9月18日に開催されたこじらせオンラインライブ(ゲスト:永野)の収録後のおしゃべりです。永野さんがライブで地元宮崎への愛憎(*憎たっぷりめ)を語ったことに刺激されて、三人とも地元の記憶が引きずり出されつつあります。
構成/前田隆弘
もっと文化に飢えるべきだ!
ヒャダ 永野さんの宮崎への憎しみ、すごかったですね。
能町 宮崎って、どこか不思議な県なんですよ。私の中では「ひねくれた野心家」のイメージがありますね。東村アキコさんもそうだし、東国原英夫さんも。
ヒャダ 永野さんもそうですね。
能町 エビちゃん(蛯原友里)もそうなんですよね。ひねくれてるかどうかは知らないですけど、野心家感はある。あと、紗栄子。
──いま挙がった人たち、みんな「地元を飛び出したまま宮崎に帰ってこない」イメージがありますね。地元に帰ってぶらりロケ番組に出るイメージがない。
能町 地元ぶらり旅、紗栄子とエビちゃんは絶対しないですもんね(*)。
*と思ってたら、エビちゃんは宮崎の観光CMに出演していました。
ヒャダ 永野さんが「宮崎を出ていくやつは敵だと思われてる」と言ってましたもんね。
能町 じゃあ永野さん、宮崎出身の友達も全然いない?
ヒャダ いないですね。
──今日のライブ、永野さんの毒々しい語りが、いつもと違う盛り上がりを生んでましたね。
能町 「これこそこじらせ」みたいな感じがしましたね。それに引っ張られて、私の茨城への恨みがついに出てしまいました。
ヒャダ 「変化がない」っていう。
能町 変化ないんだよ、本当に。
ヒャダ 永野さん、「宮崎にはチャンネルが2つしかない。なんでこんな目にあわなきゃいけないんだ」と言ってましたね。
久保 私も昔は長崎でテレ東系が見られなかったから、「福岡うらやましい」と思ってたし。テレ東のネット局って案外少ないんだよね(全国で6局)。でも今はTVerで見られるから。
ヒャダ そういう意味でも、TVerは画期的ですよね。でも永野さん、「『どこでも東京の番組見られるから、どこに住んでいい』という今の風潮が嫌い」と言ってましたよね、
能町 「もっと文化に飢えるべきだ」って。
ヒャダ 「みんな東京目指すべき」っていう。
久保 方言に当たりが強いのもすごかった。「芸人ってこうであっていいんだよな」って思った。
ヒャダ 「孤高のピン芸人」と言われるだけありますよね。
おばあちゃん、自分と切り離して好きになれますか?
能町 久保さんって、地元から仕事で呼ばれたことあるんですか? 佐世保から。
久保 ないね。企画の段階で断ってしまったのはあるけど。
能町 オファーあったのはあったんですね。
久保 別に地元で嫌な思いしたわけじゃないのに、心のどこかで「たまたま私と地元が一緒で、たまたま中高が同じだったからというだけで、他と違う特別な扱いを受けようとするのはどうなんだろう」と思ってるところがある。
──「故郷に錦を飾る」みたいな感覚、全然ないんですか?
久保 ないですね。
能町 それでも久保さんはオファーはあったんですよね。私、牛久から一声も掛かったことないです。別に牛久を褒めてるわけでもないですけど、牛久で育ったことはまあまあ言ってると思うんですよ。でも、牛久からお仕事いただいたり、インタビュー受けたりとか、本当に一度もないんです。逆にすっきりしてますけど。
──オファーが来たら受ける気持ちはあります?
能町 うーん……。
久保 同級生が声掛ける可能性もあるんじゃない?
