柄本時生×今井隆文 ドラマドラマ24『錦糸町パラダイス〜渋谷から一本〜』プロデューサーインタビュー

俳優の柄本時生&今井隆文がドラマ初プロデュースを手がける。タイトルはドラマ24『錦糸町パラダイス〜渋谷から一本〜』(テレビ東京系)。プライベートでも親交の深い2人に、本作への思いを語ってもらった。

撮影/倉持アユミ 取材&文/横川良明

ヘアメイク/住本由香〔MARVEE〕【柄本】 スタイリスト/矢野恵美子【柄本】、金順華(Sable et plage)【今井】

衣装クレジット:【柄本時生】Yohji Yamamoto POUR HOMM/ヨウジヤマモト プレスルーム 03-5463-1500

【今井隆文】ジャケット¥34800、トラウザー¥24800/M”ARIJUAN OMOTESANDO 03-5774-6479 柄のシャツ ¥35,800/THE FLAT HEAD 026-275-6666(お客様問い合わせ番号)

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時生くんの言うことはとにかく理解が難しい(笑)

 

 

――今回の作品は、2人でお茶をしている最中に、柄本さんから今井さんに企画の相談をされたと聞きました。

 

柄本時生 ちょうど『忍びの家 House of Ninjas』の撮影中だったんですよ。

 

今井隆文 1週間くらい泊まりの撮影だったんだよね。それで、ホテルのラウンジでバッタリ会って。

 

柄本 コーヒーを飲んでたら声をかけられて。そのときに「こんな企画考えてるんですよ」とノートを見せたんです。もう本当殴り書きだったんですけど。

 

今井 それが面白かったんですよ。時生くんは考え方が変なんです。僕にはない発想すぎて。話を聞いてるだけで、どうなるんだろうってワクワクする。

 

柄本 で、僕が撮影をしている間、今井さんは2〜3時間空いてたから、「その間にこれ俺にまとめさせてよ」と言ってくれて。そのまとめていただいたやつが面白かったので、今井さんに「一緒にやってくれませんか」とお願いしました。

 

今井 そこから週1とか2週に1回くらいのペースで同じ喫茶店で打ち合わせするようになりました。時生くんの言うことはとにかく理解するのに苦労する(笑)。それを、「どういう意味?」って一つひとつ確認しながら、僕が書いていくという。

 

柄本 あのときは夢を語ってるだけなんで、いちばん楽しかったですね。夢は夢のままがいいって本当なんだなと思いました。それを実現させようとすると、とんでもなく大変になってくるわけで。

 

今井 はじめのうちは別に予算とかも考えてないからね。

 

柄本 何だっていいわけですよ。宇宙に行こうと言ってもいいわけじゃないですか。

 

今井 また時生くんがプライベートでいろいろ事件が起きる人なんです。打ち合わせのたびにその話を聞くのも面白かったな。

 

柄本 確かに。僕はいろいろありますね(笑)。

 

今井 ちょうどその頃、時生くんの出ていた映画がカンヌ(国際映画祭)に出品されたんですよ。本当だったら時生くんも行くはずだったんですけど、別の撮影がズレて行けなくなっちゃって。

 

柄本 そのときはずっとヘコんでいました。

 

今井 今日はどういう状態か、佇まいでわかるんです。その日はもう何を話していても全然聞いていないから、打ち合わせは早々にやめにしました(笑)。

 

柄本 しかもその作品がカンヌで賞を獲ったんですよ。もうその場にいられないことがショックすぎて…!

 

今井 なんで俺の行けないときに賞を獲るんだよって愚痴ってました(笑)。

 

柄本 日本としては大功績なのにね(笑)。

 

初めはずっと長いものに巻かれていました(笑)

 

――「実現させようとすると、とんでもなく大変」とおっしゃっていましたが、特に大変だったことはなんでしょうか。

 

今井 どこに企画を持っていくか、ですね。今は配信も含め、いろんなプラットフォームがある。ただ、この企画自体すごくミニマムな話なので、配信が興味を持ってくれるかどうかでいうと、ちょっと確度が低い気がしたんですね。逆にテレビだったら、劇団年一(柄本時生、賀来賢人、落合モトキ、岡田将生)の4人がやることは決まっていたので可能性があるんじゃないかなと思った。それで、テレビ東京の太田(勇)さんに話をしに行きました。テレ東さんなら自由にやらせてくれそうだし、かつフットワークも軽いであろうと。

 

柄本 太田さんと初めて会ったのって渋谷のどこだっけ?

 

今井 セルリアン(タワー)ね。コーヒーが1杯2000円くらいするところ(笑)。しかも初めてって言ったけど、時生くんは初めてじゃなかったんでしょ。

 

柄本 そう! 昔、『太鼓持ちの達人~正しい××のほめ方~』というドラマでご一緒してたの。すっかり抜けていて、途中で記憶が蘇りました(笑)。

 

今井 ひどいな(笑)。

 

柄本 めっちゃ覚えてるのが、太田さんがプロットを読んで「ここって、こういうことだよね」といろいろ質問してくれたんですよ。中には、自分の意図と違うこともあったんですけど、僕の思いとフィットしていないものも全部「はい、そうです」と言い続けていました。

 

――なぜ(笑)。

 

柄本 長いものに巻かれていたからです(笑)。

 

今井 時生くん、僕以外の人と初めて会うときはいつもめちゃくちゃ緊張しているんです。

 

柄本 やっぱり企画の通る通らないがかかっているからさ。ここはひとまず全部「その通りです」って言っておこうと思ったら、途中で今井さんに「いい加減にしろ」と怒られました(笑)。

 

