TV Bros.が連載や特集で何度もお世話になった電気グルーヴ、そしてピエール瀧。TV Bros. 5月号にも掲載された、彼とも親交の深い音楽評論家小野島大氏のインタビューを完全版としてお届けします。気付けば15,000文字オーバーのロングインタビューとなりました。瀧さんの半生や現在を聞くと、新生活を始める人達が心が軽くなったり、大事なことを思い出したりするかも(しないかも)というボリューム満点のインタビュー、瀧さん、最近どうですか? Roots of ピエール瀧『完全版』をお送りします!
取材・文 小野島大
撮影 笹森健一
電気グルーヴのピエール瀧のインタビューである。「テレビブロス」5月号掲載の記事の完全版だ。このインタビューはプロ野球開幕前に行われた。
私が瀧や石野卓球と知り合ったのは電気グルーヴ結成直後の30年以上前に遡る。インタビューも数限りなくやってきたが、まさかこんな長い付き合いになるとは想像もしていなかった。お互いにいろいろあった30年間。久々に会った瀧は元気そうで、終始穏やかな笑顔でどんな質問も嫌がらず率直に答えてくれた。
何かに追われることのない、中2の夏のような感じ。
ーー最近の瀧さんは電気グルーヴでの活動のほか、YouTubeやnoteなどを積極的に活用して単独でも活動されてますね。
瀧:このあいだ電気の新曲をレコーディングしたんですけど、単独としてはYouTubeの旅モノのやつ(「ピエール瀧 YOUR RECOMMENDATIONS」(以下ユアレコ)) でたまにロケに行ったり。あとは10年前に『ピエール瀧の23区23時』という、夜中に東京23区をひたすら徘徊するっていう企画で書籍を出したんですよ。それで当時のスタッフに声をかけてまた始めて、それをnoteで公開してます。
ーー映画やドラマはやられてるんですか。
瀧:『サンクチュアリ-聖域-』っていう来年公開予定の相撲をテーマにしたNetflixのドラマシリーズがあって、親方役をやりました。 去年撮影をやって、その合間にYouTubeをやったり、『23区23時』をやったり、という感じです。ほかに去年公開の『ゾッキ』という映画(竹中直人監督)にちょい役で出ましたね。
ーーふむ。Facebookとかを拝見していると、草野球やったり料理したり。
瀧:釣りに行ったりとか(笑)。
ーーそう(笑)。以前と比べてゆったりと人生を謳歌している雰囲気があるなぁと。
瀧:謳歌してる(笑)。謳歌するしかないなぁというのもあるけど(笑)、ただ家に引きこもってても不健康だし。でもーー語弊があるかもですけどーー楽しいですよ。ゆとりがあるって言ったら変ですけど。
ーー以前は時間に追われる生活があったと思うんですけど。
瀧:うん。
ーーそれがなくなって、ちょっとマイペースにできている感じがあるわけですね。
瀧:そうですね、本当は電気をもうちょっとやれたらよかったんでしょうけど、このコロナ禍なので、ライヴとかもできないですし。「じゃあ配信やったら?」っていうのもあるけど、やっぱり配信は……何か……やっていてもちょっと虚しい感じ、っていったら変だけど。
ーーああ。
瀧:お客さんと相乗効果でドン!ていう瞬間がないので、あんまりこう、想像の域から出ないんですよ。やっぱりライヴってね。お客さんもこっちも、想像の外側に行く瞬間が一番ピークだったりするから。それも(配信では)ちょっとやりづらい。でまぁ、割と時間もあるので、じゃあ家の事ちゃんとやってみようとか。
ーーはい。
瀧:あとはまぁ……友達であったり、いろんな人が誘ってくれるのに、前は忙しくて断ってたのが、今は「行きます、行きます」って、積極的にジョインさせてもらったり。そういう、ゆとりのある精神状態ではありますけどね。仕事だったり時間だったりとか、何かに追われている感じがない。なんだろうな、この…中学生っぽい感じ(笑)。中学1年の時に俺、剣道部だったんですけど。