能町 いや、仲のいい同級生で牛久に残ってる人は1人もいない。そもそも、なんで牛久に残る人がいるのかわからないんですよ。永野さんは宮崎のこといろいろ言ってましたけど、でも宮崎に残る人って、もともと宮崎という地に根を下ろしてる人がたぶん残ってるわけじゃないですか。「代々そこに住んでる」みたいな。牛久はニュータウン的な町だから、それもないんですよ。
ヒャダ なるほど。
能町 「たまたまそこに家を買っただけ」みたいな人が多いから。私、そんなに上京欲があったわけでもないんですけど、でも「牛久がふるさと」という感覚が全然なくて。成人式のときに同窓会行ったら、予想以上にみんな牛久に残ってて、引きました。「なんでこんなつまらない町から誰も出ないの?」と思って。
ヒャダ 上昇志向とかは……。
能町 全然ないんだと思います。同窓会に来たのが地元にいる人ばかりだったのかもしれないけど、とにかく地元にいましたね。
久保 佐世保に残ってる私の友達も、佐世保から出ようとしたことない人のほうが多いかな。身もふたもないことを言っちゃうと、地元にお世話にはなったけど、好きな場所かと言われると、「はて……」みたいな感じになる。
能町 私はお世話になったとも思わないですね。お世話になってもないし、好きでもないです。でも、人から悪く言われるとちょっとむかつきます。
久保 最近考えるのは、「おばあちゃんのことが好き」という感情は、どのくらいその「好き」という気持ちを自分と切り離してるのか、みたいなことで。
能町 自分と切り離す?
久保 世の中の「おばあちゃんが好き」という人のほとんどは、「おばあちゃんが自分にやさしくしてくれるから」という都合で、おばあちゃんのことを好きになってるだけだと思うんですよ。
能町 ああ、なるほど。でも私は別です。完全に切り離してます。人として好き。
久保 それが大事だと思う。「自分に特別扱いをしてくれるわけじゃないおばあさんを好きになることが、(一人の人間として)独立したことになるんじゃないか」とよく思ってたから。自分にとって見返りが何にもない人が、勝手に幸せになっててもらいたい。「自分に何にもしてくれてないこと前提でいかに好きでいられるか」という考えでいくと、自分が生まれ育った町や、行ってみて良かった町じゃなくても、勝手な憧れで好きな町を選んでもいいんだと思う。何なら自分の親のことも、純粋に人として好きか、今までの関係を全部リセットされて親と仲良くなれるかと言われると……。
能町 親はちょっと自分と密接過ぎてるから、切り離すのが難しい。おばあちゃんのほうがちょっと距離がある関係だから、自分と切り離して好きになれる感じはする。
久保 芸能人のファンだって、「自分にサービスしてくれたから好き」という気持ちもわかるけど、それよりももっと自分の中の「突き放した好き」を突き詰めたいな、と推しに対して思うわけよ。今までの関係性込みで好きかどうかじゃなく、そこを切り離したところで好きなものを追いかけてもいいのでは……と思ってる。たまたま生まれた地元が好きで、親も好きという運のいい人はいるけれど、そうじゃない人も世の中きっとたくさんいるだろうから。「自分の好きで選ぶ」という挑戦が、若いうちからできるといいよなと思う。
能町 それでいうと、やっぱり青森は私のアナザーホームタウンですね。青森プチ移住は大成功だと思うんですけど、観光地にはあんまり行ってなくて、住んでる感のあることばっかりしてるんですよ。今まで行ったところだと、ジムとストレッチと、あとコンタクト作りに行ったりとか。ジムでついてくれるトレーナーと雑談するんですけど、「東京から青森に来た」ってちょっと言いづらいんですよね。理由がわけわかんないから。結局、何となくはしゃべったんですけど、その人にも「もともと青森に住んでて、戻ってきたわけではないんですね」って言われて。「こういう人、あんまりいないんだろうな」って思いましたね。でも私の中では居心地いいんです。
