乗せて回ることになってるという。
ヒャダ ドライバーになっちゃって。
久保 「自然とそういう役割になってるのが嫌だ」という書き込みを見て、「自分も相手にそうしてるんじゃないか?」と思っちゃって。私は何も与えることができないのに。ギブ&テイクの関係になれないわけだよ。
ヒャダ 久保さんにも何か背負うものがあったら、対等になるんですかね?
久保 そう思うんだけど、独り身で犬飼ってるのと、ご夫婦で犬飼ってるご家庭とでは、そもそも条件が違うから。たぶん私がテイク側に回ってしまう。
ヒャダ 僕、「歳を取ったら鈍感になって、街のおばちゃんみたいにいろんな人に話しかけたりできるのかな?」と思ってたんですけど、意外にセンシティブになるものなんですかね?
久保 図々しいおばちゃん演技も日々頑張ってるけど、難しい。
ヒャダ となると、いよいよヤバくないすか? 老後。
久保 そうなの。
ヒャダ もっともっと人に頼らなきゃいけないわけじゃないですか。
能町 なのに、もっと人間関係が狭くなっちゃうと。
久保 都会はまだほっといてくれる空気感があるんだけど、海外や田舎で暮らすのは厳ち〜!って。
助けてボタンを押す勇気
ヒャダ 厳ち〜!と言っても、これから圧倒的に頼らなきゃいけないわけでしょ? デイケアとか。「あれができない」「これができない」って自分から言わなきゃいけないわけじゃないですか。「私、これができないんで助けてもらっていいですか?」って、今までの人生で言ったことあります?
久保 そういうのを言う側の気持ちに寄り添っていきたいとは思ってる。でも今までの人生を振り返ったとき、私って「寂しい」が行動原理にないんですよ。「寂しいから会いたい」「寂しいから電話する」という感覚がない。
──犬はどうなんですか?
久保 犬を飼い始めたのも、寂しいからじゃなくて、「犬を飼える体力があるうちに飼いたい」のほうが行動原理としては強くて。でも、今は犬がいて当たり前だと思ってるけど、いなくなったら絶対寂しくなるだろうなというのもあって。それで寂しくなってまた別の犬を……という人もいるんだろうけど、たぶん私はそうしないんじゃないかな。だから「前の犬の存在が大きくてもう次は飼わない」という人の気持ちは、ちょっと分かる。とはいえ、これからどんどん「寂しさを行動原理になんかしないんだからね!」って言ってられなくなるんだよね。
ヒャダ 言ってられないっすよ!
能町 怖いですか? 寂しさを人に表現するのって。
久保 怖い。気持ち悪い。人に絶対聞かれたくない。
能町 それはプライド的なことですか?
久保 そうかもしれない。でもよく分かんない。何なんだろう。
ヒャダ そこらへん、マジでなんとかしないと、本当にヤバいっすよ。僕もそうですけど。
──「寂しい」と言わないのがカッコいいと思っているわけではないんでしょ?
久保 全然ない。
ヒャダ 自分の孤独なんかに人様を……。
久保 巻き込んじゃいけないっていう。
ヒャダ でもそこのリミッター外さないと、マジで死にますよ。
能町 リミッター、私はあんまりないんですよ。
ヒャダ それがうらやましいです。
能町 直接的に「寂しい、助けてくれ」とは言わないけど。でも「寂しい」という行動原理で動くことは全然あります。
ヒャダ なら、生きます。生き永らえます。
能町 それもあって、たぶん二人暮らしを選択したんだろうなと。
ヒャダ そうすよね。
能町 寂しいっていうか、独りでいると心の状態が絶対良くないと感じたから、「これは寂しいとほぼ同じなんだな」と思って、そうなりました。
ヒャダ セルフマネジメントとして他者を用意するっていう。
久保 そこは偉いよ。
ヒャダ 「自分なんかのために人様を動かして申し訳ない」と思ってたら、もうきつくなってきますよ。
能町 「自分なんかのために人様を動かして申し訳ない」と我慢してたのが積もり積もって、結果的に「自分なんかのために人様をめちゃくちゃ動かす」という羽目になる可能性もありますからね。
久保 それもあるし、「今の段階ですでに人に迷惑をかけてるんだぞ」という話になると、「早くこの世から消えなきゃ」みたいな気持ちになっちゃうから。
能町 でも、消えたら消えたで迷惑かかるんでね。
──だからパーフェクトに「迷惑かけない」って不可能なんですよ。
能町 そうなんです。
ヒャダ 不可能なんだったら、もういっそ「爽やかに人に迷惑をかけたい」っていう。
能町 私、「人に頼らない」と思い過ぎてる人に正直むかつくこともあるんですよ。友達と旅行してて、その相手が「人には頼らない」と決めてるタイプだったんです。私にはいろいろしてくれるんだけど、自分のことは自分でやるという。「それくらい私にもやらせてよ」というときでも全部自分でやっちゃうから、ちょっとイライラしてたんです。で、最終日、新幹線で帰るとき、友達の荷物がすごく大きいのに1人で網棚に上げようとしてるんですよ。「2人で上げたほうがいいから、私もやるよ」と言ったら、「いい。自分でやるから」と言われて、カチンときちゃって。「そういうこと言うの、本当にダメだからね!」と言って、無理やり押したことがありました。