ーーはい。
瀧:その剣道部の先生が厳しすぎて夏くらいに(剣道部を)ドロップアウトしちゃうんですよ。そこから中2の夏くらいまで1年くらい、ずっと帰宅部みたいな。生徒会はやっていたけど、部活やらないで放課後は生徒会室でダラダラしたりとか。早く帰って夕方からアニメをハシゴしたりとかっていうような時があったんですけど。なんかそれ以来だなって思って(笑)。
ーー電気結成前の幡ヶ谷、笹塚時代にもなかった余裕というか。
瀧:幡ヶ谷、笹塚時代は…バイト行かなくちゃいけないとか、やらなきゃいけないことがそれなりにあったけど、今はやらなきゃいけないことすらないっていう感じだから。
ーーそんな状態で「このままじゃまずいな」とか、そういう感じにはならないですか。
瀧:まぁその……何かやらなくちゃ、っていうのはあるけど「これはこれでいいかな」っていう所もちょっと実際あったりして。こんな状態でも「何かやりませんか?」って声をかけてくれる人達もやっぱりいるので。それが例えばYoutubeの旅モノであったりとか。23区に関しては僕がお誘いして(スタッフが)「いいですねやりましょう」って応えてくれたんですけど、そういう意味で気心が知れた人たちと楽しくやれている。初めての現場で「この人どういうキャラクターかな」とか、「どういう現場なんだろう」ってレーダーでつかんで、どこが自分の立ち位置か探ってるような、そういうものではないんですよ。なんだろ、このゆとりのある精神状態は悪くはないかなっていう気がしますね。
ーーなるほど。
瀧:だから小野島さんとFacebookで野球のことでやりとりしたりとか出来るわけですし(笑)。
ーー確かに(笑)。
瀧:(笑)そんなことなかったじゃないですか、今まで(笑)。小野島さん、思ってませんでした?「こいつものすげー野球見てんな、今年」って。思ったでしょ(笑)?。俺も小野島さんに対して同じこと思っていて。「すげー見てんな!」って(笑)。
ちょっとプロの現場を見てみようと思った。
ーーお互いヒマだってことですか(笑)。そもそもご自分の原点というか、ホームは電気グルーヴであると常々おっしゃってましたよね。それとは別に、例えば仕事上で「これをやりたい」とか「あれを実現したい」とか、そういう目標は何かあったんですか。
瀧:それはねえ。んー……あんまりなくて……僕の事を半分は役者みたいに見ている人も結構いると思うんですけど、役者だって目指していたわけでもないですしね。「よし、今日から俺は役者だ!」っていう瞬間があったわけでもないので。声がかかって現場に行っているうちに割と場数が増えてきて、対応力が出てきたのかどうかは分からないですけど。そういうところで役者やってたりっていうのもあるし。
ーーなるほど。
瀧:電気もね、もともと「人生」っていうバンドをやっていて。「人生」を解散して、自分達が好きな感じのやつ(音楽)を、自分達の好きなようにやれるもの、として始めたのが電気グルーヴだったので。それがたまたまデビューになっちゃった……っていうと変なんですけど。「電気グルーヴで天下取ったるぜ!」っていう感じもなかったし。うーんなんだろう、インディー・バンド業界にいて「今度はプロの世界らしいぜ。ちょっとどんなもんか見てこようよ」みたいな。当時まだ22歳だったんで。ポシャったところで25くらいだから、もう一回やり直せるんじゃないのっていうぐらいの感覚で。「ちょっとあっちの現場見に行ってこよう!」みたいな。
ーーわかります。
瀧:卓球君は(自分の考えとは)違ったのかもしれないですけど。でも僕に関していえばそんな感じ。
ーーデビュー前は映像関係の仕事やってたんですよね。