久保 それなら良かった。今までネットで「田舎暮らししてみたけど、想像と違って嫌だった」みたいな極端なパターンばかり見てたから。
能町 私、田舎暮らしだと思ってないんです。まあまあ都会に住みたいと思ってたんで。地方の都市部に住みたい。だから青森移住はうまいことやったなって感じですね。牛久は全然第一のふるさとじゃなくて。もはや青森のほうを第一のふるさとにしちゃったほうが都合がいいくらいです。牛久で暮らすのは、本当に考えづらい。
ヒャダ 僕、8月が異常なまでに大阪仕事が多くて、大阪に5回帰ったんですよ。大人になるまで大阪にいたんですけど、大阪にお友達もいなかったし、ませてもいなかったんで、飲み屋さんやご飯屋さんを全然知らなくて。でもいま大阪を歩くと、ちょっと歩いただけで、おしゃれな店やおいしそうな店がいっぱい見つかるんですよ。今までは「ホームタウンだから」という色眼鏡があったから、ちょっとディグれない感じがあったんですけど、ホームタウンという意識を一回外して……それこそさっきのおばあちゃんの話と一緒で一回関係性を外して、一つの都市として見たときに、大阪は魅力的なんじゃないかな、と最近思っていて。実家と関係なく、大阪という街を見つめてみようと考えてます。
牛久に暮らすということ
能町 それはいいことですね。いや、大阪はそれができる町ですよ。牛久はできないから、ほんとに。
ヒャダ 選択肢がないですからね。
能町 一つの町として見て、改めてつまらない町だなって。
一同 (笑)
──そりゃ仕事来ませんよ(笑)。
能町 そりゃそうですよね。散歩の連載をやってるんですけど、牛久で気になる場所があって、久しぶりにそこに歩いて行ったんですよ。その途中にある国道を、たぶん20年ぶりに歩いていったら、ひどい有り様になってて。おそらくもともとCOCO’Sか何かのファミレスだったものが居抜きになって、一回自動車屋になった後、それもつぶれて自動車屋の事務所になってるとか、前は石丸電気だったのが、居抜きで逆に地元のリフォーム会社に戻っちゃってるとか。すべてのチェーン店の箱物が一回は居抜きになってて、お店ですらなくなったりしてるんですよ。
ヒャダ 全員、諦めたんですね。
能町 いわゆる「(駅周辺よりも)バイパスのほうが栄えてる」を、さらに一段階超えてるんですよ。バイパスが栄えた後、さびれてる。
ヒャダ もはやそれは限界都市じゃないですか。
能町 ほんと限界なんですよね。
──もともとはベッドタウンなんですよね。
能町 ベッドタウンですね。もっとさかのぼれば、ただの農村なんですけど。
──能町さんのお父さんも、そこから東京に通勤してたんですよね。
能町 まず親が就職で上京するんですけど、東京に通勤する前提で牛久に家を買ったんですよ。当時は遠距離通勤が当たり前だったし、何より「マイホームを買って一人前」みたいな時代だったし。そこからわりとすぐ転職して、同じように都心の会社に勤めるあてがあったらしいんです。もう就職試験もほぼ受かってて。
ヒャダ なるほど。
能町 だいたいドアトゥドアで片道1時間30分で、当時としてはまあ許容範囲なんですよ。でもそのくらいの通勤時間を前提にして牛久に家買ったのに、最終的に何かの理由で落ちたらしくて。そこから少し無職期間があった……というのは、大人になってから聞いたんですけど。うちの父親が、就職活動はもちろんしてたけど、すぐには決まらないから、家で一人でトランプのソリティアをやってたらしいんですよ。
ヒャダ わーーーーっ!