久保 優しいな、能町さん。
能町 リミッターが外れ過ぎないのも、コミュニケーションとして問題が出てくると思いますね。
──「信頼されてない」みたいな感じに映るわけだから。
能町 そう、そうなんです。
久保 昔、親とケンカしたときのことを思い出した。ケンカしてても、ノートを買うお金はもらわなきゃいけないわけですよ。でもそういうのも完全に拒否してて。「自分を許してほしいとは思わない。あなたを怒らせた私はそのままで、許してもらうくらいなら視界から消えていくほうを選ぶ」みたいな。それで結局またブチ切れられたんだけど(笑)。
能町 それは良くない。
ヒャダ それずっとやってたら、死にますよ。今までは「強がって生きてて、無理してるね」って感じでしたけど、これからはそれが生き死にに関わるフェーズに入ってきましたから。我々は。
──「助けてボタン」押す練習をするべきです。
能町 そう。それは結局、人と向き合うことを面倒くさいと思ってしまってるってことだと思うので。
久保 コロナ禍になってから人付き合いに関して距離を置くようになったという実感はあって。「人と会わなくてもけっこう平気だ」という気持ちがちょっと強化されてる。犬を飼い始めたこともあって、「私、人間のことがそんなに好きじゃなかったかもしれない」みたいに思い始めてるし。
ヒャダ それはそれでいいと思うんですよ。でも「助けてボタン」を押せないのはヤバいです。
能町 やっぱり、冷房つけないで寝てるおじいちゃんが死ぬのは、それだと思うんですよね。
久保 私の熱中症のこと?
能町 そう。その延長線にあると思うんですよ。「冷房なんてずっとつけてこなかったんだから大丈夫だ」って寝て、暑さで体調がおかしくなっても、「こんなもん、ずっと耐えてきた」って我慢して、「助けてボタン」を押さずにいたら死んでたっていう。
久保 わしじゃよ……(笑)。
能町 嫌、やめて。
久保 完全にわしじゃよ……。
ヒャダ そういうの、ほんとやめてください。久保さんが死んだら、りゅうちゃん(飼い犬)はどうなるんですか。
久保 私がベッドで息を引き取ろうとしてるときに、犬がそばに来てくれてクーン、クーン……みたいな感動的な終わりはないなと確信はしてる。でも勝手に1人で逝くのはなしにしようと思ってます。思ってますけど、「消えるボタン」があったらそっちのほうを押しちゃいそう。
能町 ダメです。押すのは「助けてボタン」にしてください。
ヒャダ こうすればいいんですよ。「おばあちゃん、これが消えるボタンよ」って渡しておいて……。
久保 「消えたくなったら押してね」っつって。「あいよ」ポチッ。
ヒャダ そしたら助けに駆けつけます。
久保 「あれ、消えない? 消えないよ?」。
能町 消えさせませんよ。
「久保みねヒャダこじらせブロス」連載バックナンバーはこちらから。
【ライブ情報】
テレビでは話せないトーク満載
久保みねヒャダこじらせオンラインライブ
次回開催
ゲスト:アンガールズ
配信日:2022年8月20日(土)14:00スタート
(9月5日(日)23:59までアーカイブ配信あり)
配信先:PIA LIVE STREAM
料金:¥2,980(税込み)
チケットはチケットぴあにて発売中
【番組情報】
ほぼ月一で不定期放送中
久保みねヒャダこじらせナイト
次回放送:2022年8月19日(金)
フジテレビ●深2:55〜3:55予定
ゲスト:飯尾和樹(ずん)
*FODプレミアムでこれまでのライブを限定配信中(FOD限定トークあり)。
【プロフィール】
くぼ・みつろう●漫画家。代表作として『モテキ』『アゲイン!!』など。現在は『ユーリ!!! on ICE 劇場版 : ICE ADOLESCENCE』制作中。
のうまち・みねこ●自称漫画家。新刊『私みたいな者に飼われて猫は幸せなんだろうか?』(東京ニュース通信社)、『ほじくりストリートビューザ・フューチャー』(交通新聞社)、『皆様、関係者の皆様』(文春文庫)、『私以外みんな不潔』(幻冬舎文庫)が発売中。
ひゃだいん●音楽クリエイター。J-POPからアニメソング、ゲーム音楽まで幅広く手掛ける。初の著書『ヒャダインによるサウナの記録 2018-2021 -良い施設に白髪は宿る-』が発売中。
投稿者プロフィール
- テレビ雑誌「TV Bros.」の豪華連載陣によるコラムや様々な特集、過去配信記事のアーカイブ(※一部記事はアーカイブされない可能性があります)などが月額800円でお楽しみいただけるデジタル定期購読サービスです。
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