瀧:「人生」が終わってビデオ制作会社に入ったんですよ。PVとか作るような。ああいう音と映像を融合するPVを作るのはカッコいいなぁっていう。それが唯一、自分で「やろう!」って思ったものかもしれないですね。
ーーあぁ、そうですか。
瀧:この世界でやれたらいいなぁって思って、アクションを起こして制作会社にバイトで入るんですけど。うん、そこ…ぐらいかもしれないですね。
ーーなるほどねえ。
瀧:もともと東京出てきた理由も臨床検査技師の専門学校に通うためで。今で言うとPCR検査とかやるほうの。専門学校に入って、国家試験を通って、臨床検査技師っていう技師になるために一応、上京したんですよね。まぁ半分は家から出たかったっていうのもありましたけど。一応化学とか生物とかも好きだったからそっちかなと思ったけど、それも消去法ですし。医者は無理だし(笑)。ここから一浪して勉強したりするのギヴ(アップ)だし…、野球部3年やったしな…専門学校だったら推薦で、ノー試験でいけるんじゃね?っていう感じの。で、東京がいいなぁみたいな。
ーーそういう経緯で東京に出てくる若者は多いかもしれない。
瀧:そういう割と消去法でやっていた中で、ビデオ制作会社で映像と音楽をやりたいって思ったのが、唯一能動的に動いた経験かもしれないですね。「人生」をやりながら、まぁ半分遊びみたいなものですけど、そういうものをしながら、東京でしばらく過ごすのも悪くないかなぁっていう。
ーーなるほど。YouTubeで「Roots of 電気グルーヴ」っていう番組もやってますが、瀧さんにとっては音楽は人生でどれくらいの比重を占めているんですか?
瀧:音楽……僕、ミュージシャンかどうかって言ったらまた微妙なラインじゃないですか(笑)。でも音楽にここまで連れてきてもらったっていう自覚はあるんです。YMOから始まってクラフトワークとかディペッシュ・モードとかニュー・オーダーとかーー卓球君経由ですけどーー聴くことで視野が広がったり考え方がシフトチェンジした部分というのはあるので。もちろん未だに好きでずっと聴いていますけど。なんだろうな……自分で作るっていうよりは、音楽のフィールドにずっと居させてもらうみたいな感じ……の感覚のほうが強いですね。でもまぁ、音楽がなかったらこうして今(ここに)僕は座っていないですから。そういう意味では、すごく大きなものだけれど、特別比重がでかいわけではないと思いますけどね。
バンド、ピエール瀧 とベートーベンについて。
ーーベートーベン(ピエール瀧とベートーベン)もライヴ一回きりだし(笑)。
(※編集部注:ピエール瀧 とベートーベン ブラボー小松や砂原良徳らによるロック・バンドを従えたピエール瀧が、「電気グルーヴ」の楽曲や、前身バンド「人生」の曲を演奏したスペシャルバンド。)
瀧:あぁあれね(苦笑)。
ーー面白かったのにもったいないなぁと(笑)。
瀧:マジっすか(笑)。ベートーベンね。やった方がいいですけどね(笑)。バンドっていっぱい練習するんだなぁって(笑)。
ーーそりゃそうでしょ(笑)。
瀧:電気ってそこまで詰めないんですよね。その、なんだろう。スタジオでつくりあげたものをステージで再生するわけじゃなくて。スタジオで6分か7分くらいまで火を通しておいて、最後の火はステージで入れるみたいな感じのことが多いので。
ーーなるほど。
瀧:そういう意味でベートーベンやる時は「ちゃんと練習やるなぁ」みたいな感じの。「まぁでもそりゃそうか」っていうか(笑)。
ーー自分のためにバンドメンバーが集まってるのに(笑)。
瀧:そうそう(笑)。そうなんですけどね。
ーーなるほどね。じゃ映像の仕事は能動的に芽生えた自分のやりたい事だったと。
瀧:制作会社に入ったのと同時期に電気グルーヴも始まるんです。なのでしばらくは並行してたんですけど、メジャーデビューの話があったので、そりゃあメジャーデビューを取るじゃないですか。小さい制作会社ですけど、一応かわいがって貰っていたので、一年で抜けちゃうのも申し訳ないなと思いつつもちょっと(メジャーに)「行ってきます」ってことで抜けるんですけど。