能町 しゃっしゃっしゃっしゃっ、と器用にきって、ぺろぺろぺろっ、とやって。お父さんがソリティアやってる音が、うちのお母さんはトラウマだったらしいです。
一同 (笑)
ヒャダ ソリティア……文字通りの「暇つぶし」ですよね。
能町 それから就職は決まったんですけど、勤め先が世田谷区のほうだったんですよ。だからまず牛久から東京まで出て、そこから東京を横断するような感じなんです。片道2時間くらいかかる。でも結局、そこで30年くらい勤めましたね。
久保 それはお父さん頑張ったね。
能町 いま思うと、「お父さんよくやったな」と思いますけど。だって私が起きたらもう家出てるか、出る準備してるかで、夜も一緒にご飯食べないほうが多かったんですよ。帰ってくるのが夜10時くらいだから。私が子供のときに……すいません、思い出語りが止まんないんですけど。
久保 大丈夫、大丈夫。
能町 子供のとき、親が忘れものをして、平日にお母さんと一緒に親の会社に届けに行ったことがあるんです。で、駅を降りて、お父さんの会社に歩いていく途中で畑があったんですよ。それを見て、「東京の会社だと思ってたのに、こんな田舎の会社!?」と思って、ショックを受けましたね。
ヒャダ 「お父さんかわいそう」って。
能町 しかも、当時のラッシュって半端なかったんですよ。牛久駅の時点ですでに座れないんです。
一同 えええ!?
能町 牛久って座れないんです。どうしても座りたいときは、牛久から3つ先の取手に行って、そこ取手始発を待つという手があるんですけど、当時は基本、牛久からは座れなかったんです。だいたい、牛久の一つ手前で席が埋まるんですよ。
──ということは、そのへんから大勢通ってたってことですよね。
能町 みんなそれで1時間立ちっぱなしです。
久保 それが日本の経済を支えてたんだね……。
能町 一回、父親と一緒にそのラッシュ時に乗ったことがあったんですけど、柏あたりがもう地獄で。
久保 「柏は地獄」。
能町 柏に電車が着くと、電車は15両もあるのに、駅のホームで待ってる人が1つのドアに対して、30人くらい並んでるんですよ。でも電車は柏に着いた時点でパンパンなんです。
ヒャダ そんなの、どうやって収納しろと……。
能町 ドアが開いたらみんなだーっと殺到して、いったん入ったら後ろから押されるから押されるがままになって、最後の人は背中から行って押し込んで、ドアの上の部分に手を掛けてふんばってどうにかギリギリで体をドアより内側に入れるんです。
ヒャダ はいはい、いますね。
能町 それでシュン、とドアが閉まって、ホームには乗りきれなかった人が5人くらい残って次を待つという感じ。あれを見て私、「本当に通勤したくない」と思ったんですよね。
久保 私、ベッドタウンというものを経験したことがないから、通勤、通学に1時間以上かけるとか、想像もつかなくて。
ヒャダ いや、できないですね。
久保 地方出身者の割には、「目的地までバスで20~30分以内につかないと困る」くらいの感覚がずっとある。だから、今も池袋から離れられないんだよね。
能町 だから東京の郊外に住むのは、私の中であり得ないんですよ。都心に行くたびにラッシュに巻き込まれるので。都心に住めないんだったら、県庁所在地みたいな地方都市のほうが全然いいです。
──当時はスマホがないから、1時間か2時間ぎゅうぎゅうになって、ただ揺られてるだけだったんですかね。雑誌を読む隙間もなさそうだし。
能町 ただただ、それです。せいぜい文庫本を必死に読む程度。
ヒャダ 新聞を奇跡的な小ささで読む方もいますよね。
久保 そりゃ新聞買うよね。そんなに時間があるなら。
能町 また帰りの常磐線が地獄なんですよ。ラッシュはさすがに朝より緩めなんですけど、弛緩度がすごくて、ほぼ飲み屋になっちゃってるんですよ。乗って飲むのが当たり前で、みんな缶チューハイとか抱えて乗るんです。だから電車に乗った時点でめちゃめちゃおつまみ臭いんですよ。たまに吐いてる人もいるし、ほんと常磐線は地獄です……だから、やっぱり牛久は愛せない。
久保 そういえば私、不便なところにまだ住んだことがない。
能町 牛久は不便というほど不便でもないんですよ。日用品の買い物くらいなら、地元で済ませられる。スーパーも近いし、コンビニも普通にあるし、生活に不便ってことはないんですけど、文化的なものは本当にないです。駅前の大きなスーパーもつぶれちゃったし。牛久のひどさを言うと止まらなくなるんですけど、私が小学生のときは駅前になぜか関西系スーパーのイズミヤがあったんです。4階建ての。で、その隣に6階建ての西友があったんですよ。ちょっとしたデパート扱いできるような。先に建ったのは西友なんですけど、駅により近い場所にイズミヤができたから、西友が廃れて、私が中1くらいのときにつぶれたんですよ。その後、駅の一等地なのに西友の建物は10年間くらい何のテナントも入らなくて、どんどん廃虚になってって、今は何かの会社が入ってるんですけど、お店ではないんです。
──イズミヤのほうは?
