緻密で器用な漫才師・ヤーレンズが受け取ったバトン【2022年12月連載「これからの芸人百景」第18回ヤーレンズ】

「今年仕上がっているらしい」ともっぱら噂され、誰もがストレートで『M-1グランプリ』の決勝にいくと思っていたコンビ・ヤーレンズ。7度目の準々決勝を突破し、初の敗者復活戦に挑むことになった彼らを、我々は応援せざるを得ない。準決勝2日前の本取材では、“今年のヤーレンズ”を余すことなく話してもらった。

構成/竹村真奈 村上由恵(タイムマシンラボ)
取材・文/佐々木 笑 撮影/TOWA

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■「引き算の漫才」が完成した理由

──7度目の『M−1グランプリ』(テレビ朝日系)準々決勝をついに突破されました(取材は11月28日に行った)。昨年までと何が変化したんでしょう?

楢原 いろんなものを落としました。芸歴とかライブを重ねて、できることがどんどん増えて、あれこれ詰め込み過ぎてたんですよね。軽トラに荷物を積みすぎて全然スピードが出てなくて周りにどんどん抜かれてる状況だったので、減らさなきゃと。

出井 ここ2、3年、相方を紐解く時間を非常に多く取って、お互いのどの面が出たら一番面白いか考えたんですけど、結局4分で説明できる人間ではなかったんです。一番近くにいる僕が掴めないんだから、初めて見た人に4分で伝えるのは無理だろうと思い、シンプルに絞りました。

楢原 モグライダー、シシガシラとやっていたネタ見せ会もデカかったです。「君らだから観てられる量だ」と言われて、芸人がギリ観てられるんだったら、お客さんは観てられないだろうなと思って。

出井 迷ってる時期に、芝さんから「毎日舞台に立って、毎日笑いを取ってる人にしか出せないオーラをとっくに纏ってるんだから、もっとシンプルでいいよ」って言ってもらえたんです。そのあとに3回戦のネタを見せたら、「めっちゃ観やすいじゃん!」と。

楢原 わりと普通のことをしても個性が出てることに気づけました。

──笑う要素は増えるほどいいと思ってしまいますが、そうではないんですね。

楢原 何で笑っていいのかわからなくなって、大きい笑いが取れないんですよね。

出井 確たるやりたいものが一個ある人はシンプルな漫才ができるんですけど、僕らは詰め込んでしまうんですよね。昔は、理屈でネタ選びしてる奴は情熱でやってる人には勝てないと思ってたんす。けど、話し合って「俺たちはこうあるべき」というのがわかったので、理屈をこねるだけこねたら、整理できて引き算ができました。今の漫才に対して何の迷いもないです。

楢原 細かい言い回しとかはアドリブも多いけど、ちゃんとボケてちゃんとツッコんでる形にはしないと、俺たちはダメだよね。

出井 考えずにできる才能が俺らにはないから、めちゃめちゃ考えないといけない。

──努力できる才能ですね。

楢原 努力とは思わないんですよ。 すごいかっこいいことを言うと、好きなことをやってるだけだから、これを努力と思ってるようではダメなんでしょうね。

出井 日々、集中して漫才やってたら自然とああなりますよ。

楢原 あれ? かっこつけて言ってるけど、それはなんか薄いな?

出井 あれ? これは違った? でも本当にそうなんです。

──変化でいうと、楢原さんの新衣装も特徴的です。

楢原 「出てきただけで安心感がある」と言われてて、それはよくないと思って。久兵衛でお寿司を出されるのは普通のことだけど、吉野家で久兵衛の寿司が出てきたら「おっ」となるじゃないですか。だから、ちょっと不安定な「こいつ大丈夫か?」の状態から入れば、より美味しいと思われるかなと。

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