ーーなるほど。
瀧:制作会社では本当にゼロから現場も何も知らないまんま始めたのでしんどい日々は日々だったですけど……どうやって映像作品ができていくのか、依頼だったり、自分が作りたいっていうものがあって、そこから準備をして撮影があって。で撮影したやつを今度は編集したりして。で、MAとか入れてっていう一連の流れで、みんなの頭の中にしかなかったものが、最後に具現化するわけじゃないですか。その過程がすごく面白くてね。ないものがあるものになる、という。
ーー電気グルーヴが軌道に乗ることによって、映像制作への憧れは別の形で実現することになりましたね。電気の活動をしている最中でも自分でビデオを作ったり。そこで若いころの気持ちというか夢がちょっと満たされた感じはあったわけですか。
瀧:そうですね…『体操』シリーズとか、あの辺は全部作ってますしね。でもそれも”ある程度”ですかね。その、予算とかいろんなのもあるけど、現場でやれるものとしては、ある程度は満たされた感じはしますけど。
ーーそこで本格的にプロの映像作家を目指そうという気持ちは湧いてこなかったんですか?
瀧:映像作家となると、今度は依頼されて作らなくちゃいけないじゃないですか。今まで僕が作ってきたものって、それこそ古いものだと『宝島』のビデオシリーズ『VOS』に入ってたやつ乗ってたやつとか(『電気グルーヴ的こころ』)、「ビコーズ」っていう電気の初期の頃の曲のPVだったりとか。『体操』シリーズだったりとか。「聖☆おじさん」(電気グル−ヴ×スチャダラパー)「誰だ」のPVだったりとか。結局自分が考えて、自分らのものとして出したじゃないですか。
ーー自分たちの作品を自分で作った。
瀧:でも本当のプロって依頼されて作る、作らなくちゃいけない感じがする。だからそういう部分で、映像を作るのは楽しいけど、プロの映像作家としてやっていくのは……ちょっと違うものになっちゃうのかなぁっていう。たぶん(自分が)依頼されて作るものってめちゃくちゃつまんなそう、って思うし(笑)。
ーーああ、なるほど。瀧さんの活動って、電気グルーヴは別としても、それ以外の活動ってーーこの言葉が適切かどうかは分からないけどーー趣味の延長っていうか。
瀧:うんうん。
理不尽な環境でも楽しむ角度は見つけられるかも。
ーー自分の好きなこと、趣味にしていることがそのまま仕事になっている感じが強い気がします。そういう自覚ってありますか?
瀧:あります、あります。例えばYouTubeで今やってる「ユアレコ」も、その前にやっていた『城下町へいこう』(BS朝日)っていうお城巡りの番組も、趣味半分っていうのはあるんですよね。たとえば映像制作って、みんなの頭の中にしかなかったものが、最後に具現化するわけじゃないですか。カメラマンや美術さんの技術や工夫で「ない」ものが「ある」ものになる、制作会社にいた時って、その過程がすごく面白くて。マジックというか…魔法の世界、っていったらちょっと違うんですけど。そういうのが面白かったんですよね。で、のちに役者の現場に行ったりするようになるのも、「あそこの現場はどうやって作ってんのかな」とか「すげーなこのセット」とか、そういう現場を見たいという好奇心が半分あったりする。そういう意味では仕事も趣味半分、好奇心半分というのはあるのかなと思っています。
ーー自分が好きでやっていることがだんだん義務になってきて、これをやらなきゃいけない、これをしなきゃいけない、逆にこれはやっちゃいけない、みたいな制約が出てくる。仕事である限りそれは避けられないことだと思うんですが、そこでやる気がなくなるとか、モチベーションが落ちるとか、そういうのはありませんでした?