能町 イズミヤはその後いったんは栄えたんですけど、結局それもバイパス沿いの店とかにどんどん取られていって、5年くらい前につぶれて。だから、いま牛久駅前は「ほぼ廃虚」と「ほぼ廃虚」が並んでる状態(笑)。ほんとにひどいです。
──で、さっきの話だと、国道沿いの店も居抜きになったりしていると。
久保 そういう町ってこれから10年後とか、どうなっていくんだろうね。市長、どういう町を目指してるんだろう。
能町 人口はまだ減ってないんですよ。ニュータウン(ひたち野うしく)を造ってるから、粘ってるんでしょうけど。
久保 (スマホを見ながら)あれ? 「るるぶ牛久」(*)が出てるよ。
*2018年発行の「るるぶ牛久特別編集版」
ヒャダ 何でもあるな、「るるぶ」。
能町 何もないよ、牛久。なぜ作った。大仏とワインしかないですよ。
久保 「都心から50分 日帰りショートトリップ」って。泊まらせない(笑)。
能町 泊まらせる気がない。ろくなホテルないから、しょうがない。
服屋、カラオケ、ライブハウス、すべてが恐怖だった
──あれ見ました? 最近話題になった『かまいたちの知らんけど』のイズミヤ閉店の回。
能町 見たかったけど、見てないんですよ。
──ずっと慣れ親しんできたイズミヤ上新庄店(大阪市東淀川区)が閉店すると聞いて、かまいたちの濱家さんが閉店直前のイズミヤ上新庄店を訪れるんです。そしたら少年時代の記憶ががどんどんあふれ出して、あらゆるフロア、あらゆる店舗について語り出すという回で(*)。
*『かまいたちの知らんけど』#34。Amazon Primeの大阪チャンネルセレクトで視聴可能。
能町 そういうのいいな。私これだけ牛久への憎しみをぶつけてますけど、個別に言えば、いろいろ出てくると思うんですよ。私もイズミヤ牛久店には思い出がけっこうあります。
──イズミヤ上新庄店を知ってる人は視聴者の一部なんですけど、みんなそれぞれ「思い出のスーパー」と重ね合わせて見たみたいで。
能町 私も現地に行ったらいろいろ記憶が出てくると思います。
ヒャダ 僕もジャスコ沢ノ町店(大阪市住吉区)は本当に好きでしたからね。ジュース飲んだり、ゲームしたりしたの、すごく楽しかった。今はもうなくなりましたけど。
能町 私は文教堂牛久店(現在は閉店)だな。『完全自殺マニュアル』を全部立ち読みしたのと、『VOW!』買ったのもあそこだし。
久保 私はジャスコ佐世保店(現・イオン佐世保)でランキン・タクシーのCD買ったなー。
能町 ジャスコに置いてるんだ、ランキン・タクシー。
久保 平和堂というCDショップがあって、そことジャスコに入ってる福家書店が頑張ってたんですよ。その福家書店で、性の目覚めというわけじゃないけど、少しスケベなやつを頑張って立ち読みしてたんですよね。
能町 よくしますね(笑)。
久保 『くりいむレモン』シリーズ(笑)。
ヒャダ あーーーっ、エッチなんだ! エッチなんだ!