今井 違うところは違うと言わないと、やりたいことがブレるからね(笑)。

 

柄本 そこからですね、「実はこういうことです」と言えるようになったのは。ある意味、僕のプロデューサーとしてのスタートはそこからだったかもしれない。

 

僕の中で岡田将生はずっと孤高の人でした

 

――物語の舞台となるのは、幼なじみで結成した掃除屋「整理整頓」。社長の大助には、賀来賢人さん。大助との間にかすかなしこりを抱える裕ちゃんに、柄本さん。そして、大助と裕ちゃんを取り持つ1学年下の後輩・一平は、落合モトキさん。さらに、謎のルポライター・蒼に岡田将生さんという顔ぶれです。この配役には、どんな意図があるのでしょうか。

 

柄本 20代前半の頃からずっと一緒に飲んでいる4人組なんですけど、僕らをつなげてくれたのがモトキなんです。まず僕が『4TEEN』というドラマで共演して。そこからモトキがかっちゃん(賀来)、マーくん(岡田)とそれぞれ仲良くなって、僕ら4人が友達になった。だから、大助と裕ちゃんの間に入る一平は、モトキだなと。かっちゃんは、いつも場を提供してくれる人でした。20代の頃、僕らがよくいた遊び場は、かっちゃんの友達がやっているお店だったりして。だから、みんなが集まれる場を提供する社長の役は、かっちゃんにしようと。

 

――では、岡田さんは?

 

柄本 岡田将生は、その頃から僕の中で孤高の人だったんです。もう世間的にもブレイクして、岡田将生は岡田将生というスターだった。その印象が強くて、あえて掃除屋の3人とはちょっと距離のあるルポライターという役にしました。

――今井さんは脚本も担当されています。

 

今井 僕は時生くんと賢人とは親しくさせてもらっていて。だから、時生くんの喋り方だったり、賢人ならここでこういうことを言うだろうなというのはなんとなくわかるんです。そこは脚本にも活かしました。逆に、モトキくんとは同じ飲みの場に居合わせた程度。岡田くんに至っては一度も会ったことなくて。なので、時生くんたちの話を聞きながら、こういう人かなというイメージで書かせてもらっています。

 

柄本 いや、すごいフィット感がありますよ。

 

今井 今回はとにかく会話のトーンを大事にしたくて。僕ら世代の会話の感じをそのまま再現することを意識しました。8話の脚本が上がったときだったかな。時生くんが「この会話の感じです」って喜んでくれて。そこはちょっと自分でも手応えがありましたね。

 

――舞台が錦糸町というのも個性的です。

 

柄本 錦糸町ってすごく多国籍な街なんですよ。だから、群像劇の舞台としては一番使いやすいんじゃないかなと。

 

今井 誰を置いても不自然な人がいないんだよね。

 

柄本 それだ。すごくわかりやすい。

 

今井 たとえばもし舞台が青山だったら、青山にこんなやついないでしょという違和感が出てくる。でも、錦糸町だったらどんな人も受け入れてくれるし、野放しにしてくれそうな感じがする。そういう雰囲気が、この作品に合っているなと思いました。

――では最後にタイトルにちなんで二人のパラダイスを教えてください!

 

今井 撮影現場じゃないですか。もう毎日楽しくて。ちゃんとスタッフとして現場に帯同するのは今回が初めてなんですけど、撮影の待ち時間に現場の人と喋る内容が俳優のときとは全然違うんですよね。俳優として現場に行くと、やっぱり俳優として接してくださるじゃないですか。でも今回はそうじゃないから、普通に物を運んだりしながら「疲れた〜」とか言い合えている。同じ目線で喋ってくれるのが楽しいですね。

 

柄本 僕も現場ですね。昔から現場が一番楽しいです。特に今回は『4TEEN』でお世話になった廣木隆一さんをはじめ、映画のスタッフがいるのがデカいです。僕に現場を教えてくれたのが、廣木さん。俳優って、ある程度続けていると、どうしても道を間違えることがあるんです。それを正していただくために、今回、廣木さんにお願いしました。やりながら実感していますが、まだまだ習うことはいっぱいある。それを知ることができただけでも、この企画をやれて良かったです。

 

ドラマ24「錦糸町パラダイス〜渋谷から一本〜」

7月12日(金)毎週金曜深夜24:12〜24:42 テレビ東京ほかにて放送

各話放送終了後から、動画配信サービス「Lemino」「U-NEXT」にて第一話から最新話まで独占見放題

広告付き無料配信サービス「ネットもテレ東」(テレ東 HP、TVer)にて見逃し配信

【企画・原案】 柄本時生 今井隆文

【出演】 賀来賢人 柄本時生 落合モトキ / 岡田将生

Ⓒ「錦糸町パラダイス~渋谷から一本~」製作委員会

 

 

柄本時生(えもと・ときお)●1989年10月17日うまれ、東京都出身。2003年、映画 Jam Films S『すべり台』(05年公開)のオーディションに合格し、主演でデビュー。以降、配信ドラマ『4TEEN』(04年)、NHK大河ドラマ『いだてん』(19年)、ドラマ『真犯人フラグ』(21年)、ドラマ『消せない「私」―復讐の連鎖―』(24年)などに出演。

 

今井隆文(いまい・たかふみ)●1985年7月27日生まれ、東京都出身。2007年、「劇団プレステージ」のリーダーとして出演のほか作・演出を手掛け、2019年に退団以降も舞台や映像で活躍。2020年にソロプロジェクト『パーマネント』を立ち上げ。近年の出演作には映画「アナログ」やドラマ「パリピ孔明」ほか。Netflixシリーズ「忍びの家 House of Ninjas」では原案にも参加している。

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