瀧:えー…まぁでも、よっぽどじゃなければ、ある程度楽しめる素養はあるっちゃあるんですけどね。ものすごいハードでしんどい現場行って「オイえぐいな、ここ」みたいな感じの(笑)。「ピリッピリしてるじゃん」みたいなところも「じゃあちょっと、このピリッピリを楽しんでみよう」みたいな。っていう風にはなれるので。趣味の延長ではありますけど、きつい現場でも行ったらどうにか楽しめる。楽しむ角度を見つけてそこに自分を置くことはできるかもしれないですね。
ーーそれは仕事としての自覚とはちょっと違うんですか?
瀧:仕事としての部分はあるかもしれないです。ほんとにその……団体芸じゃないですか。どこの現場も。団体芸の中で自分は何の役割でどうするのか考える。無意識かもしれないですけど、そうやっている部分はあるかもしれませんね。
ーー事件で逮捕される前とか、しんどい状況だったじゃないですか。そこで「楽しむ」という所からちょっと離れちゃった、ということはありませんでした?
瀧:うーん……とにかく、現場は楽しいんですよ、結局。「ほんとこの監督クソだな」みたいな人もいるんだけど。それはそれで、クソを楽しめるって言ったら変ですけど。
ーー(笑)。
瀧:だって野球部で3年間部活やってたんですよ!
ーーはははは、理不尽な環境には慣れていたと(笑)。
瀧:「なに?なにこれ?」っていう環境に身を置くのは少しは身についていると思うので(笑)。「クソみたいだな~!」って思ってるけど、これはこれで楽しもうって。終わりがあることだし。どんなにエグくても。そういう所では、楽しめるんですよ。当時一番しんどかったのは時間ですね。時間がとにかくなくなっちゃって。
ーーああ、なるほど。
瀧:うん。いくつものことが並行して動いていたりしたので。立ち止まって客観的に自分を見て分析する時間が全部なくなっちゃった時期があって。もう全部、主観オンリーでいかないととてもじゃないけど回らない、みたいな感じはありましたね。
ーー役者としてのプランはあったんですか? たとえば、こういう地位まで行きたいとか、こういう作品に出たいとか。
瀧:ないですねぇ…、ないんですよね。だから、現場に行くとプロの役者さんと話したりするでしょ。そういう役者さん同士が話しているのとかを聞くと、「だれだれさんの監督でやってみたい」とか「〇〇に出たい」とか。「こういう役がついにやれる事になってヤッター!」とか。そういうのを話しているのを聞いたりすると、そうなんだ!っていう。「(でも自分は)どうなんだ!?」っていう。
ーーうん。
瀧:みんな自覚をもってそこ(目標)に向かって邁進してるんだなぁ、すげえなぁ、若いのに、みたいな感じで(笑)。
ーーああ、その距離感、なんとなくわかります。
瀧:感心しちゃうって言ったら変ですけど。僕は全然それがない。言ったら(作品は)監督のものじゃないですか。
ーーそうですね。
瀧:仮に僕が主演をやったとしても、僕の作品じゃないじゃないですか。監督だったりプロデューサーの人の作品だと思うんですよね。こっちはその作品にこう……パーツを渡す係って言ったら変ですけど。良い切り身をいっぱい渡しておけば、料理するのはこの人だ、みたいな感覚なので。だから役者としての野望はないですけど、せっかく現場に行くんだから、良い切り身を出すように頑張る。出来るとこまではやらなきゃなと思いますけど。
ーーそれはやっぱり、オファーがあったら誠実に応えよう、という。
瀧:そうですね、はい。で、出来そうもない……というか「別にこれ俺じゃなくてもいいんじゃない?」と思ったらお断りすることもありますし。つまり…現場で萎えたら終わりだと思うんですよね。僕の性格上。無理して何とかやる、みたいな事になった瞬間に、途方もなくつまらない人間に成り下がるような気がするんですよね。
ーーああ、なるほどね。