久保 『くりいむレモン』(*)の小説版があったんですよ。お兄ちゃんが『ニュータイプ』というアニメ雑誌を毎月購読してたから、それを読んで「どうやら『くりいむレモン』というエロいやつあるらしいぞ」と知って、その本屋で「『ニュータイプ』で見たやつの小説版だ」と思って、一生懸命中身を確認して。その本屋、同人誌も置いてたんだよね。
*アダルトアニメの草分け的作品。数々の続編が制作されたほか、ゲーム・実写・小説など、メディアの幅を広げて展開していった。
ヒャダ 意識が高い。
能町 文化がちゃんとある。
久保 そこらへん、いま考えると充実してたし、そして私は怖いもの知らずだったなと思う。(アニメ雑誌の)『ファンロード』も『OUT』も読んでたし、文化的に満足してたわ、佐世保で。
能町 文化度、超高いですよね。
ヒャダ 永野さんと能町さんにはなかったやつですよね。
──能町さんが「町に出る」といったら、やっぱり東京だったんですか?
能町 まず柏が最初にあるんですけど、でも私は柏に行ったことはほとんどないです。だから結局東京なんですけど、そもそも私におしゃれ度がないので、怖くて行けないんですよ。東京で買い物とか怖くて考えられない。
ヒャダ 『ケンミンSHOW』で似たようなこと言ってましたね。「みんな柏で止まる」みたいなこと。
能町 柏で止まる人もいるけど、私はそもそもそれもしてなくて。ちゃんと自分で欲しい服を選んで買ったの、上京してからです。高校まではろくに買ってない。
久保 藤井聡太三冠は、「まだ自分で服を買ったことがない」と言ってたね。
能町 それに近い。まず、どこに行ったらいいか、わからないんですよ。服を売ってる場所って、近所だとイズミヤなんです。イズミヤしかないんです。ヒャッ君はいつから自分で服を買ってました?
ヒャダ 高校からですね。高校1年生で買い始めましたけど……もう恐怖体験ですよね。
能町 恐怖ですよね。
ヒャダ 天王寺で買いました。天王寺のジーンズショップでちょっとお安めなやつを。まあ怖かったです。
能町 私が高校出る頃に牛久にライトオンができたんですけど、ライトオンですら怖かった。
ヒャダ 僕が買ったのも似たようなところです。でも怖かったです。怖がりなんで、一応『ファインボーイズ』とか、『メンズノンノ』とか読み込んで、理論武装はしていったんですよ。「この形の服はカットソー」とか。
能町 間違えないように。
ヒャダ 間違えないように理論武装はしていったんですけど、でも話しかけられたら、それだけでめちゃめちゃ怖いですから。
久保 二人ともそういう経験、すごく遅いんだね。
能町 だって店がないんですもん。イズミヤとライトオンしかなかったら、どうしたらいいんですか。おしゃれ関係は怖かった記憶しかないです。
ヒャダ おしゃれ関係は怖い。
──ヒャダインさんと能町さんが言う「怖さ」って、「店員からバカにされるかもしれない怖さ」? それとも「見知らぬ町に行く怖さ」ですか?
