シンガー・ソングライター/ピアニストのリクオと、彼の師匠でもある関西ブルーズの大御所・有山じゅんじを迎え昨年11月に第1回をお届けした不定期連載「旅と酒とブルーズと」。メジャー・シーンとは一線を画し、草の根のネットワークを頼りに全国のライヴハウス、カフェ、飲み屋などをツアーして回る“ツアー・ミュージシャン”をクローズアップする特集だ。
その第2弾は、これまた関西ブルーズの巨人、”天使のダミ声”とも称される超個性的な歌声で知られる木村充揮にご登場願った。憂歌団時代のヒット曲「嫌んなった」「おそうじオバチャン」「シカゴ バウンド」「胸が痛い」などは多くの人の記憶に刻まれているはずだし、ソロとなった現在も年に100本を超えるライヴで全国のファンを楽しませている、なんともお茶目で素敵な67歳。そんな木村さんに、ブルーズのこと、憂歌団のこと、ツアーのこと、大好きなお酒のことなどをお聞きしたいと思う。
(大阪・西心斎橋のBar「SOPHIA」にて)
取材・文/染野芳輝
6日連続!愛すべきツアー・ミュージシャンたちを紹介する不定期連載「旅と酒とブルーズと」がスタート!
めちゃくちゃええでとアホみたいに自慢する気もないねんけど、大阪を離れようと思ったことはないねぇ
ーー「旅と酒とブルーズと」という、木村さんにぴったりの企画でインタビューさせていただきます。木村さんはいろんな場所を旅しながら歌ってきたわけですけど。
ひとつの街でずっとやってる人もいれば、あっちゃこっちゃ旅しながらやってる人もいてね、人それぞれですわ。で、僕はあっちゃこっちゃのほうやね。
ーー大阪を拠点に。
ずっと大阪に住んできたからね。大阪のやつでも東京に行ったり、いろんな所に移り住んだりやけど、どこにおっても元気やったらええ。僕がずっと大阪におるのは、たぶんズボラだからかな思うねん。特別ね、大阪の街はめちゃくちゃええでとアホみたいに自慢する気もないねんけど、大阪を離れようと思ったことはないねぇ。
ーーやっぱり大阪が落ち着くんですかね。
そうやな。ライヴでいろんな街に行って、ええ所やなぁと思うことはよくあるけど、住もうと思うことはないなぁ。テレビつけると相撲やってるけどな。
ーーん? あ、”住もう”と“相撲”か。むむぅ…。(木村さんはこの手のダジャレが大好き。ライヴのMCでも連発、共演者が戸惑う場面もしばしばだ)え~と、インタビューさせていただくのは初めてなので、昔のことから聞かせていただいていいですか?
ええよ。どんどん聞いて。
ーー子供の頃から音楽は好きでしたか?
まぁ普通に。音楽嫌いな人なんて、なかなかいてないんちゃうかな。ただ自分で演るようになったのは高校に入った頃からやね。
ーー内田勘太郎さんに出会って…。
クラスが一緒やってん。で、仲ようなって、ほな一緒に遊ぼか?ってなった。2人でギターじゃかじゃか始めたわけ。
ーーその頃はどんな音楽を聴いていたんですか?
ちょうどいろんな音楽が出てきた頃やったから、いろいろ聴いたけど、例えばフォーク・ソング。僕が初めて買ったレコードがブラザーズ・フォーの4曲入りコンパクト盤で、ブラザーズ・フォーは綺麗でええなぁ言うたら、勘太郎はPPM(ピーター・ポール&マリー)や言うてね。そんな感じで音楽の話をようするようになって。そこにアート・ロックやらニュー・ロックが出てきて、クリームのレコードのライナーノーツ見たら、クラプトンがB.B.キングとかの黒人のブルーズに影響を受けてやってると書いてある。で、あいつ(内田勘太郎)はいろいろ調べて、黒人のブルーズを聴くようになっていって。で、ブルーズはスリー・コードやから一緒にやろうや言うんで、そうかぁ、スリー・コードやったらできるかなっちゅう……そんな感じですわ。
僕はやっぱり黒人のブルーズが好きですね。アコースティックもバンドものも
ーーそうやってブルーズに出会い、2人で演奏するようになったわけですね。
そう。スリー・コードなら簡単そうやな、と。難しいことより、簡単やからいうのが好きですねん。難しいことは嫌い。でもな、簡単なことが一番深いねん。シンプルだからこそいろんな解釈ができるでしょ? それに、シンプルであってもスウィングせなあかんねん。スリー・コードでも、たとえワン・コードでも、ただ単調にやったらオモロくもなんともない。スウィングしてなきゃ。要は気持ちが入ってるかどうか。気持ちひとつやで、ほんま。気持ちはひとつやけど、心臓は3つあんねん。そりゃ珍しいなぁ、ってな。だ~っ!!(笑)。
ーーき、木村さん……。自由ですねぇ。
そうか? へへへ。
ーーいつブルーズってええなぁと感じたんですか?
う~ん、ロバート・ジョンソンやB.B.キング、いろいろブルーズのレコードを聴いてええなぁ思ったけど、聴いた瞬間ば~んってくる感じじゃなかったかな。ゆっくり感じていくタイプなんかな、僕は。でもな、一番はライヴや。B.B.キングの初来日。
ーー1971年ですね。
大阪の毎日ホール、行きました。高3の時やったかな。高3やから参った参ったって、その降参かい!(笑)。
ーー言うと思った。
思った? チェッ! オモロないわ。インタビュー、終わりや(笑)。
この記事の続きは有料会員限定です。有料会員登録いただけますと続きをお読みいただけます。今なら、初回登録1ヶ月無料もしくは、初回登録30日間は無料キャンペーン実施中!会員登録はコチラ