瀧:それは電気もそうだし、役者の世界、現場もそうだし。無理してイヤイヤ付き合う感じっていうのになった瞬間に、もう……顔に出ると思うんですよね。おそらく。だからそうならないように、なるべく現場で足場を見つけようとするし。「この監督はクソだけど、でもこのスタッフたちの悪口は面白い!」みたいに考えながら仕事に行くとか。そういう、「今日は楽しいことがある!」っていうような感覚で家を出たいんですよね。それは未だに昔から変わっていないことかもしれないですね。
ーー今はそれを家庭とかプライベートでちゃんと楽しめているんじゃないですか。
瀧:そうですね。「家の中楽しいな」っていう感じがある。前はその、外行って、出てから色んなものをどう楽しんだらいいかって考えて。家に帰ったら寝るだけみたいな生活だったんですよね。それがこの2.3年は、事件とかコロナとかあって家にいる時間が結構増えたんで「家も楽しいぞ?」っていう感じ。
ーーそれはSNSを見ても伝わってきます。料理とかよく作ってますよね。
瀧:そうそうそう。色んな人に言われたんですよね。「1年くらい謹慎するんだったら、英語とかちゃんと勉強し直してみたら?」みたいな。「新しいことをやってみたら?」みたいな。いいチャンスだからって。
ーーそういうこと言う人いるよね(笑)。
瀧:「確かにそうかもな」って思ったこともあったんですけど。でもそれができなかった時の挫折感が半端ないじゃないですか。
ーーわかる。「結局なにもやらなかったよ~」みたいなトホホ感(笑)。
瀧:そうそう。そうなるのが嫌だったんで。自分のモノグサ感をわかってるから。だったら新しいことを始めるというよりは、今まで何となくやってきたものの精度を上げることにしたんですよ。料理とかも好きで今までもたまに作ったりしてたんですけど、クックパッドとかちゃんと見てやるとか。「あの料理作ってみよう」って挑戦して、仕上げるとか。
家の掃除みたいなのをちゃんとやったりとかそういう今までやってきた事の精度をもう一回上げてみるっていうのを、しばらくずっとやってました。ちゃんと出来ると嬉しいからFacebookに書くと、小野島さんの目に止まったりするっていう(笑)。
ーー(笑)ご家族は喜んでるんじゃないんですか。一緒にいる時間が長くなって。
瀧:まぁ、そうですね。忙しく飛び回ってた時は、それはそれで良かったんでしょうけど。でも、今家にずっといるのを喜んでるというか、ほんとに普通に受け入れてくれてる。よく「コロナでお父さんがずっと家にいると困るんだけど」みたいな話を聞くじゃないですか。ずっと一緒にいる事で変な感じになっちゃって、破綻するかもみたいな。ウチはそういうのは一切ないので。喜んでいるっていうよりかは、ほんとにのほほんと、ごく当たり前の如くいる感じですかね……あっ、全然話が変わるんですけど。ずっと(家に)いたから、去年初めてプロ野球の一球団の試合を一シーズン全部見たんですよ。
ーーおお、ロッテの?
瀧:ロッテの開幕ゲームから最終戦まで、DAZNで全試合観たんですよ。
ーー(笑)それはすごい。去年は楽しかったでしょ?
瀧:去年はね、もしかして優勝するかもしれなかったから面白いシーズンだったんですけど、フルで観るのはなかなかの苦行で(笑)。
ーーソウル・フラワー・ユニオンの中川敬君が、やっぱりコロナで家にいる事が増えて、阪神の試合をめちゃくちゃ観るようになって、矢野采配の問題点がよくわかったと言ってましたよ(笑)。
瀧:なるほど(笑)。何でそこでそれなんじゃと(笑)。
ここより、後半!後半はピエール瀧、トークのロデオ術、瀧の85% は何で出来ている?そして電気グルーヴのライブが面白い理由に迫ります!
この記事の続きは有料会員限定です。有料会員登録いただけますと続きをお読みいただけます。今なら、初回登録1ヶ月無料もしくは、初回登録30日間は無料キャンペーン実施中!会員登録はコチラ