能町 「大人すぎる」という。牛久からに土浦に買い物に行ってる同級生がいたんですけど、私の中だとほぼ「酒飲んでる」くらいの感覚でした。「中学生でそんなことしてるなんて」っていう。
ヒャダ 今の感覚で言うと、「知らないスナックに一人で入る」みたいな。
能町 それに近いものはあるかも。中学生だけでカラオケ行ってると聞いても怖かったです。「悪過ぎる」と思って。
ヒャダ 僕も「カラオケ屋の中でたばこと大麻と乱交してる」と思ってました。本当に思ってました。
能町 わかります、そういう感じはあります。
久保 ベッドタウンって、健全なんだね。
能町 だって悪いことする人が行くところがないんです。
久保 地方に住んでいた身からすると、「東京に近いからライブとか行けていいな」と思ってたんだけど。
能町 ライブなんて、怖えーよ(茨城弁で)! だってライブに行ったら、みんなたばこ吸って、セックスしてるんですよ?
ヒャダ そうです。大麻やって、乱交してます!
能町 あんな暗いところ、みんなセックスしてるに決まってるじゃないですか!
ヒャダ そうですよ、乱交してますよ!
能町 怖いですよ!
ヒャダ 怖い!
──でも当時はネットもないわけだし、本当に未知の世界だったら、大げさでなくそれくらい思うんですかね。
久保 そう考えると、佐世保は佐世保でちょっと特殊な町だったな。九州の端っこだけど、もともと軍港という気質もあって、文化的に停滞してた感じはなかった。子供でもガンガン買い物に行ってたし、映画も見に行ってたし。だから私、別に佐世保のことは嫌いじゃないんだよね。嫌いじゃないけど、好きで選んだ町ではないという。
ヒャダ そうですね。ガチャですからね。
久保 ガチャだね。だから「地元にご恩返しして生きていこう」みたいに思う必要はないんだよ。地元に縛られずに、新しい地元を探したっていいし、海外に行ったっていいと思う。じゃあ地元に縛られて生きるのがダメかというと、それがかえって個性になることもあるから、それはそれでいいと思うし。なんだか地元への感情が引きずり出されてしまった……永野さん、何気にいろいろ刺激していきますね。
ヒャダ ずいぶんな毒薬だったと思いますよ。
久保 ワクチンの毒性ってこういうことか。
──副反応がどんどん出てきてるので、おしまいにしましょう。
能町 いま私、牛久への思いがすごいあふれ出てきてる。
ヒャダ 愛憎入り交じった感情が。
能町 愛0.5:憎9.5くらいの感じですけど。
「久保みねヒャダこじらせブロス」のバックナンバーはこちらから。
【ライブ情報】
テレビでは話せないトーク満載
久保みねヒャダこじらせオンラインライブ
次回開催
ゲスト:藤井隆
配信日:2021年10月23日(土)14:00スタート
(10月31日(日)23:59までアーカイブ配信あり)
配信先:PIA LIVE STREAM
料金:¥2,980(税込み)
チケットはチケットぴあにて発売中
【番組情報】
ほぼ月一で不定期放送中
久保みねヒャダこじらせナイト
次回放送:2021年10月22日(金)フジテレビ●深2:55〜3:55予定
*FODプレミアムでこれまでのライブを限定配信中(FOD限定トークあり)。
【プロフィール】
くぼ・みつろう●漫画家。代表作として『モテキ』『アゲイン!!』など。現在は『ユーリ!!! on ICE 劇場版 : ICE ADOLESCENCE』制作中。
のうまち・みねこ●自称漫画家。新刊『そのへんをどのように受け止めてらっしゃるか』『雑誌の人格3冊目』発売中。『結婚の奴』も売れてます(当社比)。「猫のつまらない話」も連載中です。
ひゃだいん●音楽クリエイター。J-POPからアニメソング、ゲーム音楽まで幅広く手掛ける。初の著書『ヒャダインによるサウナの記録 2018-2021 -良い施設に白髪は宿る-』が発売中。
投稿者プロフィール
- テレビ雑誌「TV Bros.」の豪華連載陣によるコラムや様々な特集、過去配信記事のアーカイブ(※一部記事はアーカイブされない可能性があります)などが月額800円でお楽しみいただけるデジタル定期購読サービスです。